
■正解のない問題
私が初めて採用試験をした時に、こんな課題を出そうとしましたが、あまりにも難しいのでやめました。ちなみにこんな問題です。
「あなたは優秀な外科医です。今あなたの目の前で、何十人も殺めてきた殺人鬼が怪我をして死にそうです。治ったらさらに大勢の人を殺しそうな雰囲気です。あなたを殺すかも知れません。周りには誰もいません。あなた一人です。この殺人鬼を助けますか?」
この質問に正解はありません。答えのない問題、あるいは答えがいくつもある問題に、逃げずに答えを出そうと取り組めるかを問う問題です。医療には答えはありません。いろいろな価値観が渦めく中で、正しさを探し続ける職業だと思っています。技術は「力」になっても、「正しさ」を教えてはくれません。
「大いなる力は大いなる責任を伴う」
これは、映画スパイダーマンの中でベンおじさんが、主人公のピーターに言った言葉です。医療スキルというものは、困っている患者さんの前では大いなる力です。技術力が上がれば上がるほど責任も大きくなります。
正解を導けないことは仕方ないとしても、誠意を失ったら終わりです。
■マナーの悪い患者さんに困った時は
来院される患者さんはよい人ばかりです。おかげさまで気持ちよく仕事をしています。良いご縁をたくさん頂いています。でも、年に1~2人くらいの割合で、「え?」と思う場面に遭遇します。
私たちは普通の人間ですから、態度が上から過ぎたり、言葉が乱暴だったりした時は、感情が揺れますが、できる限り感情を抑えて平静を保つようにします。
ただ、そういう我慢をスタッフに強いられません。スタッフを守ることも私の仕事です。理想の実現のために、スタッフの気持ちを犠牲にはできません。私が我慢できないことはスタッフにも我慢させるわけにはいきません。
「どうしても…」と感じた場合に限り、お断りしてもよいと言っています。
一歩外に出れば逆の立場です。断られないように気を付けています。どこかで飲食するとき、どこかで買い物をする時、どこかでサービスを受ける時、提供する側の気持ちを考えるようにしています。
お金を支払っているのだから、何を言っても許される、何をしても許される、と考えたら最高のサービスは絶対に受けられません。その前に、そういう態度はとてもかっこ悪く思います。
どんなにお金を持っていても、相手に提供を拒否されたら、そのお金の意味がありません。お金は、提供してくれる相手がなければ何の役にも立ちません。相手あってこその価値ですよね。だから、相手を粗末に扱えば、自分のお金の価値を下げてしまいます。
「お店の店員の前だけ横柄になる男性は女性に嫌われる」と、どこかの本に書いてありました。私も妻に嫌われたくないので、できるだけ店員さんとは仲良くするようにしています。
■自由診療で一番大切なもの
私たちの鍼灸院は自由診療です。日本では、基本的に鍼灸に保険は適用されません。自由診療である鍼灸を、あえて選ぶ患者さんを私たちは診ているわけです。
患者さんに選ばれる立場です。ただ、逆から見れば、患者さんを選んでいるとも言えます。
私たちが発する情報次第で、来院する患者さんのタイプ(症状)が変わります。情報発信を工夫し、できるだけ得意な症状、つまり役立てる可能性が高い症状を診るようにしています。
これが、「患者さんを選んでいる」という意味です。
来院した患者さんを拒むことはしたくありません。だから、来院前にお断りする場合があります。その時に注意しているのは、患者さんの可能性を(診てもいない立場で)奪わないことです。
自分の経験で難しいと思っても、他ではわかりません。だから、「治る見込みがありません」と断言はしません。「うちの経験の中では改善例がありませんので、うちでは見込みが立てられません」と言うようにしています。
治るか治らないか、本当のところは誰にもわかりません。
自由診療というのは、自由な関係です。
自由であるからこそ、そこには人間関係が必要です。
私が考える自由診療は、適切な人間関係の上に成り立ちます。互いに大事に思える関係が必要です。私たちも患者さんから大事にされたいと思っています。たとえば、無断でキャンセルされたら気分は落ち込みます。大事にされていないと思うからです。もちろん、私たちの方から患者さんのことを大事に思っていることを示さなければなりません。
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