鍼灸師の思考 姿勢の直し方(前編)

臨床の現場では、患者さんからたくさん質問をされます。私にとって当たり前のことが患者さんには新鮮だったりします。

特に質問が多いのは「姿勢」に関するものです。肩こりの治療をしていても、頭痛の治療をしていても、腰痛の治療をしていても、

「姿勢が悪いからですか?」

と問われることが多いのです。自分の症状は姿勢の悪さから出てきたものではないかと思っていることがとても多いのです。患者さんは、私が思っている以上に「姿勢」に敏感なのかもしれません。

仮に、患者さんが想像しているように、症状の原因が姿勢にあるならば、姿勢を正せば治ることになります。確かに「姿勢を正せば治る」というのは一理あって、実際に普段の姿勢を気を付けることが重要な場合があります。でも、そう簡単な話ではありません。

たとえば、猫背が気になるからと、背中を沿って胸を張り続けても、すぐに疲れ果ててしまいます。頑張れば頑張るほど、他のところがおかしくなってしまうでしょうね。

困ったことに猫背になってしまいました

強引な力の入れ方をした時点で、それは良い姿勢とは言えません。よい姿勢とは無理をしていない状態だからです。私は、姿勢を「動きの一部」だと考えています。動きを切り取ったっものが姿勢です。

良い姿勢になると自由に動ける、というのは順番が逆で、自由に動ける状態だから良い姿勢だと言えるのです。カメラのシャッターを切る際に姿勢を決める、いわゆるポージングと、ここで言っている姿勢は全く別です。

私は臨床家なので、常に実用的かどうかを基準に考えています。姿勢を「体の位置関係」で考えてしまうと、たいへん面倒なことになります。「頭の位置が前過ぎだから引いて、骨盤は後ろに傾きすぎているので、もっと前に倒す・・・」と、理想に近づけるまでのプロセスが膨大です。姿勢が良くなる前に互いのモチベーションが持ちません。

骨盤前傾

たとえば、「骨盤が前の方に傾きすぎているので真っ直ぐにしたい」と考えるとしましょう。Aさんは、骨盤が前の方に傾きすぎているクセだと考えて、真っ直ぐな位置との差をどうするか考えます。いっぽう、Bさんは、骨盤を後ろに傾ける苦手な動きを避けて前の方に傾けていると考え、どうしたら骨盤が後ろに傾くようになるかを考えます。

私はBさんと同じ考え方です。悪い姿勢とは「苦手な動きから逃げ続けている状態」だと考えて、苦手な動きを解決する方法を考えます。この方が実用的で早いと経験で知っているからです。

コマ

人は、本能的に、いつでもどこでもどんな方向にも動けることを望みます。どこかの方向に偏るのは嫌なのです。すべての方向に対して動きやすい位置がニュートラルです。このニュートラルなポジションこそ、健康的な姿勢であると考えています。このニュートラルは、その時の条件によって決まる流動的なものです。

動けない方向があるとニュートラルが変わります。動けなければ、いくら「ニュートラルはココですよ!」と位置感を体に覚えさせても、そのコンディションの中で体はニュートラルを本能的に探してしまうのです。怪我をしてある方向に動けなくなれば、ニュートラルはそこを避けやすいところに設定されます。

問題になるのは、怪我が治っているのにニュートラルが元に戻っていない時です。身体の状態と実際の動きにズレが生じ、それが思わぬ負荷になっていくのです。

(つづく…後編

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