手技療法はどうやって選んでいるのか

■美味いランチの話

5月から群馬の養気院には、新入鍼灸師の坂口が研修のために来ています。昨今の鍼灸師は情報発信がとても大事です。誰でも、気軽に低コストもしくは無料で情報発信できる時代だから、黙っていると埋もれてしまいます。

群馬研修にはいくつものテーマを用意していて、情報発信のイロハも重要なテーマです。情報発信の定番と言えばランチ紹介。

近所に大好きな喫茶店「caffe ROSSY」があります。

この季節に絶品なのが冷やしナポリタン。気温が上がってくると、周辺の住民は「冷やしナポリタン始めました」のフレーズが出るのを、今か今かと待っているのです。

カフェロッシーの「冷やしナポリタン」

上司に逆らえない坂口は、その冷やしナポリタンを注文。そして、私はハンバーグのランチプレート。ここで坂口に指導したのは、「写真は使えるか使えないか考えずに、とりあえず撮っておくべし」というものでした。

ブログを書いていると「写真がない!」とか「こんな写真があったらいいのに!」と思うことがよくあります。そこから動き出したのでは遅いのです。必要な時、必要な写真がポンと出てくるのが理想です。どのタイミングでランチネタを振られても大丈夫です。

店主は理想のランチを求めて、コストという制約の中でベストを尽くしています。でも、評価はバラバラです。みんなで一番を決めようと思っても結論は出ません。それぞれ、評価するポイントが違うからです。

手技療法や鍼灸も同じです。

患者さんが評価するポイントが違います。だから、私は自分なりの「上手さの基準」を設けています。評価されたいポイントを絞り、その部分で高く評価して頂けるように努めています。

まず、鍼灸を取り巻く環境を見てみることにします。

■日本にはどれくらいの手技療法があるのか

鍼灸の中にもいろいろありますが、少し広げてみると、鍼灸を取り巻くように様々な療術が存在しています。私が携わっている活法もその一つです。活法にいろいろであるように、それぞれの療術もいろいろです。細かく分けるときりがありません。

どれだけ細かいのか、覗いてみたい方は「肩こり整体院」のブログをご覧ください。こんなにあるのかとビックリしました。全てがリスト化されているわけではありませんが、よく調べたものだと感心しています。

鍼灸や療術に関わる専門家が把握できていないのですから、一般の方は大きなクエスチョンです。まず、この辺りを一緒に考えながら、最終的に「上手さの基準」に結論を出そうと思います。

患者さんが「どれが一番効くのだろうか…」と関心があるように、私たち専門家も関心があります。せっかく時間とお金をかけて習得するなら一番よいものを選びたいと思っています。

鍼灸家や手技療法家がどのような基準で自分が使う療術(学派・流派・テクニック)を選んでいるかを考えると、いろいろな発見があります。今回はその発見について言及してみたいと思います。それから、私なりの「上手さの基準」に触れていきます。

整体師のイメージ

■わざわざ2番を選ぶ人はいない

おのおのが、良いものを求めて現在の手技療法にたどり着いています。自分の知り得るものの中から1番を選んでいます。誰もわざわざ2番を選びません。それぞれの基準にそって「良いもの」を選んでいます。

良いものであるかどうかは、2つの方向から考える必要があります。なぜなら、手技療法は患者さんのために使うものであると同時に、それを用いる施術者のものだからです。

最初は道具のようだった技は、熟練して染みついてくれば術者の一部となっていきます。つまり、手技というものは最終的には施術者自身と一体化します。

ですから、専門家が手技療法を選ぶ際には、「どれなら同化できるのか」「どれと同化したいのか」と、そういう視点が入り込むのです。「患者さんのために使う」という目的は変わらないのですが、使う側の事情や都合、そして趣向が関係しています。ですから「最高の手技療法は何か」という問いに一つの答えは出ません。

事情は武術と似ていると思います。「○流が一番強いのだろうか?」という問いに答えは出せませんが、それと同じです。一番を決めるって簡単なようでとても難しいのです。決めようと思えば、少なくとも条件を揃えなければなりませんが、限られた条件で決めることに何の意味もありません。

と色々言ったところで、どうにか決めなければなりません。では、どうやって決めているのでしょうか。

■基準1 習得のしやすさ

そもそも習得できなければ始まりません。ですから、習得のしやすさは大事です。どういうものが習得しやすいのか、思いつく限り挙げてみます。

・手順がシンプルであること
・適正な力加減に幅がある(微妙すぎない)
・カンタンに覚えやすい(理論がシンプル)
・教える人がうまい(講師や先輩)
・練習する環境がある(場所・仲間)

■基準2 リスクがないもの

効果があると言っても、危険が伴うものは習得しようとは思いません。習い立ての下手な時でもリスクがない(極めて少ない)ものの方が安心して習得できます。ですから、「下手なら効果がなくてもいい」と考えるのは妥当です。

■基準3 受ける側が気持ち良いもの

どうせ受けるなら「気持ち良くて治る」ものが良いのです。同じ効果であるならば、私も気持ち良いものを選びます。わざわざ痛いものを選ぶことはありません。でも、これで話はすみません。なぜなら、気持ち良くないもの、ちょっと痛いもの、すごく痛いものでも、効果が高いと言われているものがあるからです。「少しくらい痛くても、一番効果のあることをしてほしい。」という人はたくさんいます。特に、切羽詰まっている人は、施術時の気持ち良さにこだわらなくなってきます。

■基準4 術者が疲れないもの

勝手なようですが、これも見逃せないポイントです。疲れるものであれば、疲れるほど質が下がってしまいます。夕方には疲れ果てているでは、夕方の患者さんが可哀想です。常に同じ質の施術を提供するには、あまり疲れないものの方がよいのです。

違った視点からも疲れない方がよいのです。体力のある若い時期しか使えないテクニックなら、どこかで諦めなければなりません。長い年月をかけて成熟させていく、ということもできません。難しく考えなくても、疲れすぎては仕事が嫌になってしまいます。

■基準5 考える必要がないもの

「こういう場合にはこうすればよい」と決まっていたり、どんな症状でもこうしておけば良いと決まったやり方があると楽ができます。臨床の場で悩む必要がないことは施術する側にとって安心できます。ですが、そこには限界があります。考えることをやめた瞬間にできる範囲が決まってしまいます。避けたいのは、考えても答えが出ないものや、考えるほど悪い方向に転がってしまうものです。

■基準6 奥深いもの

考える必要がないと逆になりますが、使い込んだり考えていると深みが見えてくるものです。別の言い方をすれば、習熟すると効果がアップしたり、応用範囲が広がることです。考えれば考えるほど本質に近づけると思えば、知的好奇心は黙っていません。

■基準7 背景が好きなもの

療術が生まれたきっかけや歴史が好きになる場合あります。創始者が療法を生み出すまでのストーリーが好きという場合もあります。理屈ではなく嗜好の問題です。療術はアートだと考える人もいます。私もその一人です。「美しさ」を感じられるものを選びたくなります。

話が長くなりすぎて、本題である私の「上手い鍼灸師の基準」までたどり着けませんでした。次回に続きます。

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