鍼灸のコツは柔術にあり!

柔術稽古覚書

■あなたにはアレが見えますか?

この世界には、「形あるもの」と「形なきもの」があります。

前者は「誰もが存在を認識できるもの(A)」、後者は「存在はしていても、特定の人にしか認識できなもの(B)」です。さらに「存在はしているであろうが、まだ誰も認識に成功していないもの(C)」があります。

存在はしていても、特定の人にしか認識できないもの」とは…。

たとえば、料理に隠れている味をイメージしてください。隠し味は、味覚に優れた人しか認識できません。

存在はしているであろうが、まだ誰も認識に成功していないもの」とは…。

霊的な存在と言ってもいいですが、アレルギーのある人もいると思いますから、物理学の世界で言われているダークマター(暗黒物質)をイメージして頂く方がよいかもしれません。

森

私は、患者さんに接する際も技術を研究する際にも、A~Cを意識するようにしています。特にセミナーで技術を伝えたり、コーチする際にはAを最も重視しています。

AよりBが怪しいですし、CはBより怪しいです。

セミナーの雰囲気も怪しくなりますが、「伝わるかどうか」が怪しくなるのです(笑)

 A…形あるもの 視覚的に得るもの
 B…形なきもの(1) 五感のフル活用で得るもの
 C…形なきもの(2) 第六感で得るもの

まだわかにくいので、こうしてみたらどうでしょう。

 A…理論的
 B…感覚的
 C…直感的

これなら、シンプルですよね。

■気について

気が見える」と言う人もいます。「気を感じる」と言う人もいます。

これはパターンC。見えたり感じたりするのであれば活用すべきえすが、そういう能力のない(私のような)人間が、Cを求めて中途半端なことをするのはタチがよろしくありません。

Cの直感を否定するつもりはありません。実際に、感覚や理屈を超えていると思う場面は臨床で数多く出会ってしまいます。ですが、それはAとBがあってのC!

私はAとBを往復していて、Cの世界には自分からは行かないようにしています。

患者さんと接する直前までは、「A>B」。
患者さんに触れてからは「A<B」です。
そして、患者さんと離れてからは「A>B」に戻ります。

赤ちゃんの手

医学や医療に理論は不可欠ですが、現場では理論に縛られないようにしています。患者さんに直接触れる鍼灸師は、患者さんから直接(感覚的な)情報が入ってきます。これを大切にしない理由はありません。

病院の検査で異常がなくても、私た鍼灸師は五感で異常をキャッチできます。そもそも、患者さんの「つらさ」は、感覚から来るものです。患者さんの感覚に対して自らの感覚で応える、そこに鍼灸師の存在意義があるように思います。

ただし、感覚だけで向き合ったら医療ではなくなります。ロジカルに、ある意味ではクールに患者さんと接する自分があるべきです。

■普通の感覚を磨くだけ

これを踏まえて、鍼灸施術について考えます。

前置きがあります。それは、鍼灸施術は「運動」だということです。

使うツボに意識が向きやすいのですが、鍼灸施術は、鍼灸師の運動によってもたらされるものです。動きは小さくても、そこには確かな運動があります。すべてのスポーツがそうであるように、動きは感覚でコントロールします。感覚に優劣は、成績に大きく響きます。

鍼灸の勉強会で聞くことの多い「気を感じろ」という表現。ドラゴンボールの中では修行を積むと気を感じるようになるようですが、普通は「気って何?」というレベルです。

「気を感じなければ鍼灸はできない」と考える人もいます。これは間違っています。正しいのだとすれば、鍼灸師は特殊能力をもったエスパー的存在です。実際は、特殊な能力など必要ありません。

ルービックキューブ

患者さんを観て、患者さんに触れて、患者さんを動かして、理論的に分析して得られる情報で対応できます。第六感が開いていなくても、ごく普通の感覚(五感)から得られる情報はたくさんあるのです。

確かに、患者さんに触れること(近づくこと)で得られる直感的な情報もあります。ですが、この直感的な情報は、術者の個人的なものでしかありません。個人の範囲で大事にすればよく、シェアできるものではありません。

