私の技術に対するモットーは再現性です。そんなの当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、ここに至るまで長い試行錯誤や葛藤があったのです。
説明するには学生時代まで遡る必要があります。できるだけ簡潔に書きますのでお付き合いください。
ツボは曖昧で人によって違う?
鍼灸の学校に入って一番驚いたのは、ツボは人によって位置が違うと教わったときです。どんな先生に聞いても、学校の外でやっている勉強会に言ってもみんな同じ答えでした。決まったツボの位置に鍼をすれば同じ効果が現れると思っていた私は困惑し、将来が不安になりました。
入学前に期待していた鍼灸よりずっとあいまいな世界だったのです。また、先生によって理論も違います。同じ学派の中でも先生によって考え方が異なり、鍼灸師の数だけ理論と方法があると感じたのです。選択肢があまりにも多く、何を選べばよいのか途方にくれました。とはいえ、何も勉強しないわけにはいきませんから経絡治療系のところや、中医学系のところに通って勉強していたのです。
名人の世界はどこにある?
一本の道筋が欲しかったので、共通言語が比較的しっかりしている中医学系の方に進んだのです。ただ、カルテの上では納得できても、実際の臨床となると名人ならではの世界が待っていて、カルテから患者さんに目を移した瞬間から扱いようのない何かを感じてしまったのです。それが何であるかはっきりすれば、己を磨くことによって上がっていけるのですが、それが何だかわからいのです。
それを人間性で説明する人、経験の差で説明する人、勉強不足で説明する人、そもそも才能が違うと説明する人、本当にいろいろでした。どの説明も私を絶望に追い込むのです。苦労して入学できた鍼灸学校。将来に希望を抱いた20代の前半。その若さに突きつけられた現実はかなり残酷なものでした。
その残酷さを一言で表すなら、再現性のない世界でさまよい続けなければいけない恐怖です。
たた、周りを見ると私と同じように恐れている人がいなかったのです。鍼灸師というのは自分のやり方を追求していくものであると納得しているような空気が漂っていたのです。色々な勉強をして、自分なりに納得したものを自分なりに組み立てて自分なりのスタイルをつくっていけばいい。そんなことより、国家試験に向けての勉強が関心の中心だったように思います。
気の世界でツボを探す?
私は「ツボはミリ単位で決まっているもので、わずかに鍼を刺す位置が変われば効果が出ない」と考えていました。
学校ではその取り方を詳しく教えてもらい、その精度の差が技術の差になると思っていたのです。指先の感覚に自信がある人が鍼灸学校に集まると思っていたので、才能に付いていけるのか不安もありました。
私が抱いていたツボのイメージは勘違いだったのです。ツボに対する考えを私は改め、もっと大きく、もっと曖昧なもの、いわゆる「気」を探るように感性を磨いてくように努めました。
時には体に触れず少し離れたところからツボを探してみたりもしました。私の学生時代はこうして過ぎ去っていったのです。
国家試験に合格したのに嬉しくない理由
国家試験に合格して鍼灸師になりました。合格通知を見ても嬉しくありませんでした。不安しかなかったからです。
学生の間は「わからないなぁ」で済んでいても、免許を取ってプロになればわかる人と見られます。ツボはなんとなくしかわかりませんでは、患者さんに失礼ですし、そんな状態の私が必要とされるはずがありません。
いざ就職しようと思っても、東洋医学を勉強している鍼灸師は役に立たないと言われ、私の未来はどんどん潰されていきます。
整形外科でマッサージをする仕事をしながら、鍼灸整骨院にアルバイトで採用してもらい、そこで鍼灸ができることになりました。基本の業務はマッサージなので、患者さんから鍼灸の希望があったときだけ対応してね、という条件でした。
新人に起きた奇跡
新人の私に体を任せてくれる患者さんが1人、2人、3人・・・と増えていき半年たった頃には1日20人に届きそうになりました。鍼の効果を感じていただいていたのですが、私はどうして効いているのか、ツボが合っているのかわからないまま、気持ち悪い感覚のまま施術をしていたのです。本当は表で言っちゃいけない話かもしれません。
そんな私だったのに、なぜ患者さんが増えていったのでしょうか。本当の理由はわかりませんが、そこで私が何をしていたのかを書きます。
それは記録です。
「ツボは500円玉サイズ」と言われても最終的に鍼をするところは点なのですからミリ単位でココと決めなければなりません。
その都度、どういうふうにその位置を選んだのか、感覚も含めてできるだけ詳細な記録を取るようにしていました。その職場ではカルテが用意されていなかったので、個人的にノートを用意して患者さんごとに記録をしていました。
続けていると、同じところに鍼ができると同じような効果が出るように思えることがチラホラと出てきたのです。これが患者さんが増えるきっかけとなりました。
ただ鍼灸の希望者が増えることを経営者が望んでいなかったので、余計なことをしたということで、私は鍼ができない院に飛ばされてしまいマッサージが業務となってしまったのです。
そのあとすぐに辞めてしまいました。整形外科のマッサージの仕事も鍼灸ができないのでやめていました。
ニート系の鍼灸師になった
経緯は省きますが、家族の協力のおかげで実家の一室で開業することになったのです。半分ニートみたいな生活でしたが、私を頼って来てくれる方が現れ、1日数人程度ですが少し収入が生まれました。それまでかけてきたお金のことを考えると大赤字です。つべこべ言ってないでマッサージで食えという状況でした。わかってはいました。
これ以上、私の頑固さをアピールしても仕方ないので再現性に話を戻します。
ツボノートからツボネットへ
なんだかんだで、やっぱりツボをミリ単位で追求すれば再現性が手に入るのではないかという感触がどうしてもあったのです。お世話になっていた勉強会に隠れて、こっそり自分だけのノートを取り続けていったのです。
このノートが私の原点であり今でも続けています。それから20年が経ちました。ツボの位置を追求すれば再現性は得られると今では自信をもって言っています。この再現性は私の中に収まるものではありません。どんな鍼灸師がやって再現できるのです。
きっと私と同じように、曖昧な世界で苦しんでいる若手鍼灸師がいるのではないかと思いこのブログを書いています。14年ほど前から再現性を共有するためにセミナーを開いています。最初は私だけの秘密のノートだったものが、今では200人の会員と共有するところまでになりました。会員外を除けば、共有した鍼灸師は数え切れません。
その実績はツボネットに集まるような仕組みにして誰でもアクセスできるようにしています。ただ、詳細なツボの位置だけは画面で伝えられないので、正確な位置とそのツボの感触はセミナーで共有しています。
最後に告知になりますが、来週の日曜日(4/14)にもセミナー(整動鍼・刺鍼即応編)があります。
定員まで数名の空きがありますので、ツボの位置と再現性に興味がありましたらぜひどうぞ。
こちらもよろしくお願いします。
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