■上腕二頭筋の痛みには魚際
上腕二頭筋の痛みに対する処方穴です。上腕二頭筋とは、いわゆる「チカラこぶ」です。この部分を重い物を持ったり、トレーニングで傷めてしまった時に便利なツボがあります。

魚際(ぎょさい)です。
母指の中手骨の近くにあるツボです。手の平と甲の境目くらいにあります。このツボは、経絡(けいらく)で言うと手の太陰肺経に所属し、上腕二頭筋も同じ経絡に所属しています。
同じ経絡に存在するツボはいろいろあっても、上腕二頭筋に効くのは、(私の経験によると)魚際のみです。
同じ経絡上でも、効果が出るツボと出ないツボがあることは、とても大事なことです。実際に同じ現象が起こるかどうかは試して頂くことにして、話を進めます。
「上腕二頭筋に魚際が効く」という現象は経絡では十分な説明ができませんから、別の観点から関係を調べる必要があります。
母指球にある筋肉は、母指内転筋、短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋と言って、これららは母指球筋群と言われています。しかし、これらは上腕二頭筋とつながっているわけではありません。
筋肉の構造で考えて答えを出すのも難しそうです。
■チカラこぶをつくる動き
こういう時は、もっと簡単に考える方がわかります。上腕二頭筋がつくるチカラこぶは、どうすれば大きくなるのでしょうか。鉄棒を逆手に握って懸垂をする時に盛り上がります。前腕(肘から手)を外旋(外ひねり)して、グーで握っている状態です。
肘を90度に曲げて、肘から先を外に捻るだけでチカラこぶは盛り上がります。またグーを強く握りしめるだけでも、チカラこぶは盛り上がります。
グーをして外に外捻りした前腕を引きつける動きが上腕二頭筋のチカラを引き出すのです。もし、グーがつくれず前腕を外に捻れなければ、上腕二頭筋が上手に使えません。

さて、ここで魚際というツボの位置。
魚際は母指球にあります。母指球筋群はグーを作るために必要な筋肉です。また、前腕を外旋させる時にも、動きの起点としてとても大事です。
外旋する時には、母指球を外に持って行くように意識すると、スッと動いて余計な力が入りません。指先を意識すると、指だけが回ろうとしてしますし、手首を意識すると動きがぎこちなくなります。
魚際のある母指球は、前腕を外旋させる時に重要な位置です。
■筋肉と脳
この例のように、意識の在りかが変わると動きも変わります。体の思った通りに動く時は、もっとも効率のよいポイントを無意識レベルで操っているわけです。
異常感(痛みや重さなど)がある時は、動きの効率が損なわれ、筋肉や関節に余計な負荷がかかっている時です。これが、筋肉を痛めてしまう原因であり、怪我したところがなかなか治らない原因になります。こうした筋肉の働きは脳がコントロールしています。

この魚際と上腕二頭筋の例で面白いのは、反対も成立することです。母指球に痛みがある時は、上腕二頭筋が過緊張しています。上腕二頭筋にある侠白というツボに鍼をして緊張を緩めると、すぐに母指球が柔らかくなります。
双方向から連動しているので、私はこれを双連動と呼んでいます。ちなみに、この時に使う侠白は、上腕二頭筋の2つの筋繊維(橈側と尺則)の間の溝に取ります。押すと痛いところです。
この例のように動きの連動を利用するのが整動鍼というものです。人体には無数の連動が存在しています。分かっているいるものだけで数百はあります。指一本一本、そして脊椎一つ一つが各部と連動しています。経絡では解き明かせない法則が人体には眠っているのです。
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