■計画的な独立開業
「どんな鍼灸師になりたいのか…。」の続きです。
独立開業は効率の悪いものです。金銭的にも、体力的にも、精神的にも負担が大きく、しかもその先に確かなことは何もありません。にも関わらず、多くの人が独立開業をします。「独立開業をしてナンボ」という慣習があります。
こうした背景には、独立を目指している人が鍼灸師(免許)を取得するという傾向があります。「独立するために鍼灸師を取る」のですから、鍼灸師は糧でしかありません。どこかに就職しても、その機会を常に伺っているわけです。
こうしたパターンでは、養成学校(専門学校や大学)に入る前から、資金に余裕がある人が多いです。「学費が貯まったから…」というだけでは、卒業時に起業する金銭的体力がありませんから。

働き出してから独立の資金を貯める、と計画している人もいますが、お金とスキルを同時に身につけられる職場に巡り会える人は少ないです。「勉強させてあげるのだから薄給が当たり前」と考えている経営者、「給料もらっているのだから、指示されたことを黙ってしなさい」と考えている経営者、どちらも珍しくありません。私も経営者の端くれ、両方の言い分はわかります。
■仕方なく独立開業
就職先を探す場合には、資金づくりとスキルアップのどちらを優先するか、考える人は少なくないと思います。私にも考えて答えが見つからず悩んだ時期がありました。学費すら払うのが厳しい状況でしたから、卒業後はすぐに(できるだけ多く)稼がなければなりませんでした。しかし、折り合いが付く就職先に出会うことはありませんでした。
仕方なく、家(当時は東京在住)から徒歩で通える整形外科にパートタイムで務めることになったのです。週半分をそこで過ごすことになりました。給料は悪くなかったのですが、仕事内容はやりたいこととはほど遠いものでした。鍼灸もできず、鍼灸師になった意味は何なんだろう…毎日考えながら憂鬱な日々を過ごしていました。朝起きると体が重く、そのままの体で通勤していました。
ダメになりかけていた私を救ってくれたのが、同級生からの話でした。週1回だけの勤務でしたが鍼灸ができるという職場を紹介してくれたのです。週1回だけではありましたが、鍼灸ができる環境を手に入れた私は望みをつなぐことができたのです。基本の仕事はマッサージでしたが、鍼灸の患者さんが日に日に増え、ほぼ1日を鍼灸施術で過ごすようになってきた頃、異動を命じられて、鍼灸ができなくなってしまったのです。

私が選んだのは、貧乏生活。「細々でもいいから、本当にやりたいことをしよう」という覚悟を決めたのです。やりたいことをやって通用しなければそれが実力、そう割り切ったのです。それからの話を詳しく書き出すと長くなるので、結論だけ言うと本当の貧乏を味わいました。電気も水道も止められるほどに。吉野屋の前を通るたびに、中の人を羨ましいと思いながら見ていました。
幸いなことに、究極の貧乏生活は半年くらいで抜け出すことができました。ウェブサイトから依頼が入るようになってきたのです。自分の話が長くなりましたので、これくらいにしておきます。
結局、私の事情としては、独立開業を目指していたわけではなく、鍼灸ができる職場に巡り会うことができなかったので、独立開業するしかなかっただけなのです。やむを得ずに独立開業している人は少なくないはずです。
■マクドナルドではフランス料理の修業はできない
本格フランス料理を目指す若者がマクドナルドに就職したら、誰もが「違うよね」と思うでしょう。「同じ飲食業だよね」と片付けられる人はまずいないと思います。鍼灸も同じで、本格フランスとファストフードまで幅があります。

接骨院で受ける鍼灸と、鍼灸専門の鍼灸では印象が違うでしょうし、保険を使った鍼灸と自由診療の鍼灸でも違います。自由診療では患者さんが全額負担です。それでもかまわないという患者さんのみが対象です。保険診療にはない緊張感があります。
※群馬の養気院でも品川のカポスでも保険は扱っておりません。
緊張感が好きで自由診療を選択する人はいないでしょう。鍼灸の本当の価値を求めると、自由診療に向かってしまうのです。では、自由診療の価値って何なんでしょう???
続きます。≫鍼灸にはマイノリティであるが故の価値がある
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