マーケティング論_02「囲い込むのは誰のため?」

マーケティング論_01「タブーへの挑戦」

私がこの記事を書こうと思ったのは、鍼灸院などの治療院に経営指南するコンサルタントがあまりにも技術を軽視する発言をしていることが目立つからです。

業者が違っても、口をそろえるようにして言っています。

 技術を追究する鍼灸師は低収入 
 マーケティングを重視する鍼灸師は高収入

私はコンサルティングにお世話になっていませんが、DM、ウェブサイト、メルマガ、などなどでこういった言葉を目にする機会がかなり増えました。表現はやんわりしていても、技術追究型の鍼灸師を否定する立場です。

ちょっと待った!!

と何度思ったことでしょう。

患者さんの立場で考えれば、技術の高い鍼灸師に施術を依頼したいはずです。自分の症状が1日でも早く治るようにと。患者さんが求めているものは確かな技術を持つ鍼灸師であるはずです。患者さんの悩みが深刻であればあるほど、患者さんが注目するのは技術です。

コンサルタントが患者さんの立場でコンサルするなら、技術を活かすためのコンサルをするはずです。ところが、技術は置き去りにされることが多いと思います。そもそも、技術に関してコンサルタント自身が興味がない、施術すら受けたことがない、という場合も少なくないでしょう。

医療人としての健全性を保とうとすると、こういったコンサルの話は拒否せざるを得ません。ただし、社会人としての健全性を優先するならば、拒否していられないかもしれません。

私のフラストレーションは、医療人としての健全性を保ちつつ、社会人としての健全性を支援するコンサルタントをあまり見かけないということです。まず、「あなたの得意なことは何ですか?その技術を社会で役立てるお手伝いをしますよ」と始めるコンサルタントを知りません。

私が鍼灸師になったのは、高校生の時に鍼灸の効果を体験したからです。その時の感動を誰かに伝えたい、という気持ちが今でもあるのです。その時の感動が、鍼灸師として生きていくためのモチベーションです。なぜ、コンサルタントはこういうモチベーションを無視し続けるのか、理解できません。このまま無視し続けるなら、コンサルタントは私たちに職替えをすすめるべきです。「こっちの仕事の方が儲かりますよ」と。

誤解しないでいただきたいのは、コンサルティングやマーケティングを否定しているわけではないということです。医療に携わる者も収入を得なければなりません。ビジネスとしての側面を磨く努力は必要です。そのやり方が、患者さん無視であってはならない、と強く思います。自分なりの正義感のつもりです。

 新規顧客獲得っ!!
 リピート率アップぅ!!

コンサルさん、叫ぶのはよいのですが、患者さんのメリットがどこにあるのか説明できますか?主役は治療家ではありません。コンサルタントでもありません。患者さんのメリットを説明できないコンサルに用はございません。

患者さんを喜ばせることと、医療的に最善を尽くすことはイコールではありません。患者さんは症状が改善していないのに喜ぶこともあれば、症状が改善しても喜ばないこともあります。患者さんが下すジャッジは、感情点が大きな割合を占めるからです。これは比較が難しい医療の宿命です。「比較が難しい」という意味は、体は一つなのでAとBを同時に受けて、どっちが効果的か検証できないのです。どうしても、A→B、B→Aとなってしまうのです。

数年前、このブログのコメント欄に「患者さんが嫌がることはしない主義」という話を鍼灸学生さんから頂いたことがあります。「医療人として患者さんが嫌がることをするのはおかしい」という正義感から発せられた言葉だと思いました。私は医療人として違和感を覚えました。

患者さんが嫌がる施術だとしても、それによって改善すると確信できた時、どうするのでしょうか。患者さんにとって、嫌な施術を受けて治らないということが最悪であって、好きな施術で治るというのが最良です。嫌な施術で治るというのはその中間にあたります。鍼灸から離れますが手術なんてそのよい例だと思います。手術が好きな人はいませんが、治ると思うから受けるのです。治れば、手術を受けてよかったと思うはずです。

患者さんの本来的な欲求に対してアプローチしようとするとき、患者さんに一瞬の我慢を要求する場合だってあります。何も「痛い施術を我慢して」という事ばかりではありません。好きなお酒を控えていただく、ということもこれにあたります。

患者さんは心も体も負担を抱えています。だから、患者さんの心を操るのは比較的やさしいと言われています。占い師が相談者の心をつかみやすいのと同じ理由です。治療のために患者さんの心を誘導するのは医療技術の一つですが、それを「囲い込み」には使ってはならないと思います。

商売をやっている人なら馴染みのある「囲い込み」という言葉。私たちのケースでいえば、他の治療院や鍼灸院にいかないように縛る仕掛けのことです。リピート率とリピート回数を上げるのが目的です。商売において囲い込みは常識的に行われることですが、医療において同じように考えてよいのか疑問を感じます(同じように語るコンサルタントが多い)。

囲い込みを受けた患者さんは、他の医療や施術を受ける機会を失ってしまいます。本来、治るべきものが適切な治療を受けられずに治らない、という事になってはいけないはずです。何が最善であるのか比較するのが難しい医療。自分が担当するのがベストなのか、常に問い続ける姿勢が大事だと思うのです。

医療人でありながら、民間療法と競わなければならない環境にさらされている鍼灸。ビジネスセンスがなければ経営そのものが難しいも事実(自分の苦労がそれを物語っています)。これをどう両立させていくのか、という課題が鍼灸師を待ち受けています。

次は、その具体的方策について「コンサルタントが知らないこと」。

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コメント

  1. ダークホース より:

    初めまして。
    ブログにコメントをするのは、生まれて初めてです。人の考えを知る事は、自分の考えを整理するきっかけになるので大好きです。くり助さんは、医療人と社会人を分けてますが、私は社会人の中にに医療人がいると考えてます。ので不健全な医療人が健全な社会人になる事はできない。勿論、不健全な社会人が健全な医療人になる事はできない。とブログを読んで、自分の考えがまとまりました!

  2. クリ助 より:

    >ダークホースさん
    初めてコメントするブログに私のブログが選ばれて光栄です♪本当に嬉しいです。
    私も自分の頭の中を整理するためにブログを書いているところがありますので、ダークホースさんのご意見、とても参考になります。
    確かに、社会人と医療人というふうに切り分けてしまのは、適切でなかったかもしれません。
    「社会人=商売人」と読んで頂いてもかまいません。

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