第1部では経絡というフィルターを外しました。すると「胃合於三里(胃は三里に合す)というシンプルな関係が見えてきました。
第2部では五行というフィルターを外しました。すると所入為合(入るところを合とする)という意味が重要であることがわかりました。
この第3部では、ここに一つの文章を投げ入れます。合治内府(合は内府を治す)。
ここからこの3つを並べて考えていきます。すると「合」が何であるのか、少しずつ輪郭が見えてきます。
「内府」は六腑だけを意味しているのか
ここで問題になるのが「合治内府」の「内府」です。普通に読めば「府」は腑です。
しかも『霊枢・邪気蔵府病形篇』では、この直後に胃・大腸・小腸・三焦・膀胱・胆の「合」が具体的に示されています。したがって、この文章が六腑を強く意識していることは間違いありません。ところが、『黄帝内経』の別の篇を読むと、少し立ち止まりたくなります。
黄帝の質問にヒントがある
『黄帝内経』は黄帝の質問に答えるスタイルで形式で書かれています。
『霊枢・九鍼十二原篇』で、黄帝はこんな問いをしています。
願聞五藏六府所出之處(五臓六腑の出るところを聞きたい)
私はこの一文がとても気になります。黄帝が聞いているのは、六腑だけではありません。五臓六腑です。この問いに対して岐伯は、次のように答えます。
五藏五腧、五五二十五腧。六府六腧、六六三十六腧。
五臓にはそれぞれ5つの腧があり、合わせて25。六腑にはそれぞれ6つの腧があり、合わせて36あるという意味です。
そして、その少し後に、次のように続いています。
所出為井(出るところを井)
所溜為滎(溜るところを滎)
所注為腧(注ぐところを腧)
所行為経(行くところを経)
所入為合(入るところを合)
これは、五腧の分類です。この中にしっかり「合」が含まれていますから文脈通りに読めば、五臓にも「合」があります。
体の外と内
ここで、『霊枢・邪気蔵府病形編」をもう一度読んでみます。「合治内府」の前にはどう書いてあるのでしょうか。次のように書いてあります。
滎輸治外経、合治内府
現代に生きる鍼灸師は「経」と書いてあれば経絡を、「府」と書いてあれば六腑を思い浮かべます。しかし、いったんその常識を外してみます。すると単純な対比が残ります。
外経と内府。
外にある「経」と、内にある「府」です。
身体の外側には経があり、身体の内側には臓腑があります。そう考えると、「滎輸治外経、合治内府」は、滎・輸と合の違いを身体の外を治すのか、内を治すのかという違いを説明しているようにも読めます。
もしそうなら、「合治内府」の「府」を六腑だけに限定する必要はありません。五臓も身体の「内」にあるからです。ですから、次のように理解するのが自然かと思います。
外経=外にある経路
内府=臓腑の略称
合穴は内臓への入口となるツボ
ここまでの話をまとめます。
「合治内府」は「合は臓腑を治す」という意味になります。つまり、臓腑にもっとも作用を及ぼすのは「合」のつくツボ、と理解できます。現代では、それを「合穴」と呼んでいるわけですが、これらのツボは臓腑を直接ターゲットにしたツボであると言うことができます。
古典の世界観に合わせて言えば、合穴は臓腑への入口となるツボです。その合穴は肘まわりと膝まわりに位置しています。
机上の空論で終わらせないためには、臨床で生じる現象と合致するのを確認する必要があります。次回は、これまでの仮説を臨床で証明していく話を書きます。
次回に行く前に、ここまでずっとツボの話をしているのに「経絡」が出てきていないことに改めて注目してください。私たち鍼灸師は「経絡が基本です」と習うことが多いので、「へー、経絡というものがあるんだ」という前提で知識を積み上げてしまっています。でも、このように、経絡以前の話が山ほどあるのです。経絡をきちんと理解するにはぜったい必要なプロセスです。
つづく…「第4部 内臓の調子は背中に出る」
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