■膝の外側の痛み
ある日のこと。
初めての方からのお電話。「膝が痛い」との訴え。男性の方でした。
「病院には行かれましたか?」と尋ねてみると、検査では異常が見つからなかったとのこと。来院して頂いて詳しい話を伺うと、1年前に同じ症状に見舞われ、その時には検査で異常がなかったとのこでした。整体に通い、揉んでもらっていたら治ったそうです。
今回は、3週間前にボーリングをしてから再び1年前と同じところが痛むようになったとのことで、それから約1週間後に整体を1回。
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1年前 右膝の外側に痛みが出現。整形外科の検査で異常なし。整体で揉んでもらって改善。
3週間前 ボーリングの後、1年前と同じ右膝の外側に痛みが出現。
2週間前 整体に一回。
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来院時、右脚を引きずるような歩き方でした。誰が見ても痛そうな歩き方。痛みの部位は、指で指し示せるくらいにハッキリ。位置からして靱帯の損傷も疑う必要がありました。
念のため、膝の外側の靱帯に軽い負荷をかけて痛みが強くなるかチェック。特別な反応がないので、靱帯損傷の可能性がさらに低くなりました。ここまでが施術の前置きになります。
■治療
触診すると、右側の大腿の外側に強いこわばりがあります。カッチカチです。これを緩めたら終わりだろう、と考えました。
膝の外側にあるツボ(痛みのすぐ近く)を使うと、すぐに大腿の外側が緩みました。それでは「歩いてみましょう」と声をかけました。これで終わりになる予定でした。
ところが、ベッドから降りて右脚に体重をかけた瞬間、「痛い」と表情を歪めました。こんなふうに外れることもあります。
■やり直し
患者さんの身体をもう一度よく観察してみると、大腿の裏側の外側に強いこわばりが残っていました。次は正解であることを願いながら、あるツボに一本。
ベッドから降りる時の表情が歪んでいません。無表情のまま脚を確かめています。「どうですか?」と尋ねると「さっきと違います」と明るい表情に。改めて慎重に太ももを調べてみると、内側にも強いこわばりがあったので、そこに直接鍼をして緩めました。すると、「全然痛くありません」。
普通に歩いてお帰りになりました。
■委陽(いよう)
3週間痛み続けていた膝の痛みを一瞬にして激減させたツボは委陽です。私が使った位置は教科書と違うかもしれませんが、膝裏から観て、腓骨頭のすぐ直上で骨のすぐ際に取ります。骨スレスレのところです。
この症例で大事なところは、痛みの部位の近くですが、痛みの部位を狙って鍼をしたわけではありません。また、経絡学的に説明できないわけでもありませんが、強引さが必要です(すべての経絡はつながっているという展開にせざるを得ません)。

■基本の罠
私が使っている鍼法では、痛みの位置に原因があるとは考えません(時に一致する場合もあり)。どこかで動きが制限された結果、そこに負担がかかって痛みとなることがほとんどです。ですから、痛い場所は悪いところではなく、負担を強いられているところです。
負担を強いている位置は、同経にあるとは限りません。というより経絡から目を離さないと力学的な負担を見つけることはできません。人間も物理法則から逃げることはできません。
「同経」と言い方は専門的なので説明します。ツボとツボを線で結んでできた経路のことを経脈と言って、12本の線に分類されてされています(厳密にいうと他にもあります)。同じ線上にあることを指して「同経」と書きました。
私がやったことは経絡を無視しているわけですから、基本から著しく外れています。確かに経絡学の基本からは外れていますが、ある理論に従ってツボを探して使っています。このブログではそれとなく何度も書いてきましたが、動的なバランスを整えるためには、従来の経絡学では無理があると私は考えています。
基本に忠実になればなるほど、いわゆる運動器疾患(関節や筋肉の痛み系)が不得意になっていくという矛盾を鍼灸師は抱えていると思うのです。
■基本の限界
こうした記事には反論がつきものです。特に、教育現場の反応にビクビクしています。
自分自身をフォローしておくと、従来の基本を否定しているのではありません。動的バランス(動きを滑らかにする)という課題に限定して、従来の経絡学は役に立たないと言いたいのです。内科系の症状には、従来の経絡学が基本であると考えています。
勉強熱心な鍼灸師が苦労して、東洋医学をよく知らない鍼灸師が、とあるカタカナ療法を取り入れて順調に成果を出していくという現実。鍼灸師自身が東洋医学を否定するようなことになってはならないと私は思っています。
経絡の利用範囲を、改めて考える時代になっていると思います。
螺旋(らせん)をキーワードにすると、従来の経絡学が運動器疾患に不向きであることが論理的に理解できます。次回はそんな話になると思います。
■セミナー告知
動的バランスを整えるツボの使い方を紹介します。
従来の経絡学との関連もわかるセミナーです。
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