このツボ! 股関節の調整に次リョウ(じりょう)

動きがわかるとツボがわかる(スノーボードのイメージ)

ツボで動く身体(からだ)をつくる」のが私の研究テーマ。

動く身体(からだ)」のメリットで強調したいのは次の3つです。

1.痛み(こり)が取れる
2.疲れが取れる
3.運動パフォーマンスが上がる

この他に、体調を整えたり病気を治すことにも応用できます。「身体が動く」ようになると、その位置に応じた内臓の調子が上がるからです。

最近の記事には、筋肉や骨格に対するアプローチばかり書いていますから、「鍼=筋肉」というイメージにならないように気をつけます。とはいえ、得意分野を書くのが一番だと考え、本日も「動き」を話題とした記事にします。

スノーボーダーの症例を紹介します。
(感想をメールを頂き、許可を頂けたので掲載します)

先日の左側腰の下辺りに打ってもらった鍼がかなり効いたらしく、クビだけではなく、腰から足まで左側が、一本の張りつめていたいた糸が切れたかのように、ツレがなくなり、腰の動き、足の動きがスムーズになりました。

3年前の怪我以前でも、階段を降りる際には、いつ脚をつまづき転び落ちるか、いつも怖い思いで降りていました。手摺を持たないと正直怖かったです。

かえって今では、今までスムーズに動いていたと感じといた右側のツレが気になるようにまでになっています。

私も「ここまで変化したかッ!」と驚く感想です。

患者さんの訴えは頚のコリ感でした。このコリを取ろうとして使ったのが、「次リョウ(じりょう)」という仙骨にあるツボです。そうしたら、私の意図を越えて、腰の動きや脚の動きまで改善しました。まさに連動!

次リョウ

この症例では、想像を超えた効き方をして、本音を吐けば「ラッキー♪」です。全てを見通して施術できてれば一流なのですが…。今の実力では、この症例を分析し次回に活かすことを考えます。次回は「そんなのお見通しさっ」なんて余裕の態度を見せたいものです(笑)

この症例のポイントです。

「頚の後から脚の後にかけて糸が張ったようなツレ」ということは、後の左側全体にツレ感があったわけです。そのツレが一点で解決できていることに注目してください。

問題は一点にあり、その一点が全体に影響を及ぼしていたことになります。ただし、その一点はコリ感のある頚ではなく仙骨(腰)でした。もし、頚のコリ感に鍼をしていたら、同じ結果にはならなかったでしょう(過去の検証から)。

原因点(悪いところ)と発現点(嫌なところ)は違う、ということです。素人とプロの違いは、原因点を見つけられるか否かであると思います。さらにいえば、原因を作る起因(きっかけ)まで、視野に入れた臨床ができる人が一流になれるのだと思います(がんばります)。

さて、頚からアキレス腱を結ぶラインにツレがある場合、どこを緩めればよいのでしょうか。「末端を狙う」という法則があります。この方法は、一本の筋肉を対象とするならば使えますが、今回のように頚からアキレス腱まで多数の筋肉が関わっている場合は使いづらいです。

連動構造を分析するには、どうしたらよいか…。私が出した結論はバランス保持です。

シーソーをイメージしてください。

板を平行に保つためには、中心からの距離がポイントですよね。同じ重さの玉があれば中心から等距離に置けば板は傾きません。骨格には、このような玉の置き場が無数にあるイメージです。どこかが重くなれば、その逆側が同じだけ重くなればバランスが取れます。

シーソーモデル

実際の肉体は重さが変わるわけではありません。こり固まって動かなくなった筋肉が重さになるとイメージしてください。実際、動かない筋肉は動作にとってはお荷物になるわけですから。

筋肉のコリ=仮の重さ(「仮重(かじゅう)」と定義します)

多くのコリは「身体の重さ感を補正するためにできた」と考えます。補正が必要ない状態にすることが、私の施術イメージです。

こうした発想は、経絡(一般的なツボ理論)からはかけ離れているはずです。古武術鍼法では、どの経絡であるかは重要ではありません。また、経絡は「流注」という連続性(つながり)が重要ですが、古武術鍼法では「空間的な距離(感)」が重要です。

この話は経絡とは別の話です。経絡を否定するわけでも発展させているわけでもありません。全く別の話です。

ここで症例に戻ります。

次リョウの鍼で起きた体感の変化を整理します。メールの他にリスニングした内容を加えています。

1.項(うなじ)のコリが消えた
2.股関節の内旋(内捻り)がラクに=お姉さん座りの形がラクに
3.太ももの外側のツッパリが消えた
4.骨盤を左右に振る動きがラクに
5.膝の屈伸がラクに
6.歩行、階段の上り下りが自然に

1~6をまとめて説明できたらいいな、と思います。
すぐにわからなかったので、こういう時こそ学ぶチャンスです。

研究段階の域を完全に脱していませんが、この症例で問題になっていた動きは、「母趾球を軸とする下肢の内旋」です。「母趾球を地に付けたまま、踵を外側に開き出して股関節を捻る」という動きです。同様の症例が重なってくればハッキリします。