■柔術で学ぶ鍼灸のコツ

先日、柔術のレッスンを受けました。先生の話は、私の考え方と一致して、ドラゴンボールの世界でしか通じないような「気」という言葉を意図的に避けていました。誰でも理解できる運動のパターンとして、柔術の動きや体の使い方を指導してくださいました。

柔術は、体を効率よく使うためのヒントで溢れています。効率よく使えた時は、動く時の感覚がまるで違うのです。自分の動き方一つで、自分も相手も、感覚は大きく変わります。

バスケット

スポーツの最中、ある瞬間にスッと感覚が変わる経験をしたことはないでしょうか。ソレと全く同じです。コツをつかんだ瞬間です。

コツとは「」です。

ムダを落とした結果、骨(こつ)が残ります。鍼灸でも整体でも、上手か下手かは、コツを(感覚として)知っているかどうかです。上手な人ほど、シンプルな動きをしています。見た目は同じように見えても、全く違う動きをしているのです。

私のスキーが上達しないのは、無駄な動きが多いからです。(自分ではそんなつもりはないのに)無駄な動きばかりなのです。スキーのフォームが重力、斜度、雪、道具とのやりとりから生まれるように、鍼灸も患者さんとのやりとりの中からフォーム(形)が生まれます。

■名人をマネしてもできない理由

広沢先生は、著書『柔術稽古覚書』で、このようなことを述べています。

柔術の動きは、ひとつひとつ分解していけば必ず最初は大きな動きから始まります。
しかし、それらの動きをすべて身体の内部感覚に収めてしまうのが柔術の技です。
「技は見てもわからない」というのがポイントです。

「鍼灸と同じだなぁ」と思いました。鍼灸師が活躍の場を広げるために必要なのは、「大きな動き」から始めることだと思います。最初から名人の内部感覚に挑もうとするから混乱するのです。最初から名人の直感をマネしようするから、挫折するのです。

私の言う「鍼灸の動き」とは、指先の使い方だけを指しているのではありません。患者さんと接する時の距離感や近づき方、遠のき方、触れ方、圧の加え方と抜き方、視線の使い方、などなど、鍼灸師の動き全てです。

ただし、見える動きをマネするだけでは本質にたどり着けません。広沢先生が、「柔術の技は視覚では捉えられない」とおっしゃっているように、「鍼灸の技は視覚では捉えられません」。

活法(古武術整体)もそうです。視覚から本質を得ることは難しいでしょう。でも、鍼灸よりも動きが見やすいため、大きな動きを学ぶには鍼灸より有利です。活法を学ぶと鍼灸まで上達してしまう理由は、ここにあるように思います。

■上達のコツとは何か

柔術のコツは、活法のコツそのものです。活法は柔術の裏技だからです。柔術の練習で得たものをダイレクトに使えるのは活法だけです(理屈の上では)。さらに、それを鍼灸にそのまま活かせるが古武術鍼法です。

野球のネット

活法セミナーの受講者の一人がこんな事を言いました。「バットは誰でも振ることができるが、ホームランは誰でも打てない」と。たとえば、DVDを観てやり方を真似するのは、バットを素振りするようなものです。ホームランは、ピッチャーの心理や癖を読み、柔軟に対応しなければなりません。もちろん、必要な速度でバッドを振り抜く筋力も必要です。

何度も練習を重ねて、ある時「ボールが止まって見える」という領域が訪れるのかもしれません。鍼灸師でいえば、その領域が「気を感じる」ことだと思います。理屈では説明できないこの領域は、慎重に扱わなければならない、というのが私の意見です。

広沢先生と出会いは、私個人にとっても活法研究会にとっても大きな出来事となりました。まだ初歩の初歩に足を踏み入れただけです。これから、たくさん吸収するつもりです。

広沢先生のブログ『40歳から始める八光流柔術 あんころ猫の手』は、柔術を分かりやすく解説しています。こんなにわかりやすのは他にないと思います。先生のブログはこちらです。興味のある方は、直接お問い合わせください。

■セミナー告知
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活法研究会

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コメント

  1. abe より:

    関係ない話で恐縮ですが、
    仏教についてのおもしろいお話があります。
    仏教の根本の教えは心と行いのやすらぎでした。
    ブッダと仏弟子の感動の物語がたくさん書かれています。
    たまには仏教の物語もおもしろいですよ。
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