カラダを治す2つの力(維持力と変化力)

技術は「治す」ためにあるのではない

『温故知新』の連載も6回目となりました。今回の記事は、「人体に備わる維持力と変形力」と題して、ツボの働きを2つに分類しながら説明しました。簡単に言えば、人は「同じ状態であること」だけでは生きていけません。「変われること」が必要です。

温故知新Vol.7
(東京にて活法研究会の勉強会 代表の活法理論聴講中)

生きているということは、変わりながら変わらないことであり、変わらないように変わっていくことです。このように見ると、自ずと治療の輪郭が見えてきます。時には維持する力を助け、時には変化する力を助けることです。そのためにどんな手法があるのかを考えるわけです。

私が開業してから5年目の時に「治す」という言葉を捨てました。鍼灸を受けた患者さんが「治りました!」と言っても、私が治したわけではありません。私がしたことは、患者さんが治ろうとしているのを手助けをしたに過ぎません。「補助」以上のことはできないと考えています。これは、整体(碓井流活法)でも同じです。というより順番は逆で、整体(碓井流活法)から学んだことです。

施術を「補助をする」とするならば、「何を補助しているのか」を定義しておくことかがとても重要です。効果が出る出ないの前に、目的が迷子になってしまいますから。

ここで、「維持力」と「変形力」の話に戻ります。わかりやすいのは、圧倒的に変形力の方です。変形の代表は「関節の動き」です。「動かなかった関節が動くようになれば、目で認識することができます。お腹がグーとなり始めたら、耳で認識することができます。

もちろん、「維持力」をサポートすることもとても大切です。維持力が低下すれば、「朝起きたら顏が浮腫んでいた」なんてことになるわけです。朝起きて顏がしゃっきりしているのは維持力のおかげです。この力は当たり前のように存在しているので普段は意識することはありません。

「治せる」のは患者さん自身だけです。施術の名人であろうとゴッドハンドであろうと、この事実は絶対に変わりません。だから、そもそも「治す」必要なんてないのです。できるのは、、患者さんが「治る」ことを補助して、それを見届けることです。

言葉遊びだと言われそうですが、「直す」ことはできます。関節を「真っ直ぐにする」ことはできます。脱臼した関節を入れるというのは「直した」のであって「治した」のではありません。関節をボキボキさせることは「直っている」場合もあるでしょうが、「音が出ているだけ」の場合もあります。

鍼灸の効果を上手に見せるコツ

鍼灸の価値を伝えるには、いろいろな方法があります。どんな方法があってもよいのですが、私が注目しているのが「動き」を見せることです。これは「変形力」の回復を特に強調することでもあります。

肩こりの治療も変形力の低下から起こると考えることができます。首、肩、肩甲骨が凝り固まって動かないのが肩こりです。「ほぐせば動くようになる」と考えることもできますが、「動けばほぐれる」と考えることもできます。私が行っているアプローチは、後者です。

「動き」を邪魔しているのは「コリ」ではありません。確かに、コリをほぐすと体は軽く感じます。だから、コリが動きを邪魔していると感じます。「動き」を邪魔している本当の正体は、「張力のアンバランス」です。張力のバランスが狂うから、それを補正しようとコリが出現しているのです。動きを主として邪魔しているのは「張力のアンバランス」で、副として「コリ」です。

張力は、「引っ張り合う力」です。これは外向きの力です。引き合う相手がいるから外に飛びださないのです。動くというのは、引っ張り合う力関係を一時的に変化させていることです。自由に動けるのは、引っ張り合う力の関係をすばやく変化できるからです。

まったく同じ話を、広島で鍼灸院をしている松川さんが「動きのアライメント」という表現で書いています。私の説明がわかりにくい方は、ぜひご覧になってください。とてもわかりやすいです。

こうした考え方で施術する鍼灸師は、極めて少数派です。松川さんと私は「活法(かっぽう)」という日本の古武術から生まれた整体を学んでいるため、このような発想で治療を行うことが可能です。こうした考え方が優れているわけではありません。所変われば当たり前のことかもしれません。こうした考え方が鍼灸に普及したら、幅の広い対応ができるようになります。松川さんが力を入れているスポーツ分野では、特に期待できます。

経絡から抜け出すと見えてくる世界

こうした取り組み方は、まず「経絡」というルールから抜け出すことから始めなくてはなりません。なぜなら「経絡」は変形力にとっては、あまり重要ではなく、維持力の方に重要だからです。詳しい見解は『温故知新』(プロ向け業界誌)に書きましたので、ぜひご覧ください。

鍼灸師のための経穴デザイン入門(第6回)

今月号(Vol.7)から、福岡で活躍している女性鍼灸師の平沼さんが特集されています。正確に言えば、特集されているのは「よもぎ蒸し」ではありますが、よもぎ蒸しと言えば平沼さんですから。平沼さんは日本でよもぎ蒸しを普及させたよもぎ蒸しの第一人者です。

『温故知新』よもぎ蒸し特集

平沼さんが開発したよもぎ蒸しセットは、全国の治療院やサロンに行き渡り、よもぎ蒸しの世界で平沼さんを知らぬ人はいないでしょう。鍼灸との併用を考えている方には、たいへん参考になる記事になっています。平沼さんとは開業してすぐに出会い、互いに刺激し合ってきました。尊敬する鍼灸師の一人です。

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