
■鍼はどこにするもの?
私の鍼灸院で鍼を受けた患者さんがよく言われる言葉があります。
「鍼って痛いところにするのだと思っていました。」
決まって私は、
「では、目が疲れている時は、目に刺してもいいですか?」
と意地悪く返すことにしています。あえて意地悪くですね。極端な例でなければ伝えたいことが伝わらないことを知っているからです。腰痛や肩こりであれば、「痛いところに鍼をする」ことで、“ある程度”までは通じてしまいますが、鍼灸のポテンシャルは活かされません。
身体というものは、痛むところに問題があるとは限らないのです。一般的な話としては誰でも理解できると思うのですが、いったん鍼灸の話となると、「痛いところが問題」とされてしまうのです。

鍼灸には「経絡(けいらく)」という言葉があります。鍼灸の基本はこの経絡を調整するところにあります。「人体に巡る気が滞りのないように」という発想が根底にあります。そうした根底にある考え方を忘れてしまっては、鍼灸ではなくなります。少なくとも、鍼灸の歴史を軽んじることになります。
■真面目にやってクレーム
確かに、患者さんが「痛い」と訴えるところに鍼をする、お灸をするというのは、絵柄的にはわかりやすいです。患者さんが指差すところに鍼をすることが、患者さんにニーズに応えているように見えます。
私が鍼灸師1年目の時、務めていた治療院に私の治療についてクレームが入りました。「言ったところに鍼をしてくれない」というものでした。私としては原因にアプローチしているつもりでしたが、患者さんにしてみれば、「訴えた症状を無視している」ことになったのでしょう。
院長からも注意をされました。悔しいので、そうしたクレームが二度とないように工夫を重ねました。そうしているうちに患者さんが増え、鍼灸がメインでなかったその治療院に鍼灸の患者さんが増えすぎてしまいました。余計なことをした私は異動を命じられ、鍼灸の仕事を取り上げられてしまいました。この時のアウェーな環境で鍼灸をした経験が今に生きています。
■患者さんが手術台に乗るのはなぜか
患者さんにしても、こっち側(鍼灸師側)からしても、痛いところに鍼をするのが現場では面倒なことが起こりにくいのです。患者さんは要望どおりにやってもらったと満足し、こっちは言われたところにただ鍼をしておけばよいので簡単です。目のように鍼を刺せない場所の時だけ「目に効くツボですよ」とそれらしいツボに鍼をしておけば、東洋医学な雰囲気になります。
でもですね、医療というものは、そもそも面倒なことに挑んで克服していくものなのです。患者さんが「ここに鍼をしてほしい」と訴えても、遮って本当に必要なところを選ぶ必要があると私は思います。患者さんの言いなりになることは、素人に成り下がることです。
患者さんの悩みを本当に解決しようとするならば、患者さんが真に求めているものを知る必要があります。慰安であれば、患者さんがその場でしてほしいこと(ここに鍼をして)に応えて続けることが優秀であることになります。
でも、ここで行うのは医療です。その場ではなく未来を優先させます。所が変わり極端な例になりますが、お腹は切られたくありませんよね。でも未来のためなら、患者さんは手術台に乗ってお腹を切らせます。その手術が未来のためだと納得しているからです。
大事だと思うのは、患者さんの「指図」と「ニーズ」を区別することです。指図で症状が改善するのであればどんどんやりますが、それで改善することはありません。ニーズをしっかり受け取り、専門家としてできること導き出すのです。
鍼灸は、背景となる理論が知られていないために、どうしても指図されてしまう現状があります。これは鍼灸師にも原因があります。もっと鍼灸師が努力しなければなりません。
■鍼灸の技術的な壁
当院に通う患者さんは、原因(火元)に鍼灸をする意味を理解してくださいます。症状が遠隔のツボで取れる、という経験をして頂くようにしているからです。そうしなければ「だ~か~らぁ、痛いのはココなんですよ~」と言われてしまいます。

鍼灸の真実を伝えるには、遠隔のツボで症状に変化を起こす技術が必要です。鍼灸師にとっても、この技術的な壁を乗り越えられるかで将来が決まってきます。鍼灸だけで食べていける鍼灸師が極めて少ないのが現状。この現状を打破するには、やはり技術が必要だと思います。
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・鍼灸養気院(群馬県伊勢崎市)
・鍼灸ルーム品川カポス(東京都港区)
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コメント
このコラムの所には、何度も何度も読み返してしまいます!!
復習のために読み返し、疑問が湧いては読み返し……。実は先週の土曜日にひょんなことからある場所をぶつけて以来痛い場所が多発してしまい。本来ですといつもお世話になる鍼灸整骨院にすぐに行っているであろうところ、『もう この状態に慣れてしまおう』と開きなおってしまっておりました。でも耐え難く『やはり』と思い、出かけてきました。 その時思いました。『クリ助先生やKAPPO LABOの先生でしたら、こんな時どのような方法をとられるのでしょう』と…。 そして今日もまたこの場所へとんでこさせていただきました。 ありがとうございました。