細部に宿る鍼灸術

神は細部に宿る God is in the details.

今年最初に買った本の中で、この言葉を目にしました。
ドイツの建築家、ミース・ファン・デル・ローエの言葉なのですが、この建築家の名前を聞くのは初めてでした。「神は細部に宿る」はどこかで聞いたことがあったと思いますが、その時は何も感じませんでした。

年が変われば同じ言葉を聞いても響くことがあり、今回がまさにそうでした。建築家の言葉ですから、建築の極意を伝えるものかもしれませんが、鍼灸師として感じたことを書いてみます。

患者さんに鍼灸をする前に問診をするわけですが、大まかに聞いてよいところと、詳しく聞かなければならないことがあります。ちょっとした出来事や言葉の中に治療のヒントが隠されていることがよくあります。患者さん自身はノーマークでもそれが原因になっていることはよくあることです。「原因は細部に宿る」というわけです。

言葉の細部にも神が宿ります。
どういうことかわかるように、腰痛と訴える患者さんとの問診を始めましょう。

 鍼「腰が痛くなる前に寒気(さむけ)はしなかったですか?」
 患「なかったです。」
 鍼「背中がゾクゾクしませんでした?」
 患「あまりしませんでした」
 鍼「くしゃみは?」
 患「ありましたが、すぐに治りました。」
 鍼「鼻水は気になりますか?」
 患「少し詰まっていますね。」
 鍼「鼻水は垂れてきますか?」
 患「はい。」
 鍼「色は透明ですか?」
 患「はい。」

患者さんを見て、風邪っぽいなと思ったらできるだけ詳しく聞くようにしています。このようなやりとりはよくあります。さりげない会話の中にも気をつけなければならないことがたくさんあります。

たとえば「寒気」という言葉。「さむけ」と読みますが、あまり使わない人もいます。患者さんが言葉の意味をイメージしづらい時は正確な返事が返ってこない時があります。

言葉のイメージが伝わっていない可能性があることを考えて同じことをさりげなく別の言葉で言い換えることも時には必要です。ゾクゾクの方がイメージしやすい場合もあるでしょうね。(偉そうに書いていますが、勉強会で習っていることばかりです。)

この患者さんは「あまりしませんでした」と答えてくれました。「あまり」という言葉もクセモノです。「少しはしたけれど、気にするほとではなかった」という意味かもしれませんし、「気にはなったけれど、重要でないだろうから適当に答えておこう」と自分の判断で答えたかもしれません。どちらでもなく、単なる口癖かもしれません。

「『あまり』ってどういう意味ですか?」って訊くのもヤボですから、背中がゾクゾクしたら起こりうる症状を質問して確認をすることにしました。それで、「くしゃみは?」と訊いているのです。

くしゃみも寒くてくしゃみをしたのか、他の原因(噂!?)でくしゃみをしたのかを確認するために鼻水のことを訊きます。この場合は詰まっているので、くしゃみは寒さの影響である可能性が高いです。鼻水の状態にもイロイロなヒントがあります。詰まっていても垂れる場合と垂れない場合です。寒さの影響で体が冷えていれば透明な鼻水が垂れてきますし、熱があれば詰まって黄色になります。

細部に細部に…

と問診を進めることで、全体が見えることがあります。患者さんが腰痛で悩んでいても、この患者さんの会話から風邪の初期症状における関節痛とわかったなら風邪の治療ができるツボを選びます。もし、細部に隠れているヒントを見逃したら適切な処置はできません。

「神は細部に宿る」

本当の意味はよくわかりませんが、「細部で全体を観る東洋医学」にも通じる言葉だな~と思いました。書き出せばきりがありませんが、脈診でも腹診でも、目的は全体を観ることなのです。

(→細部に宿る鍼灸術2

ranking←クリ助のツボ。細かいことですが、よろしくお願いします。

コメント

  1. 石川聡 より:

    そうですね。
    言葉の細部に隠されていることが多いですよね。
    あいまいな言葉には、特に注意が必要ですよね。
    応援のポチッ!

  2. クリ助 より:

    応援ありがとうございます。
    医療に限らないことですが、時として「あいまい」はミスにつながります。
    コミュニケーションでは「あいまいさ」が味わいを作るのでしょうが…。

  3. トプログ より:

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