花粉症は鍼灸で治るのか?
「花粉症のツボ」というタイトルでYouTube(動画)を制作したのですが、その中で「治る」という表現はあえて避けました。鍼灸を受けることで「治った」という人が出てくるという表現に留めています。花粉症の鍼灸治療を本格的に始めてから10年以上経ちましたが、実際に花粉症状が①全く出なくなる人、②軽くなる人、③変わらない人、がいるわけです。
本当は「鍼灸で花粉症が治る!」と言いたいところですし、多くの方が治る方法を探してネットを走り回っているのではないでしょうか。この記事では「実際はどうなのか」に焦点を当てて、鍼灸の効果に期待しつつ期待しすぎない情報をお届けしようと思っています。
鍼灸師の立場から発言すると「花粉症には鍼灸が一番」という空気がまとわりつきやすいので、それを払拭しながらいきたいと思います。そもそも私が花粉症の治療に携わっているかといえば、シンプルな理由で「花粉症の症状、鼻水や鼻づまりが施術室の中で取れるという経験をしたからです。「これはすごい!」と人として素直に思ったわけです。
ただ、一時的な改善であることの方が多いので、このままずっと症状が出ないようにするには、どうしたら…と模索してきたわけです。そして、ある程度の成果が得られるようになってきたわけです。
季節性と通年性で大きく異なる難易度
あとでがっかりされると困るので、最初にどういう人の症状が改善しにくいかお伝えします。それは、一年を通して鼻炎がある通年性のアレルギー性鼻炎です。季節を問わずに鼻炎が続いているものです。ちなみに、花粉症の医学的な正式名称は季節性アレルギー性鼻炎といいます。
つまり、花粉症と言われる季節性の症状は比較的寛解しやすく、季節に関係なく症状があるものは寛解しづらいということです。経験則では5倍くらいむずかしく感じます。慎重な表現が必要なことは承知していますが、季節性であれば高い確率で症状が軽減します。
鍼灸治療の回数と期間
どれくらいの頻度でどれくらいの期間の治療が必要か
私の鍼灸院での話になりますが、週2回の通院をお願いして施術は5回単位です。現実的に1回の施術で「治りました!」なんていう感想をいただくのはむずかしいです。花粉の飛散量で症状は動くこともあり、1回の施術で効果について結論を出せません。考えた末、たどり着いたのが5回単位です。
その5回で終わる人もいれば、あと5回加えて10回になる人もいます。それ以上の人もいてケースバイケースです。もし5回の施術で効果を感じなければそれ以上は勧めていません。この症状はむずかしいと認めて引き下がる決断が必要です。こうした判断は患者さんとのコミュニケーションの中でしていきます。
通院はいつがベスト?
小さい火は消火はできますが、大きくなると困難になります。花粉症も同じです。症状が軽ければ寛解できますが、ひどくなると難しくなります。鍼治療を始めるのに最適な時期は症状が出始める直前です。症状が出る前ですと、効いているのかどうかわからないと最初言われるかもしれません。治療中にシーズンに突入し「いつもならこの時期ひどいのに…」と無症状が続くことが理想です。
症状が出たら手遅れということではありませんので、早めに決断することをおすすめしています。正直、症状が爆発している季節に、スパッと寛解させることは難しくなります。
シーズンではない時期に治療をしたら効果がないのか、という疑問も出てくるかと思います。結論は、効いていたとしても効果を実感できません。個人的には意味があると思っていますし、本来はそれが一番だと思っています。とはいえ、現場で「どうですか?」と訊いて「わかりません」は場がもちません。
「治る」と「無症状」
花粉症が医学的には自然に治ることは少ないとされています。自然寛解率は10~20%程度という報告があります。効果があるのは免疫療法と言われています。舌下免疫療法、減感作療法などです。花粉を少量ずつ体に入れ、免疫を再教育する方法です。その結果、体が花粉を敵とみなすことがなくなります(本来、花粉は人体に無害ですから)。こうした治療は「花粉症は免疫の誤作動」という発想に基づいています。
では、免疫になんらかの変化がなければ症状は変わらないのでしょうか。ここからが重要な話になります。同じ免疫を持っていても、花粉の飛散量、生活環境、ストレスの状況によっては症状は出ないことがあります。
花粉症は免疫反応を含む複合反応です。神経、粘膜、血流などのコンディションも症状に関わっています。ここに東洋医学的な視点を加えれば、体温のバランスです。温かいところ、冷たいところがあります。
重要なことは、花粉症は免疫の問題ではあるが、免疫だけでは説明しきれない複合現象であるということです。ですから、鍼灸が介入することができるのです。実際、鍼灸で無症状になる人がいるわけですが、患者さんが「治った」と表現するのは問題ありませんが、私たちは慎重になる必要があります。無症状であっても、医学的に「治った」と言えるかわからないからです。
とはいえ、無症状は「治った」の入口と言えるので、無症状にたどり着くことは医学的にも意味があります。
鍼灸治療で使うツボ
おそらく、多くの方が「花粉症のツボ」があると信じていると思います。病気に対してツボが決まっている、というイメージではないでしょうか。もしくは、そんなわけがないとツボを全否定するパターン。
すでに述べたように、花粉症を治すことと花粉症の症状が出ないようにすることは似ているようで違うことです。私たちは、免疫の状態がどうなっているのか知りようがありません。しかし、人体の観察はできます。花粉症がある人とそうでない人の身体的特徴を探すのです。
その特徴が軽減するように鍼灸を使って調整します。今回の動画ではその手法について実技で紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください。お時間のない方のために、ここで簡単に説明しますと、花粉症の人は頭部に熱がたまりやすいので、その熱を下げるように働きかけます。その最重要ポイントになるのが頚部です。首周りの硬さを取ると花粉症が軽減します。
特に重要なポイントは「風池」というツボです。この風池に直接鍼をする方法と、その風池の緊張を解くツボとして胞肓も紹介しています。動画の中では触れませんでしたが、この胞肓というツボは胃腸の調整点としても有効です。「花粉症は腸を整えると治る」という説もありますが、それと重なるのが面白いところです。
また、鼻腔三椎と名付けたところがあります。頚椎の6番と7番、胸椎の1番です。鼻の通りが悪い人はここが固まって動きが悪いことが多いのです。ここに注目して施術をすることで花粉症が軽減することが多いのです。
花粉症と風邪の共通点
現代医学の立場から見れば、原因がそれぞれ違います。花粉症の原因は花粉で、風邪の原因はウイルスです。全く別の病気として考えるわけですが、考えてみてください。花粉症は風邪の初期症状とよく似ています。私たち鍼灸師が注目するのはここです。症状を引き起こす身体的特徴に合わせてツボを選びます。ですから、花粉症の治療は風邪の治療と似ているものになります。簡単な話です。風邪の治療の応用として花粉症治療があるのです。
寒暖差アレルギーも同じです。名前に「アレルギー」が付いていますが、免疫系の病気ではありません。まるでアレルギーであるかのような症状が出るのでこのように呼ばれています。花粉でもウイルスでもないのが寒暖差アレルギーです。動画の中でも紹介していますが、共通点としてふくらはぎの冷えを示しています。
美味い料理があるなら上手い鍼灸もある
ツボは知っているだけでは意味がありません。目の前の患者さんの身体的特徴に気がつく観察眼を養っていなければ、適切なツボを選べません。料理は同じレシピでも火加減や調味料の加減で大きく味が変わります。食材の状態に合わせて微調整できる料理人が美味しい料理を提供できます。鍼灸も似たようなところがあります。
・鍼灸のクリ助ch.(YouTube)
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