学校では教えてくれなかった問診の方法。
もうちょっと早く知っていればもっとラクだったのに、と思うことがあります。
■患者さんと鍼灸師の間にできる溝
今日は施術中の話。
(施術中の問いかけが問診と言えるかどうか微妙なのですが…)
たとえば、肩を動かすと顔をゆがめる五十肩の患者さん。
鍼をします。そして、患者さんは試しに動かしてみます。
その様子をみて、鍼灸師は尋ねます。
「痛いですか?」
返事はいつも同じです。
「まだ痛いです」
痛みが出てから数日ならば1回の鍼で済んでしまうことがあります。でも、五十肩の患者さんの多くは、しばらく放っておいて、あちこち回ってやってくるというパターンが多いのです。その痛みが一瞬でゼロになることは、普通ありえません。
つまり、
「痛いですか?」
という質問自体がナンセンスです。
徐々に可動域(動く範囲)が増えていく肩関節。
私たちが確認しなければいけないのは、肩の動きがどう変化したのかです。
そして、患者さんに確認しなければならないのは、痛みの変化です。
変化には3種類あります。程度、質、位置です。
程度は、痛みの強さ(辛さ)が感覚的にどう変わったのかです。
質はどんなふうに痛むかです。ビーンなのか、ズキンなのか…。
位置は痛みが発生している場所です。範囲が変わることもあります。
患者さんは、程度、質、位置が変化していても、痛みが少しでも残っていれば「痛い」と言うでしょうね。痛くないなんて言ってしまったらそこで施術を終えられてしまうかもしれないからです。
患者さんとしては、「痛い」と答えた方がベターです。それに対して、施術者側は「痛くないです」という言葉を期待するものですから、両者に溝があります。
長い間、ずっと私はその溝に落ちていました。
■変化を知れば心が動く
施術中の問診は「変化を探る」ことが目的です。
施術によって起こる変化をつかまえていきます。
施術の結果がよかったのか、イマイチなのか…。
その場で判断していかなければなりません。
五十肩は可動域の変化がわかりやすい症状です。
ですから五十肩は可動域が命です。
患者さんが「まだ痛いです!!」と言っていても、動く角度が10度でも変化していたら、(とりあえずは)それでOKです。施術の成果があったと考えます。100度で痛かった人が110度曲げられるようになっても、限界領域では痛みは出てしまうものです。100度で痛いのと110度で痛いは内容が違います。
鍼灸師だけが違いをわかってもダメです。
可動域が10度違っていても、患者さんが気が付かなければ何も変わっていないのと同じです。患者さんが効果に気が付かなければ効果ゼロです。それが自由診療のオキテ。
「角度が変わったでしょ?」
と患者さんに尋ねても、最初の角度を患者さんが把握していなければ、
「え、そうですか…。まだ痛いですよ。」
となってしまいます。
それだと、感謝されることはありません。
この仕事は感謝を頂けなければ成り立たない仕事です。症状を動かすだけではダメで、患者さんの心が動くようでないと、食べていけないのです。
患者さんの心が動けば私の心も動く。
そんなふうにして回っています。


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