
「鍼灸師」という肩書き、外ではあまり使いません。
理由があります。
たとえば、美容院などで、
「ご職業はなんですか?」
と訊かれたとしましょう。
「鍼灸師です」
と答えると、たいていの場合は、
「シ、シンキュウシ???」
となります。
「ハリとかキュウをやっているんです」
と言い換えて、
「あー、ハリキュウですか」
と理解して頂くまでにワンクッション入ります。
音でわかって頂くために、
「はりきゅう師」と言ったとしましょう。
そんな時は、3つの返答パターンを心の中で準備しています。
その1 「あ、わたし(僕)、肩こり(腰痛)なんですよ~」
その2 「ハリって痛くないんですか?」
その3 「マッサージとかもやってくれるんですか?」
9割はここに収まります。間違いありません。
次に、「鍼灸院を経営しています」という回答も用意しています。こう答えると、
「スゴイですねー」
というパターンが多いです。「経営」に反応しての返事だと思います。実際にスゴイかどうかは別ですよ(笑)
「鍼灸師」と答えると「鍼灸」にフォーカスされ、「鍼灸院の経営」というと「経営」にフォーカスされます。意図的に何年も答え分けて実験して来ましたから、この傾向は間違いありません。自己紹介の仕方で、相手との話題(関係)が決まってしまいます。
これは、患者さんと鍼灸師の間でも重要です。
構造上、患者さんと私の関係は、患者さんの肩書きで結びつけられます。腰痛で来院されたのであれば、「腰痛のAさん」です。私の意識は「腰痛」と縄に縛り上げられてしまうのです。
腰痛のAさんの腰痛がなくなると、「腰痛だったAさん」です。縛りから解放されていきます。本当は良くないことですが、症状にフォーカスしてしまうのが常です。
私が未熟者だからですが、「Aさんが腰痛になった」と考えることは、私が思うに難しいことです。強く意識しないとできません。症状が取れない限り「腰痛」にロックされた意識を外すのは容易ではないのです。
意図的に外すには、Aさんに別の肩書きが必要です。職業や会社の役職である必要はありません。「営業職で1日中クルマの運転をしている」という生活スタイルも肩書きにできます。「営業職で1日中クルマで運転をしていたAさんが、ある日から腰痛に悩まされている」となるのです。
流れとしては、こうなります。
1.「腰痛」をいう肩書きを背負った患者さんと出会う(初診)
2.「腰痛」に意識された互いのロックを外そうとする(治療期間中)
3.「腰痛」という肩書きが外れる(治療終了)
4.・・・
4が本当のAさんです。
そこにはどんな肩書きがあるのでしょうか・・・
私の仕事は、Aさんに本当の肩書きを取り戻してもらうためのお手伝いです。しかしながら、本当のAさんとお付き合いする機会の少ない職業です。症状がなくなって体の調子が良くなれば通院が終わるからです。調子が良いのに通う必要はありません。
ただ、良くなっても「元気でいられるように」と通いたいという要望もあります。「疲れをとる」という目的を否定しているわけではありません。そういう通院の仕方も大歓迎です。
私の鍼灸院に通う方の9割が「患者さん」。
そして、残りの1割が「Aさん」です。
「良くなっても通ってよいですか?」と、申し訳なさそうに質問されるAさんが多いので答えます。症状が消えていくほどに私がそっけない態度になるからでしょうね(笑) 本当はそっけないのではなうホッとしているだけです。
そのような場合も、もちろんお引き受けしますよ!
いらない肩書きが付かないように払うのも、医療の大事な役目ですし、鍼灸はそういうところも得意です。
肩書きの話に戻ってから終わります。
職業を尋ねられた時、最近の私は、
「医療関係の仕事をしています」
または
「自営業です」
と幅のある答え方をしています。そして、相手に興味や関心を探りながら自己開示しています。相手の関心が「鍼灸」か「相手の悩む症状」にフォーカスしている限り、私はいつまでも自分のことが話せないからです(笑)
8年前にこんな記事も書きました。よろしければどうぞ。
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コメント
なるほど。
とてもわかりやすいですね。
私もダンススタジオを経営しているので、
答え方にも気を配ってみようと思います。
>ダニーさん
ダンススタジオの経営ですか!
私の(肩書き)実験がお役に立つなら嬉しい限りです。