15年前は当たり前ではなかった美容鍼
最近は、美容鍼をやるために鍼灸学校に入学するという人が多いと聞きます。
美容鍼を始める鍼灸師がこの10年で激増しました。鍼灸を勉強する中で美容鍼に興味を持つ学生が増えているのかと想像していたら完全に勘違いでした。鍼灸学校の教員や学生から話を聞くと、最近は美容鍼をやるために鍼灸学校に入学する学生が多いとのこと。
Googleトレンドで「美容鍼」を調べてみると、キーワードが統計に乗り始めたは2007年で今から15年前です。このデータはメジャーな言葉にならないと統計に乗ってこないので、2007年前から「美容鍼」という言葉はそれなりに検索されていたはずです。
Googleトレンドのグラフが表示されるのはメジャーになってからです。一応「整動鍼」を調べるとご覧の通り。そう、これが現実です(悲)
少し脱線しますが、コロナ禍に入ってから急激に検索数が減っています。「鍼灸」でも調べてみると、一時的に下がってすぐに戻っています。ちなみに、2008年のリーマン・ショックでも鍼灸の検索数に大きな変動はありません。トレンドに関係ないのが鍼灸の強みです。
せっかくなので、コロナ禍で急上昇したものはないかと探したら「脱毛」がありました。興味深いのは今は激減したことです。
もう一つ興味深い傾向を見つけました。「アロマ」です。5年ほど前にピークに減少傾向にあります。理由はわかりません。
美容鍼とエステ業界
私見ですが、美容鍼は鍼灸師の中から生まれたトレンドではありません。エステ系の美容業界が鍼灸に入り込んで生まれたと見ています。現在は、鍼灸学校が美容鍼を教える時代ですから、この話にピンとくる人は少ないかもしれません。
「サロン」という言葉も美容業界から流れ込んできたと思います。「鍼灸院」を「鍼灸サロン」と言い換えることで新鮮さが生まれました。これも、今となっては普通なのでピンと来ませんよね。
鍼灸の常識は10年経てば変わります。今の当たり前に縛られていることが一番のリスクです。年齢を重ねるごとに世の中の変化に疎くなるので、気をつけなければいけないなぁと思っています。
お客様と患者さん
私は、来院される方のことを「患者さん」と呼んでいます。呼び名で関係は変わってきます。たとえば、日本語には「あなた」を指す言葉がたくさんあります。「お前さん」と聞けば、妻が夫に使っていることがわかりますし、「てめぇ」と言えば、男性が男性に喧嘩をふっかけていることがわかります。
つまり、相手の呼び方が相手との関係を表します。来院された方を「患者さん」と呼んでいる場合と、「お客様」と呼んでいる場合では関係が違います。これを踏まえて、先ほど取り上げたエステと鍼灸院を比較してみます。
たとえば、エステの来店者を「患者さん」と呼んだら、誰でもおかしいとわかります。鍼灸院ではどうでしょうか。「お客様」でも「患者さん」でも、成り立ちそうではないですか。
ということは、鍼灸院では来院者との関係のパターンが多そうです。痛みを取りに来る人、疲れを取りに来る人、健康維持のために来る人、美容のために来る人、話に来る人などなど。鍼灸院の色によって来院者の色も違います。これがいわゆる「相性が大事」の正体です。
このように考えれば、「相性」という偶発性に揺すられることなく「関係づくり」を意図的に行うことができます。
関係が決まると、相手が望んでいることもわかります。だから、私は関係づくりを重視しています。この視点を無視して集客すると、売上が増えても違和感が募っていきます。
ご褒美としての
うちの若いスタッフが「美容鍼は、美容院で髪の毛を整えるのと同じ感覚なんですよー」と教えてくれました。続けて「自分へのご褒美なんです」と。なるほど、たしかにその視点は大事ですね。治療を目的に鍼灸を受けるときに「ご褒美」という感覚はありません。
この違いを理解しておくことはとても大切です。ご褒美を提供する場合には、それなりの言動や態度が必要です。
たとえばの話ですが、私が「たまには…」と思って、ちょっと高級なパン屋さんに買いに行ったときことです。美味しそうなパンが陳列されていたので、トングでトレーに乗せようとしたら、「それは売り物じゃないんです!」と怒られていまいました。こちららしてみれば、売り物と区別できないところにあるから間違えたのですが、お店としては売り物とは別にならべておいたのです。
ご褒美として高級なパンを買いに行ったつもりが、違う感じになってしまったので、テレビにも紹介されるほど美味しいパン屋さんですが、私はそれ以来足を運んでいません。私にとっては、パンが美味しいかどうかなんて関係ないのです。よい気分になれるかどうかが重要なのです。
美容鍼をする人は、この「ご褒美」という感覚を大切にしてほしいと思います。
ゴール設定の違い
患者さんは、症状がゼロになったら通院をやめます。苦痛から開放されるのが目的ですから通う必要がありません。美容の場合はどうでしょうか。キレイになったら通院をやめるのでしょうか。お気づきかと思いますが、美容にゴールはありません。あるとしても、人それぞれすぎます。人によっては有り金を使い果たすまでという方もいるでしょう。
治療と美容ではゴールが違います。この違いをうやむやにしておくと、私たち鍼灸師は鍼を受ける方をどこに誘導してよいのか決まりません。患者さん一人ひとりに合わせていけばいいという声も聞こえてきますが、最初に設定しておく方が断然よいです。なぜなら「こんなはずじゃなかかった」という気持ちから生じるトラブルを防げるからです。
鍼灸業界にもサブスクリプションの波がやってきました。月額や年額を払って、その間に何度でも通ってもよいというサービスです。つまり、ネットフリックスなどの映像配信サービスに代表されるような支払いパターンです。こうしたサービスにはゴールがありません。むしろ、ゴールを取っ払うことが目的です。いつでも、どこでも、好きなだけ映像が観られるという状況を購入するわけです。
私も、サブスクリプションタイプのサービスを購入しているので、サブスクリプションには前向きです。ただ、これを自分の鍼灸でやろうとは思いません。前述した通り「ゴールをなくす」という設定になるからです。2つの鍼灸院を経営していますが、どちらもゴール設定を明確にしています。終わりを設定することで、安心して通院できるようにしています。
後編につづく…
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