(5)のつづき
脳は自分の体を正確に認識できない
開業から5年の歳月が流れた頃、活法(かっぽう)と出会っています。活法とは、戦国時代に生まれた蘇生術。そこから整体術へと発展してきたものです。
この活法は脳科学そのものでした。
体を操っているように見えて、脳へのアプローチに秘密がありました。脳は自分の体を正確に認識しているようでいて、そうでもないのです。このズレが大きいほど、体に不調や症状が表れます。
ズレをイメージするには、普段と違う靴を履いたときのことを思い浮かべてください。歩いている感覚が変わりますよね。この感覚の違和感がズレです。普段履いている靴は、脳の調整が済んでいるので違和感がありません。
脳の認識と実際にズレが生じると違和感や不快感となり、それが大きくなると痛みや病気となる、と考えます。そのズレを取るのが活法は得意です。
簡単に言ってしまえば、脳の勘違いを解く方法です。
こうした活法の理論は、私の鍼治療に多大な影響を与えました。それまで経絡(けいらく)に基づくツボ選びをしていたのですが、「脳がどうやって肉体の動きを認識しているのだろう…」という疑問をもちつつ鍼治療をすることになっていきました。
そうして出来上がったのが整動鍼®です。
その薬を飲めるのはナゼ?
ただ、こうした理論は仮説の段階です。部分的には科学で説明できる現象でも活法そのものを説明することはできません。「効果は確かにある!」と実感できることでも、科学の言葉で言えないことは無数にあります。
それでも、信頼関係を前提に前に進まなければならないのが医療です。
ドクターからもらったその薬、どこまで症状に対する治効機序を説明できるのでしょうか。薬が体内でどのように作用するのか、メカニズムがわかっていないものばかりです。
試験管の中やマウスで観察した現象が、複雑な人体でも同じように起こるとは誰もわかりません。だから、人間で試す臨床試験が必要なのです。やってみなければわからないから、臨床試験があるわけです。
臨床試験は安全を約束する話であって、科学的な話ではありません。
手に取った錠剤が体内でどう働くのか分からないのに、その薬を飲めるのはドクターが処方しているからです。薬剤師が出してくれるからです。科学ではなく信頼関係で成り立っています。
科学的と人間的、どっちが重要
恐れずに言ってしまえば、信頼関係を築いてしまえば科学的根拠はどうでもよいのです。患者さんは、苦しい時ほど冷静な判断ができません。普段なら理解できることが理解できなくなり、普段なら信じないことも信じてしまいます。
「何でもいいから助けて欲しい」
と患者さんが考え始めたら、科学的な根拠より、温かい言葉の方を求めるようなります。人間性の方が重みを増していきます。もしかしたら、科学的であることよりも人間的ある方が医療者として成功するのかもしれません。
でも、人間性ばかり追究していたら医学はストップしてしまいます。体の仕組みや治効のメカニズムを調べる人が必要です。
鍼灸にはそういう人材がとても少なかったのが問題でした。実際、人間的な温かさを追求する方が経済的な成功をおさめやすいのかもしれません。だから「開業して成功したい」という方は、ホスピタリティの追究に傾くのかもしれません。
しかし、何度も言っているように、できるだけ科学の言葉で説明し対応すべきです。それが医療に携わる者の誠意だと思います。
だから、そのための努力はべきですし、チャンスは活かすべきです。
「鍼灸は科学では説明できない世界だ」と言っていたら未来はありません。
つづく…占い師と鍼灸師
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