鍼灸師の「北斗神拳」考(4)

(3)のつづき

4569792146 アミバ天才手帳2011 ん!?スケジュールをまちがったかな…
株式会社レッカ社
PHP研究所 2010-10-28

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■北斗神拳が本当に存在するなら

存在するはずがないので、この仮定には意味がありません。意味がなくても想像は楽しいので、勝手に妄想をします。

北斗神拳は最強の拳法ということですが、私が興味あるのは「殺」の方ではなく「活」の方です。ケンシロウやトキが時々みせる、あの治療術です。軽く触れるだけで、病気や怪我がよくなってしまいます。その場でよくならない場合でも、彼らは効果を確信しています。ケンシロウが失声症のリンに秘孔を突いた時がそうです。トキは脚を患っている老人に施術した際、「時間がかかる」と言っています。それ以外は、だいたい即効だったように思います。

殺法の時は、指がズボっと第一関節まで埋もれていますが、治療術(活)の時はそうでもありません。指を軽く一瞬触れる程度です(トキの偽物アミバは治療術は常にズボッ!)。作家は、治療シーンを意図的にソフトに描いています。あんなに軽く一瞬触れただけで効かせる、この技術は鍼灸師の目からみて名人です。

軽く一瞬。しかも、少ない秘孔(ツボ)。
これで「効いている」と確信できるのですからスゴイわけです。

殺側の話の中で、「秘孔を正確に突く」という表現があります。これは秘孔の位置は正確でなければならないという意味です。確実に効くポイントがあるという意味です。その位置にどれくらいの個人差があるのか、マンガからはわかりません。ちなみに、ケンシロウはどんなに体格差があっても秘孔を外すことはありません。

ツボには個人差があります。実は、ツボのとらえかたも鍼灸師によって違います。鍼灸師の間では常識ですが、一般の人には驚かれることかもしれません。ツボは、大きなゾーンで捉える人もいればミリ単位で捉える人もいます。鍼灸師には「鍼をしたところがツボになる」という人もいます。

■秘孔の左右と表裏

一口にツボといっても、流派や個人によって意味合いが違います。たとえば鍼。浅いところを狙うことが多い鍼灸師もいれば、深めばかりの方もいます。どちらがよいとは言えません。どちらにも利点があるからです。ですから、浅い方がよく効く、深い方がよく効くという議論は不毛です。浅いメリット、深いメリットを考えながら行うことに意味があります。

また、ここで空想の世界に戻ります。北斗神拳の世界に。北斗神拳では、殺の場合は深め、活の場合は浅めが法則のようです。他の特徴しては、秘孔が左右対象でないことです。心臓が右ある敵(サウザー)は秘孔も左右が逆転しているようです。

ケンシロウはサウザーの体についてこう述べています。

「心臓の位置も逆!そして秘孔の位置も表裏逆!それがおまえの謎だ!!」

心臓の位置が逆だから秘孔が左右逆、というのはわかりやすい話です。問題は表裏逆という表現です。3つの解釈が可能です。一般的であろう解釈は、表はお腹、裏が背中という意味だと思います。格闘技で対峙する際は向かい合っているので、見えているお腹が表となります。

■もう一つの表裏

鍼灸師としては、別の解釈が可能です。表が背中、裏がお腹という解釈です。四足歩行をする動物を頭に浮かべてください。日光が当たるのは背中。お腹は影になります。気の流れる通路である経絡には大きく分けて2種類あります。陽経と陰経です。陽経は日の当たるところにあり、陰経は影になるところにあります。二足歩行のヒトでは、四つんばいになって考えます。

どちらの解釈をしても表裏が逆になるわけですから、結局は一緒(笑)
考える意味がなかったです。

鍼灸師的にもう一つの解釈があります。表は浅い、裏は深い、という意味です。病が「裏(り)に入った」という表現は、病が進行した状態を言います。わかりやすいのは風邪です。東洋医学では、風邪(カゼ)は表から裏という順番で進行していくと説いています。

寒気(さむけ)がして、鼻水とくしゃみが出始める時期は「風の邪」が表にいます。そこで食い止められないと裏に入ります。簡単にいえば、肺炎になったり、こじらせて寝込んでいる状態は「風の邪」が裏に入ってしまった状態です。

話を戻すと、サウザーの表裏逆は浅い深いのことではないと思います。

■風邪を引くのは誰だ?(ついでに)

蛇足ですが、「カゼをひいた」と無意識に言っていると思いますが、これは東洋医学の表現です。西洋医学的には「かぜ症候群」と言われます。原因であるウイルスをやっつけるのは免疫です。薬じゃありません。「かぜ症候群」を治したいなら、本来は論理的に免疫をアップさせる方法論を誰かが説かなければならないのです。心配いりません。既に東洋医学が説いています(みんなが知らないだけ)。

「風邪を引く」には意味があります。なぜ、「風邪を引く」というのか考えたことありますか?「風邪になった。」とか「風邪にかかった」と言ってもよいと思いませんか?「引く」の意味を考えればわかります。「引く」には、「まねく」という意味もあります。つまり、風邪は招くものなのです。

ということは自分に原因があるということでもあります。風邪を引く人、引かない人の差はウイルスとの接触数だけで決まらないということです。みんながそれに気がついているから、「引く」という言葉が今でも残っているのではないでしょうか。

「引いて」しまう原因を簡単に言えば、冷えです。特にうなじを冷やすといけません。マフラーはうなじを衛(まも)って風邪の侵入を防ぐ意味があります。自分ではどうしようもない強いウイルス(接触した人にほとんどが感染してしまうもの)は、「被る」という意味をこめて「かかる」が妥当だと思います。

(つづく…最終回

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