(1)のつづき
■発熱と腰痛
6月2日の金曜日に、強い腰痛が出て歩くこともできないほど悪化しました。同時に寒気と熱気が交互に出てきたのです。熱は一時的に38℃を越えました。
結果的にお産の5日前だったわけですが、この時点では「風邪かな?」「お産が近いのかな?」とぼんやりと考えていました。妊娠してからも腰痛は時々出ていていたので、今回もそうかなと思いました。熱は疲れているので体温調整ができないのかな、という程度。
深刻に考えておらず、普段通りに、腰痛と発熱冷ましの鍼治療をしました。歩けないほどの腰痛は解消され普通に歩けるようになりました。熱も数時間後には下がっていきました。体調が普通程度まで回復したのです。
翌朝も体調は良かったので、治療の効果ありと判断しました。
ただ、良い状態は1日持ちませんでした。再び発熱と腰痛…。
その頃のやりとりが残っています。

6月2日(金)の19:30頃(私が仕事中)にメッセージが届きました。
その晩に治療したわけです。これでいったん症状が治まりました。
翌日に昼になって再び同じ症状。心配になってもう一度鍼治療を提案。ただ、患者さんを診なければならなかったので、すぐには実行できず。その間にクリ子は自分の症状を検索したら、ある症状とピタリ一致していることに気が付きました。
「腎盂腎炎かもしれない」
と言ってきました。それを聞いてハッとしました。確かに可能性が濃厚。ツボを腎盂腎炎用に切り替えて治療すると、かなり痛がっていた腰痛はスッと引いていきました。これで完全に治まるとは限りません。ここは慎重になった方がいいと思いました。
すぐに産院に行きました。私が連れて行けないので母にお願いしました。
診察を受けると、妻が推測した通り腎盂腎炎でした。入院も提案されましたが、状況からみて自宅安静でも良さそうなので、注射(たぶん抗生物質)をしてもらって帰ってきました。
残っていた腰痛は鍼治療の直後にスッと軽くなり消えました。発熱も落ち着いていましたが完全ではないまま翌日の日曜日に。
クリ子は2回目の注射のために産院へ行くことに。そんな状況のクリ子を残し私は東京へ。心配だったのは腎盂腎炎が治まらないうちに陣痛が始まることでした。雰囲気として「近い」と感じていたからです。実際にお産はその3日後だったので、その勘は当たっていたわけです。
東京から群馬の自宅に戻り、帰宅後も鍼治療。
翌日の月曜日には体調がだいぶ安定してきました。この日が最後の注射となりました。腎盂腎炎、お産の2日前に終焉。ギリギリでした。
■腎盂腎炎の原因
腎盂腎炎の原因の多くは、尿が逆流して細菌が腎臓の腎盂という部分に侵入して起こります。

腎盂腎炎は妊娠中に起こりやすい病気です。妻の例は軽く済んだので、アッサリな印象になっていますが、これを標準と思わないでください。一週間以上入院することも珍しくないようです。
38℃を越える熱と、動かなくても痛む強い腰痛が特徴です。疑わしいと思ったら、すぐに病院に相談することをおすすめします。

腰痛の特徴を詳しく説明します。
なったことがない私は自分の言葉で表現できませんが、痛みは背中に近い上の方にあります。動けないほど痛いのです。痛む位置も背中に近い腰です。実際、妻が痛がっていた場所も腰の上の方でした。ここには、腎兪(じんゆ)というツボがあります。その周辺です。仙腸関節がある骨盤の方で痛むものと様子が違います。背中の下の方が痛む、という解釈でもよいです。
■腎盂腎炎の鍼治療
鍼治療する際には、腎兪を対象に行うことが大事です。腎兪そのものを使っても効果が見込めると思いますが、私は背中のツボから腎兪に作用させました。症例がこの一例なので、詳細を紹介するのは自粛します。
鍼治療に手応えはありましたが、効果は症状の重さや環境に左右されますから、鍼治療だけに依存するのはリスクがあると思います。術者の腕や判断力の差も出るところなので、慎重であるべきでしょう。もちろん、私も自分の腕を信じすぎないように慎重になっていました。
腎盂腎炎の治療をするのは、これが初めてでした。一週間の入院が必要なこともある病気が2~3日で完全に回復してしまったことを考えると、鍼治療に可能性を感じました。
理論的には見込みがあっても、腎盂腎炎の治療を真正面からやるのは初でした。鍼灸師としても貴重な体験となりました。腎盂腎炎に限らず、臨床の現場ではいろいろな症状に出会います。重症度や緊急度をしっかり鑑別し、自分の領分を越えないことだと思います。
お産まであと2日です。つづく…(3)
◆関連記事
・鍼灸師とお産(1)
・鍼灸師とお産-第2章(1)

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