1週間後が予定日の妊婦さんがやってきました。
今回の出産は3回目で、今のうちに、体の痛みをどうにかしたいとやってきたのです。
二人目のお子さんの出産から診ている妊婦さんなので、私の手口は知られています。
その手口は、最後に書きます。
その前にウンチクを少々。
■妊婦さんを安全に施術する
妊婦さんを診る場合に、妊婦さんも施術者側も神経質になるところは安全性ではないでしょうか。そう、「安全第一」ですよね。
安全な施術とは何か、ということになります。もちろん、安全はすべての患者さんに対して考えています。ここでは、話が広がりすぎないように妊婦ケアに対する安全性の意識を書いてみようと思います。
助産師でも医師でもない鍼灸師は、出産に関する知識も限られています。その一方で、体に触れて情報を得ることに関しては、抜きんでていると思います。そうでなければ、この職業で食べていくのは難しいです。
というわけで、鍼灸師は触れるプロです。
もう一つ付け加えると、観察のプロです。
検査機器や画像で妊婦さんを診断しようとすると、ターゲットは子宮になります。子宮がどうであるか、胎児はどうであるか、モニターから情報を得ようとします。その情報がすべてであるなら、鍼灸師は何の情報も得られません。何もわからない鍼灸師が妊婦の体に触れることは危険であることになります。
そもそも、妊婦さんとは…。
「お腹に赤ちゃんを宿した特別な存在である」であるわけですが、ベースは女性です。さらに言えば人間です。妊娠中のトラベルはすべてスペシャルなものではありません。誰でも患う病気やトラブルがたまたま妊娠中という場合も多いのです。
こんなクールな書き方ができるのは、私が男性だからだと思います。お産を経験した人は「そんなものではない!」と反論もあるでしょう。でも、妊婦さんは、人間であって女性であって、妊娠となったのです。神聖な部分を論じる前に、基礎を考えたいと思います。
■妊娠中の姿勢
たとえば、妊娠中に起こる腰痛。
妊娠というスペシャルな時期の腰痛だから、治療には特別な技術が必要だと考える人もいるでしょう。しかし、基本は同じです。
正しい姿勢が取れないから痛む
男性が引越作業のために中腰で半日過ごしたら腰に痛みが出た、という症例があったとしましょう。本当はしたくない姿勢を取りつづけて起こった腰痛ですよね。妊婦さんも同じです。胎児が大きくなるに従って、骨盤の角度や脊柱のカーブが変化してきます。脂肪が増えたりもするので、妊娠前と同じ姿勢が取れません。だから痛みが出ます。
体は変化しているのに、前と同じ姿勢を取ろうとしていると腰痛になるのです。変化に応じた姿勢が取れるようになると腰痛が軽くなります。活法では「時と場合に応じた姿勢」と呼んでいます。ファッションモデルの姿勢がいつでも正しいわけではありません。真っ直ぐも必要ですが、時と場合によって曲がっていることも必要なのです。
妊婦さんが、「寝返りすると腰が痛い」と言った時、「お腹が大きいから」が正解ではないと私は思います。なぜなら、そのお腹に応じた体の動きができるとその場で痛まなくなるからです(お腹が小さくなっていないのに痛みが消失)。子宮だけを観察しても腰痛の原因は見えないと思います。
子宮をみて腰痛を知ることはできませんが、痛みが子宮にもたらす影響はわかります。痛みを感じている妊婦さんは、本能で胎児を守ろうとします。ギュッと子宮を収縮させて。お腹が張るという状態です。時と場合に応じた姿勢が取れると痛みが軽減されて子宮もやんわりします(そうならない場合は、子宮に原因が潜んでいるのかもしれませんと考えます)。
■痛みとリスクの関係
妊婦さんのリスクは、いつも子宮に潜んでいるわけではありません。もし子宮に原因が潜んでいるのであれば、簡単に手を出すことはできません。鍼灸師が手を出してはならない状態かもしれません。
妊婦さんのリスクは、痛みがなくて自由に動ける状態に導けば軽減されます。もちろん、すべてのリスクがなくなるわけではありませんが、少なくともその方向に進む限り安全です。
素直に読んでいただけた方は納得できる話だと思いますが、時には「痛みがあるなら動かない方がよい」と動けないように固定しようとする考え方もあります。
確かに「動いて痛いのだから動かなければいい」というのは、理にかなっているようですが、これから「お産」という最もダイナミックな運動が待っているのに動きを止めてよいのか…。
■痛みを取る方法
ここから、私の手口について書きます。
基本として、妊婦さんに無理な体勢や無理な動きをさせません。強い痛みを出したり、驚かせるような施術もしません。精神的にもプレッシャーを与えないように努力をしています。私が男性なので特別に気を遣っています。「男性は粗雑で乱暴」というイメージをもたれないように(笑)
この妊婦さんのトラブルは、主に恥骨周辺から太ももの付け根の内側の痛み。同性でも、「どこですかー?」と触って探りにくいところだと思います。私もできるだけ触れないで確認しようとします。妊婦さんに、「指でしっかり指してください」と位置を詳しく教えていただきます。
だいたいの位置がわかれば、問題の筋肉や関節が特定できます。次は、どうしたら痛みが出るのかをチェックです。「座ると痛い」ので、実際に座って確認していただきます。痛みの局所が圧迫されて痛むのと、その座った姿勢に無理があるのかで意味が違います。どうも後者のようです。
次は、仰向けでチェックです。妊婦さんのペースでゆっくり姿勢は変えてもらいます。その時に、どんなふうにして仰向けになっているのか観察するチャンスです。ただ、待っているわけではないのです。どのタイミングで痛みを感じているのか探るために表情も読むようにしています。
そんなわけで仰向けに。下半身を捻ると痛みが出るようです。活法ではこう考えます。「下半身が捻れるようになれば痛みは軽減する」と。実際に下半身を捻りやすく調整すると、痛みが軽減しました。しかし、まだ残るという状態。
痛みの部位から「恥骨筋」という筋肉であることはわかっていたので、恥骨筋の調整です。その際も、恥骨筋そのものをいじろうとするのではなく、恥骨筋を使う動きが円滑にできるように調整するのです(パンツを脱ぐ必要はないわけです)。
そうしてさらにラクになったわけですが、寝返りもラクにしておく必要を感じました。寝返りは「体を捻るのが痛い」と思われがちですが、多くの場合、腰を浮かせることが痛いのです。「腰を浮かせても痛くない」という状態に導くと、寝返りもラクになります。
ここまで、無理な姿勢もさせず(むしろ、無理な姿勢を減らし)、筋力も、「立つ」、「座る」、「寝る」、「寝返る」くらいですから、日常生活のレベルと同等かそれ以下です。危険な要素が入る隙間がありません。。
これが、私の手口です。
■内臓の影響も東洋医学で考える
妊娠していても、普通に動ける状態にする、ということが大事です。逆子も発想は同じです。赤ちゃんが自由に動けないから逆子が直らないのです。赤ちゃんが自由に動くためには、お母さんが自由に動けることが必要です。子宮、胎盤、臍帯などと考える前に、不自由さがないかどうかに着目することが大事だと考えています。
それから、内臓が冷えていないか、胃腸が弱っていないだろうかと、子宮に影響しそうな不調を和らげていきます。こういう時はツボがたいへん役立ちます。手足のツボは内臓につながっていますから、遠く離れたところから内臓や子宮の血流を改善することも可能です。
ツボバンザイ!


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