ネット割引について考える

前回の記事「ショッピングモールの鍼灸師」のコメントで浮上した課題に挑みます。

治療(医療)は商品なのか・・・を考えること。

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■ネット割引を検証する

まず、開業鍼灸師と勤務鍼灸師でも認識に違いはあるのでしょうか。
漠然と考えても思考が迷子になるので「ネット割引」を切り口にします。

「ホームページを見たと言えば初診料はタダ」

みたいな割引のことです。

「タダ」にする理由は明らか。来院を歓迎するためですよね。
患者さんにとっては安くなるし、鍼灸院側は患者さんが増えます(実際はそんなに単純なものではありませんが、単純化するためにそうしておきます)。

少しそのシステムにツッコミを入れてみます。

患者さんの中には、「タダにできる初診料って、そもそも何なの?」と思う方がいるでしょう。初診料は何に対して対価を支払っているのか…という問題を抱えています。

病院では見かけません、この仕組み。

■自由診療の掟

なぜ、鍼灸院には「初診料タダ」があるのか・・・

その前提となるのは自由診療。
鍼灸院の多くは自由診療、つまり施術内容も料金も鍼灸院が勝手に決められるシステムです。保険が適用されない診療とも言えます。

患者さんは全額負担。

鍼灸院がいくら安い料金設定をしたとしても、患者さんの負担は大きいです。だからこそ、患者さんにとって「少しでも安い」ことは大きなメリットになります。初診料タダは魅力的です。

一方、鍼灸院側の事情。

自由診療は「何をやっても自由(資格で許可されている範囲で)」なので、患者さんに最適な施術を行うことができます。保険診療ではできない細やかな施術によって回復の加速度を上げることができます。また、保険の中では対応しきれない、細かな症状に対応することもできます。

しかし、患者さんが集まりにくいという大きなマイナスがあります。「とりあえず病院(保険)で」と考える人が多いからです。

■商売のルール

ここまでを整理。

 「鍼灸院 → 自由診療 → 患者負担大きい → 患者集まらない」

「初診料タダ」は患者集めの切り札です。
「腕がよければ、黙っていても患者は集まる」と考える人にとっては、なじめないシステムかもしれません。しかし、現実は簡単ではありません。

規制緩和で加速が進んだ民間資格療法。自由診療を背負った鍼灸にとって、彼らはライバルです。患者さんにしてみれば、保険外の施術はみんな同じです(という人が多い)。

彼らは、“商売”のルールでやっています。お客さんの集め方を熟知しています。学校で集客方法も学んでいるようですし。それに対して鍼灸学校では患者さんの集め方を教えることは滅多にありません。

民間資格のネット割引への対抗意識が鍼灸院が初診料タダを助長しているという側面は否めません。現役開業鍼灸師としては、「初診料タダ」にする気持ち、よくわかります。頑なに「鍼灸は医療だから俗っぽいことはしたくない」と考えていては、食べていけないという現実が迫ってきます。

個人的な意見として「俗に入ることを嫌う」必要なんてないと思います。「医療は特別だ」と俗とは切り離して考える方が、患者さんとの距離が空いてしまうことだってあります。「鍼灸は商売でやっているんです」と俗に足を突っ込んでしまった方がラクになれる気がします。

■商品化で磨かれる

最初の課題に戻ります。

治療(医療)は商品なのか・・・

クリ助は「商品(のようなもの)である」と認めるべきだと考えています。
この考えは、病院などに勤務している鍼灸師にはなじみにくいと想像できます。
給料をもらう立場と開業鍼灸師では、立場が違うからです。

