ツボの正しい位置、どこかわかりますか?─足三里の位置を例に

ツボの正しい位置わかりますか?(足三里を例に)

ツボの位置は動くのか?

実は、ツボの正しい位置を示すことがもっともむずかしいことなのです。同じ名称のツボでも鍼灸師によって鍼や灸をする位置が異なります。鍼灸師の間では当たり前すぎる実態ですが、患者さんがこうした違いを知る機会はありません。

だいぶ前ですが実験したことがあります。足三里(あしさんり)というツボをどの位置に取っているのか知りたくて、5~6人の鍼灸師に協力してもらいました。すると最大で2cmくらい位置が異なっていました。

このズレは腕が上がると一点に収束していく、なんてことはないでしょう。また、その時はそこを足三里とするけれど、別の日は別のところを足三里している場合もあるでしょう。「ツボは動く」という鍼灸師もいますから、それぞれが正解であると考えることもできます。

私は「ツボは動かない」と考えています。今日はいつもより下の方にツボがあると感じたら、それは別のツボです。複数のツボを同じものと認識しているからツボが動くと感じているのです。

もう一つの足三里

私は、足三里の近くに元瑠(げんる)というツボを設定しています。高さが人差し指の幅程度違っています。元瑠の方が低い位置にあります。この差で身体に及ぼす変化が異なります。元瑠ではお臍の下にある関元(かんげん)穴、腰部にある関元兪というツボが柔らかくなります。足三里の位置では変化が見られません。

足三里と元瑠

元瑠として記した位置には伝統的な経絡経穴にはツボがありません。もしくは、足三里も元瑠も同じツボとして認識されているのかもしれません。この差は2cmもありませんから。

関元と関元兪

元瑠というツボは、関元と関元兪に変化をもたらすなら、こうも考えることができます。関元と関元兪に変化をもたらすことができる点が元瑠であると。

ツボの位置には定義がある

このように何をもたらすかを最初に定義すると、ツボの位置を決めることができます。この元瑠というツボは伝統的な経絡経穴にはありませんから、私が、関元と関元兪に変化をもたらすところを元瑠として個人的に使う分には問題がありません。これを個人の枠から出して共有しているのが整動鍼です。

整動鍼という名称から動きとも関係しています。関元と関元兪が柔らかくなると、仰臥位(仰向け)から上体を起こすときに腰がラクになります。仰向けから起き上がるときに痛む腰痛などで利用することができます。

ツボがもたらす動きの変化までセットにして考えると、ツボの正しい位置を客観的に定めることができます。完全に主観を取り除くことができませんから、客観的に考えやすいという表現にとどめておいた方がよさそうです。

足三里の正しい位置

足三里も同じように考えることができます。元瑠とは違う変化を期待できます(もし同じなら同じツボということになります)。定義次第で足三里の位置は異なることになるでしょう。とはいえ、伝統的なツボですから、創案者の意図を曲げるのはよろしくありません。

足三里は胃の合穴に分類されているツボです。合穴とは何でしょうか。『黄帝内経霊枢・邪気蔵府病形第四』「滎兪治外経、合治内府」と記されています。「内府」は内臓のことです。「胃合於三里」とありますから、足三里の効果が及ぶ内臓は胃であると示されています。

あとは、胃に作用している証拠をどこで得るかです。胃が位置しているところには「中脘(ちゅうかん)」というツボがあります。そして、忘れてはいけないのが背中に「胃兪」というツボがあることです。中脘は胃の位置、胃兪は胃の反応点と考えたらよいでしょう。

中脘と胃兪

私が試す限り、足三里周辺で中脘が大きく変化する点は見つからなかったのですが、ある点を刺激すると胃兪が瑞々しく変化するのを感じられました。その胃兪の大きな変化を及ぼす点こそが足三里の正しい位置と言えるわけです。この話で重要なポイントは、胃兪というツボは座標で定まっているので、思い思いの位置になりにくいのです。

ここまでの話は私の独創ではありません。既出の理論(古典)に記されていることをつなぎ合わせたにすぎません。その結果、足三里の位置が特定できたのです。その位置が数ミリでもズレると胃兪の変化は見られなくなります。足三里のサイズを米粒程度のサイズに考えておくべきだろうと考えてます。

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