鍼灸師や柔道整復師の専門誌『温故知新』で連載を始めました。

シリーズのタイトルは「鍼灸師のための経穴デザイン入門」です。今回のテーマは合谷です。合谷と鎖骨の関係について説明しています。
犬や猫には鎖骨がありませんが、ネズミには鎖骨があります。ネズミは人間に近いのです。それだけではありません。犬や猫にはない母指がネズミにはあります。母指がなければ存在できないのが合谷というツボです。つまり、合谷はネズミと人間にとって重要なツボなのです。
その理由は…『温故知新(Vol.2 2014.7.15)』をご覧下さい。
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(レミーのおいしいレストランより)
■完成品のスキマ
今日は、この連載を始めた背景について書きますので、お付き合いください。
私たち鍼灸師が経絡経穴を習うとき、完成品であると教えられます。中国で生まれた経絡経穴学(ツボ理論)は既に完成されていて、それをどう使いこなすかが焦点です。
私も、「鍼灸学は完成されている」と習ってきましたし、そう信じることで鍼灸師としての自分を保ってきました。書籍の通りに結果が出ないのは「自分の腕が未熟だから」と考え、自分の向上心を煽っていました。
確かに、鍼灸学は完成されているのかもしれません。しかしながら、スキマがないわけではありません。デキル鍼灸師は、自分でスキマを埋め合わせています。鍼灸学は完成品と信じる鍼灸師にしてみれば、こうした発言は勉強不足のように感じるでしょう。しっかり勉強すればスキマなどないと。
■学習効率の悪い鍼灸学
私たち鍼灸師は、学校の3年間で現場で役立つスキルを身につけなければなりません。修行のための10年間は用意されていません。3年間で臨床レベルを求められる鍼灸師にとって、古典から学ぶ時間はありません。
古典から鍼灸を学び、患者さんの病態を(机上で)理解できたしても、それを具現化する術が必要です。学術の足並みを短期間でそろえることは難しいことです。
学習効率の悪さを克服できる鍼灸師だけしか成功できないルールが存在しているのです。流派や学派が整理したものを学ぶのが一般的ですが、それでも膨大な量を求められます。鍼灸はそもそもが難しいものです。その分、習得した時のメリットは計り知れません。鍼灸にしかできないことができるようになります。
■学習効率をアップするシンプルな方法
技術指導をする仕事が増えた最近、学習効率のことを考える時間が増えました。臨床経験は、患者さんを診ているだけでは積んでいるとは言えません。数を重ねる度に、経験値がデータベース化されていなければ意味がありません。そうでないと、ただの「慣れ」になってしまいます。

「鍼灸師のための経穴デザイン学」として考え出したのはツボ学習の効率の悪さに対するフラストレーションがあったからです。ここで言うところのツボ学習は、国家試験対策のツボ暗記ではありません。実践レベルの話です。ツボの専門書を買って、その通りに鍼をしても、書いてある通りにならないフラストレーション、鍼灸師なら誰でも少なからずあるでしょう。
経穴デザインのために行ったのは、すべてを白紙に戻してシンプルに考えることでした。経絡経穴学に縛られない脳を作り上げることでした。実践の中から得た情報をノートに記して整理するという単純作業です。疑問に思ったことは、書籍ではなく患者さんの体に問いかけるようにしました。やり始めてみると、難しいことが苦手な私に最適な方法でした。
■心と体の間に「動き」
おそらく、一般的には、難しいことをたくさん勉強して試した結果、最終形にシンプルになるのだと思います。私は逆に歩んでいます。シンプルなことを秩序が崩れないように組み立てて、重層的な手が打てる技術に発展させています。古武術鍼法もそうやって組み立てられています。
経穴デザインは、鍼灸学の基本である経絡経穴学より原始的です。経絡経穴学は基本とされていますが、私に言わせれば応用も応用。難しすぎるのです。ツボというものは、もっとシンプルに考えた方が理解しやすいはずです。
古武術鍼法では、心と体の間に「動き」があると考えています。動きをコントロールすることで、心と体の両方を調整することが可能です。筋肉や骨の上にあるツボは動きに関わりがないはずがありません。まず、ツボ一つ一つが、どのような動きに関与しているのか、そういう視点でツボを見直しています。これが、経穴デザイン学の基本です。
■五十肩の原因をデザインする
昨日の五十肩の症例を紹介します。

腕を横に広げようとすると、水平くらいの位置で腕の側面に痛みが出るという患者さんです。一般的には、ここを通っている経絡はどこかと考えます。発痛部位の筋肉は何であるか、と考える場合もあるでしょう。
しかし、「動き」に注目すると、そうはなりません。
腕を外に広げられないということは、肩甲骨の下角(下の方)を外にスライドできない、という意味でもあります。関節や筋肉が単独で動くとは考えません。必ず、動く際には少なくとも2点が歩調を取り合っています。この機構は動作を暴走させないためにとても重要です。
ちょっと東洋医学らしい言い回しをすれば、陰陽の関係なのです。陰が陰だけで存在せず、陽が陽だけで存在できないように、単独一ヶ所が動くというふうには考えません。
動きを止めている位置を私は「殺動点」、それによって動かない位置を「不動点」と呼んでいます。どこに痛みがある時は、不動点と殺動点を探すことがポイントになります。この時、経絡の走行は完全に無視しています。発痛位置と不動点が完全一致している場合もありますが、このケースのようにズレている場合があります。
この症例では、神堂(しんどう)という肩甲骨の縁ギリギリにあるツボを使った結果、腕の動きが瞬時に改善しました。ただし、五十肩は複雑ですから、この1穴で全ては改善しませんでした。他の殺動点も探す必要があります。骨盤の動きも重要です。
こうした、動きの連なりを連動と呼んでいます。この連動を整えるのが活法(かっぽう)なのです。活法を習得したことで、こうした発想が定着しました。いったん、動きを整える便利さを知ってしまうと、もう元には戻れません。
■活法を学ぶ
活法の注目度は年々高まってきているように思います。学習効率の高い技術です。しかしながら、活法を一から十まで短期間に学べる環境はあまりありません。活法研究会では、鍼灸師が効率よく活法を学ぶためのカリキュラムを用意しています。私のアイデアも入っています。
特別セミナー(上半身編)
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日時:8月3日(日)10:30~17:30
会場:ホテルサーブ会議室(東京都目黒区)
定員:15名(残席4)
詳細:セミナー案内(活法研究会)
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・鍼灸養気院(群馬県伊勢崎市)
・鍼灸ルーム品川カポス(東京都港区)
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