患者さんがいる」ところから始めるのと「患者さんがいない」ところから始めるのは、大きな違いがあります(開業を経験した立場だからわかります)。

「黙っていても売れる商品はない」
「よい商品が売れるとは限らない」

という法則に鍼灸も当てはまってしまいます。

では、「医療の商品化」というと「お金」を連想されるので、多くの鍼灸師はこの問題に触れていません。「患者さんのため」という方がカッコイイのです。

考えてみれば、テレビも冷蔵庫も何でも商品です。商品化されたからこそ、世に広まったわけです。冷やす道具を開発しても、(冷蔵庫として)世に出ていなかったら食中毒は減りません。性能が年々上がっていくのも世に出ているからです。

商品化意識は社会にとけ込むためには必要だと考えています。医療制度が鍼灸を歓迎しない以上、鍼灸師は鍼灸を社会に溶け込ませる意志を持たなければ生き残れません。そういう手段を持たなければなりません。

ただし、「初診料タダ」(割引)を認めることだけが商品化意識ではないと考えています。(クリ助は初診料を必ず頂いています。初診料は、初診時の問診にかかるクリ助の手間で絶対に必要な経費だからです。)

■本音

本当は「商品化」なんて言いたくはないのです。鍼灸の技術のことだけ、患者さんのことだけを考えていける仕組みがほしいです。黙っていても患者さんがやってくる、ことがどんなに羨ましいことか!(保険に対して思う)

開業して成功するにはハードルが待っています。技術以上の何かが求められます。成功している鍼灸師には魅力的な「何か」があります。クリ助もそんな「何か」を求めてブログでさまよっています・・・。本当に成功と言えるのは10年。それまで生き残れるかクリ助っ!?

(jackalさん、こんな価値観はいかがでしょうか?)

何かくれ~。
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コメント

  1. jackal より:

    私は治療自体は商品では無いと考えています。
    しかし、そこに商売の要素が入る事で商品化されてしまう。つまり、開業する瞬間に治療はある側面で商品化される運命にあると言えるのかも。
    犬や猫は商品ではありませんが、ペットとして商品化されていますよね。つまり本来商品でないものも商品化しようとすればできるわけです。
    しかし、犬や猫を商品として買うということになじめない感覚があって当然です。
    ですから、本来は商品にならないものを商品化してやっていくという行為にはある種のやりにくさや後ろめたさがつきまとうのは仕方ないのではないでしょうか?
    なかなか啓蒙が進まない鍼灸を社会に溶け込ませるためには普及活動の一環と割り切って商品化することも必要かもしれません。
    商品化の答えがネット割引という手段しかないのでは困りますが。

  2. クリ助 より:

    >jackalさん
    ペットの例はわかりやすいですね。
    世の中には、商品化するために開発されたものもありますが、ペットのように元々存在している動物を商品化する場合もありますね。
    痛いところに手を当てる「手当て」。これは家族でもできますし、鍼灸治療はその延長上にあるとも考えられますね。その一方で家族には不可能な専門的なアプローチがあります。
    専門的な知識や技術は商品に入るという考え方も成り立ちます。たとえば掃除。業者さんを呼べば掃除はそこから商品(サービス)になりますね。
    素人にできる=商品(サービス)でない
    専門家にしかできない=商品(サービス)
    と考えることもできますね。話が少しそれてしまいました。商品と考えることは、俗に入り込む手段でもあるし、プロフェッショナルを自覚することでもできるとと考えています。

  3. hassy より:

    治療行為はサービス業である以上、商品だと思います。というよりも、術者自体が商品なのではないでしょうか?
    指名制度がある治療院などで働くと、経験や技術が明らかに勝っている人が、新人に指名を奪われるケースが多々見られます。はじめ、なかなか納得がいきませんが、現実に起こります。
    それから、私は治療をショータイムと思うようにしています。

  4. クリ助 より:

    >hassyさん
    「術者=商品」という考え方を示して頂きありがとうございます。
    この考え方からいくと、術者である鍼灸師はタレント的存在と言えますね。確かに、先輩方から「人間性を磨きなさい」と教えを受けることも多いです。
    ローカルなタレントという意味では、ホストやホステスに近いのかな…。話が飛びすぎですね(笑)

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