脚の捻りAB

立位において、母趾球が股関節を内側に捻る時の回転軸になる場面があります(やってみるとわかりますが、外捻りの時に母趾球は回転軸になりにくい)。

ですから、次リョウは「母趾球を回転軸とする下肢の動きを改善させた」と仮説が立てられます。しかも、項(うなじ)のコリと関係があるかもしれない、というところまで言えるのです。今回の症例で改善を促したかったのは、頚椎の3番です。

動きの分析から、「頚椎3番-仙椎2番(次リョウ)-母趾球」がつながったように思います。

この記事に書いてあることは、検証が十分ではありませんし、臨床を重ねなければ内容に保証がつけられません。「じゃあ書くな」って話ですが、記事にしてみたのは「どうやって使うツボを決めているのか」にお答えしたかったからです(質問が多いため)。動作分析の方法やその後の検証についても想像していただけるのではないでしょうか。

ついでに書きます。踵を支点とする股関節の内旋を改善するには、上リョウというツボが便利です。症状名では坐骨神経痛になるでしょう。この記事の症状と似ていますが、やりにくい動作が異なります。

これらのツボがある仙骨というのは、身体の動きに大きく関わっています。活法でも大事にしているポイントです。人骨の中で、「にんべん」が使われているのは仙骨だけです(活法の師匠に言われて気がつきました)。どの骨も大事ですが、仙骨には特別なものを感じます。

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コメント

  1. sano より:

    今回も良い記事をありがとうございます。
    実は現在私が臨床で多用しているのが、「末端を狙う」法則です。
    私はごう鍼を一切使わない、てい鍼専門なのですが、それでも十分な効果が得られています。「末端を狙う」法則恐るべしですw。
    起始・停止付近に目標とする筋肉を緩める反応がでやすいことはごく最近気が付いたのですが、脊柱起立筋や、梨状筋など筋肉が広範囲の筋だったり、解剖的に外から起始・停止を触れることができない部位の場合てい鍼では刺入できませんので、起始・停止とは異なる若干離れたところにツボを取っています。
    臀部痛を後頭骨にある反応で取れたこともあり、おそらくこれがクリ助さんの言われている連動性の回復というやつではないかと思っています。
    動作分析ができるようになれば、勘ではなく連動性からツボを選べるようになると思うと、動作ということをもっともっと研究する必要がありそうですね。

  2. クリ助 より:

    >sanoさん
    私はごう鍼専門で、てい鍼はほとんど使いません。使う道具が違うsanoさんからコメントを頂いていることが、私の自信になります。活法理論が、どんな鍼灸(方法)にも活用できることを示して頂けているわけですから。
    動作分析を徹底すると、数学的にツボを導けるようになります。私の理想は「そこしかない!」と理論的にツボを導けることです。数で割り切れないのが人間ですが。
    また、よろしくお願いします。

  3. sano より:

    レスありがとうございます。
    こちらこそ、すごく患者さんの役に立つ技術を無償で公開してくださって本当に助かっています。
    今後ともよろしくお願いいたします。

  4. ぐっち より:

    >実際の肉体は重さが変わるわけではありません。
    >多くのコリは「身体の重さ感を補正するためにできた」と考えます。
    これは、「50kgのバーベルを担いでスクワットすることは出来るが、50kgの水が入った水槽は持ちあげにくい(同じ重さの物でも、密度が高い方が重心が固定されやすい)」という感じでしょうか?

  5. クリ助 より:

    >ぐっちさん
    ご質問ありがとうございます。
    ご指摘のバーベルと話が似ているかもしれませんが、ちょっと違いまして…、
    1.伸縮する筋肉は(骨格を動かす)パワーを出すので軽い存在と感じ、
    2.凝り固まった筋肉は(骨格を動かす)パワーを出せず、重い存在に感じる
    ことを伝えたかったのです。
    実際の重量(質量)が同じであっても、脳が「重さが違う」と感じれば、重さを補正しようとする、と考えています。「仮重」は、「錯覚による重さ」と言い換えてもよいです。
    また、質問してくださいね。お答えすることで私の頭の中も整理できますから。

  6. ぐっち より:

    素早い回答ありがとうございます。
    なるほど…脳の錯覚ですか。完全に理解できていませんが、「そういうもの」として覚えておきます(今は)。
    稚拙な質問になるかもしれませんが、これからもよろしくお願います。

  7. クリ助 より:

    >ぐっちさん
    私の学ぶ碓井流活法では、「脳の錯覚」を応用する技がたくさん出てきます。この発想の前提になっているのは「自分の体は自分で思うほど正確に認識できていない」という話です。
    いろいろな症状が、そういう認識の間違いによって起こっていると考えるのです。鍼灸しか勉強していなかった時には、考えもしなかった発想ですが、今では当たり前になっています。
    というわけで、今後もよろしくお願いします。素朴な疑問ほど嬉しいので(難しい質問にはお答えできませんから)、どんどんお願いしますね。コメント(反応)を頂けると、励みになります♪

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