■なぜか教える立場に
私が教えることが好きならば鍼灸師にはなっていなかったでしょう。でも、気がつけば教える仕事が副業の域を超えて臨床と並ぶ本業となっています。
今日も、テキスト作りに明け暮れていました。文字通り、朝日が昇って沈むまで作業に没頭していました。追い込まれているので夢中で取り組んでいますが、時々、「私などが教えてもよいのか…」と自問することがあります。
私よりずっと知識があり臨床経験も豊富な専門家はいくらでもいます。そうした方々の前で生意気なことをやっているなぁ、思うことがよくあります。主催するセミナーには、同世代の受講者が多めですが、大先輩も時にはいらっしゃいます。そういう時は余計にプレッシャーを感じています。
講師をすることには慣れて来ましたが、初めての方が多ければ緊張します。「良いところを見せよう」だとか「嫌われないようにしよう」という雑念があるのだと思います。

■失敗から学んできた
とは言っても、そう若くもない歳です。この世界に入って16年。開業してから丸12年が経ちました。それなりに、成功体験と失敗体験のストックがあります。臨床も経営も常に試行錯誤の連続で、いつ何時も「やってみなければわからない」という状況です。
医療者が「失敗」という言葉を口にすると「治療に失敗して患者さんが大変なことになったのではないか」と、違う方向に想像されてしまう恐れがあるので補足しておきます。失敗は医療過誤のことではありません。思い通りの結果が出ず患者さんの期待に応えられなかったり、経営判断を誤って、お金を無駄なことに使ってしまったり…。
今、考えると失敗したから学べたことが多かったです。たまたま大きな失敗をしなかったので、今までやって来られたのだと思います。経営している以上、小さな失敗は避けて通れません。だから、「かすり傷ならOK」をルールとし、重症だけは負わないように気を付けてやってきました。
■経験を価値に変える仕事
私が講師業を本格的に始めたのは、6年前の2009年からです。橋本と共に活法研究会という整体の勉強会を立ち上げたのがきっかけです。鍼灸師オンリーの整体セミナーは、今でも活法研究会だけだと思います。
対象を「鍼灸師限定」にしたのは賭でした。「鍼灸師になぜ整体なのか…?」という問いに真正面から答えることができなければ成立しませんから。これについては私自身が実験台でした。人生の一部を実験装置の載せ、そこから得たものを発信していこうと覚悟を決めたのです。その結果どうなったのか、その一部始終がこのブログに刻まれています。
講師をする上で、経験こそ宝です。受講者の誰一人として、教科書を見ればわかることは望んでいません。教科書には決して書かれることのない現場から生まれたものを求めています。そうした向上心に応えるためには、自分の経験と実績で答えていかなければなりません。
私も、誰かの経験から学びたいと常に思っています。1つの人生で味わえる成功と失敗はそう多くはありません。それを疑似体験できるなら、対価を支払う価値が十分にあります。
「教える」ことは「経験を価値に転換する作業」だと思います。講師として前に立つ時間は、そうした作業がすべて終わった後です。講習の時間は、ちょっぴり緊張しながら、ただ楽しむだけの時間です。
教える立場になって、分かっていないことだらけな自分に気がつきました。もし、教える機会がなかったら、「なんとなく」でごまかし続けてしまうのだろうと思います。最近では、セミナー講師だけでなく社内でも教える機会が増えました。こうなってしまうと私の実力は丸裸です。ごまかしは不可能です。

■教えるチャンネル
今、私は教えるチャンネルをいくつか持っています。最も数が多いのは、先ほど書いた活法研究会です。ここでは、碓井流活法(古武術整体)と古武術鍼法を教えています。今日作っていたのは古武術鍼法のテキストです。
今年から活法塾という学生と卒業後3年以内の新人鍼灸師を対象とした勉強会も用意しました。これだけのために時間を作ることができないので、社内研修とオーバーラップさせながら進めていきます。簡単に言えば、社内研修で行っている部分を外部に向けて行うわけです。品川カポスの院長と手を組んで進めています。
もう一つはダイエット系セミナーです。実は、開業してから地道に取り組んできたのがダイエット指導です。隠れた得意分野です。問診力やコミュニケーション術は、この分野で力をつけてきました。現在は、女性とチームを組んで新しい展開を試みています。ダイエットアドバイザー協会(DAA)では鍼灸師の枠を越え、古武術整体を美容分野に活用しています。成果が続々と出ています。
どれも、私一人ではできません。チームがあるからできることです。私の仕事はチームに支えられています。そして、時に私の仕事がチームを支えることになっています。朝から晩まで臨床漬けですから、チーム作りは夜に行っています。当分はプレーヤーとしての自分も磨き続けたいので、臨床から手を引くことはありません。まだまだやりたいことが山ほどあります。
臨床とチーム作りの両立は私の課題です。難しいと感じる時もありますが、自分にしかできない仕事があると信じているので挑戦を続けられます。私の長所も短所も臨床家であることです。常に実践する立場にないと気が済まないので経営者には向いていません。視野が狭くなりがちですが、性分なので仕方ないと割り切っています。
その代わり、私にしかできない経営があるはず。


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