ギャートルズのあの肉を食べた人はいない

ナンバ(二軸動作)の話を書く予定でしたが、もう少し勉強してから書くことにしました。いつまでもブログ更新が止まるのも嫌なので、日頃思っていることを書きます。毎度のことながらマニアックな展開です。

患者さんとの会話の中には宝が眠っています。
今日もまた患者さんの心理を一つ学ぶことができました。

1年以上前に通院されたことがある患者さんが、前と違う悩みでやってきました。今回の症状は腰痛。しばらく前から痛みがあったようで、なぜもっと早く来なかったのか不思議に思いました。1、2ヶ月間前から接骨院に毎日のように通院していたらしく、「骨の歪みが原因なので歪みをおしてもらっていた」ということでした。

患者さんから詳しく症状を聞いていると、患者さんのある思い込みに気がついたのです。それは、「骨が原因の場合は鍼灸院に行っても無理」ということです。改善の兆しがないことから患者さんは「もしかしたら筋肉に原因があるかもしれないと思って…」と言いながらやってきたのです。

 が原因なら接骨院
 筋肉が原因なら鍼灸院

という通い分けをされていたようです。

確かに、接骨院には「骨」の文字が入っているので、骨の問題に対処してくれそうです。接骨の名称は、昔の柔道家が練習相手の脱臼や骨折に処置をしていたことに由来するのですが、現在の法律では、脱臼や骨折は医師でなければ処置できません。

接骨院でも鍼灸院でも、骨をどうにかすることはできません。

「骨」から「骨格」へ視野を広げてみるとどうなるのでしょうか。「骨が歪んでいる」という表現をよく耳にします。ほとんどは、「“骨格”が歪んでいる」ことを指していると思います。さらに、「骨格の歪み」は「骨の位置関係が正しくない」と言い換えられます。

骨の位置関係が変わって、変わるのは姿勢です。
つまり、「骨格の歪み」は「姿勢の歪み」に言い換えることができます。

例えば腰痛に対して、「骨が歪みが原因です」と言われると、ぼんやりしていた問題点が突然ビジュアル化されます。神経や筋肉の構造、はたまた発痛機序などを説明しようものなら、話が複雑すぎて講義をしなければなりません。

「骨の歪み」というイメージしやすいものに、患者さんはホッとするのだと思います。このことを、私は一人で勝手に「原因の視覚化がもたらす安堵感」と名付けました。

魚を食べたり、ケンタッキーを食べると、骨が残ります。食べてなくなる筋肉より、残る骨の方が視覚かしやすいのではないでしょうか(例外的に、ギャートルズのあの骨付きの肉があります。食肉をかつてない発想で視覚化に成功した傑作だと思います)。

Manga_meat
ウィキペディアから引用)

ただし、視覚化された姿勢の歪みは正確なものであるとは限りません。正確であるかどうかよりも視覚化に意味があると考えた方がよいです。

接骨院の「骨」と同じように、視覚化を導くのは「整体」という言葉だと思います。「接骨」の第二の呼称「整骨」とよく似ています。「整体」がもたらす視覚化は、そのイメージを筋肉まで広げると思います。

ギャートルズが食肉の視覚化に大成功をおさめたように、「整体」も施術の視覚化に大成功した例だと思います。ギャートルズに肉はイメージとして違和感がないのに、実際に再現しようとするとかなり難しいのです(やってみてください)。整体も全く同じで、言葉はすんなり入ってくるのに「整体は何か?」と問われると、言葉につまってしまいます。

整体院の「骨と筋肉」は、ギャートルズの骨付き肉なのです。
ものすごい強引な論理でここまでつないできました(笑)

では鍼灸院はどう視覚化されているのでしょうか。

患者さんのリアクションを見る限り、注射のイメージに置換されているケースが多いです。鍼で痛みがなくなると「鍼には薬が塗ってあるのですか?」という質問が来ることからも、そういう場合が多いです。体がどう調整されるかよりも、患部に何をされるのだろうか、とイメージが広がらない場合が多いと思います。

筋肉注射と血管注射があるため、「鍼は、筋肉に刺すのか、それとも血管に刺すのか、(神経に刺すのか)」という質問が多いのだと思います。「ツボです」と答えても、見えないツボは視覚化不可能なので、患者さんも見えるものに置き換えて理解しようと試みるのだと思います。その気持ちはよくわかります。

こんなふうに考えてみると、鍼灸を視覚で理解しようとするのは困難で、視覚化しようとするものなら、注射のイメージに犯されて恐怖感を感じるだけです。

視覚化においてはボロボロですが、鍼灸院に患者さんが通うのには、ちゃんと理由があるわけです。その理由を正しく理解できれば、患者さんとの関係もよりよいものになる気がしています。

なんだかんだ言っても、鍼灸院に患者さんが通うのは、鍼灸にしかできないことがあるからです。誰もが驚くツボの作用。その魅力に一番取り憑かれているのは他ならぬ鍼灸師です。

視覚化が難しいツボの位置やその作用。その不思議さこそ、最大の魅力なのかもしれません。とはいえ、私が目指しているのはわかりやすい鍼灸。不思議を当たり前に変えられたらいいな、と思っています。

書き出しで紹介した患者さんの腰はその場で軽くなっていきました。患者さんに気がつかれないように視覚化された原因をリセットし、新しいものにセットしました。どうやったかは書きません。気づかれないように心がけました。

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コメント

  1. 運営者様へ
    はじめまして、医療+医薬品の業界まとめニュースを運営しています。
    このたび突然ご連絡をさせていただいたのは
    当サイトと相互リンク、相互RSSの登録をして頂きたくご連絡をさせていただました。
    ご迷惑でしたらこの文章は削除して頂いて結構です。申し訳ありませんでした。
    まだまだ未熟ブログではありますが、ぜひ宜しくお願いいたします。
    こちらでは貴サイトのリンクは登録済みです。
    今後ともよろしくお願いいたします。
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  2. 針立酔候 より:

    法律上で骨折・脱臼は医師にしか処置が出来ないのですか?
    柔道整復師には脱臼・骨折の整復処置が法律上認められていますが?
    応急処置として骨折・脱臼を整復処置し、医師に送り同意を得たら柔道整復師は継続での施術が可能です。
    ちなみに急性の捻挫・打撲・肉離れは医師と柔道整復師にしか治療が法律上認められていませんが、針灸師は治療している現状がありますよね?これをどう認識していますか?後学のため教えて下さい。

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