■16年前の経験から生まれた「できますゼッケン」
「できますゼッケン」をご存じでしょうか?
「それは、被災地や避難所で、ボランティアスタッフや被災された方々が自分にできることを表明するゼッケン。プロフェッショナルな技能から生活に必要な知恵まで、相互で共有し、助け合うためのツールです。分野別に、4種類のゼッケンを用意しました。」(できますゼッケン ウェブサイトより)
このゼッケンは、「デザイン都市神戸・推進会議」が主催する「issue+design」というプロジェクトの一つで企画されたものです。
16年前の阪神・淡路大震災の教訓から生まれたものです。このゼッケンの存在は、鍼灸師の友人から教えてもらい、「お、これは素晴らしいアイデア」と感動しました。
ボランティアが何も準備せず乗り込んでしまうと、「あなた誰?」です。自分は誰で何ができるのかを1秒で伝えることができたらいいえすよね。まさに、このゼッケンですよね。ボランティア一人一人が自分の得意分野を活かすことで、復興が加速するはずです。
一方で「専門分野を言っている場合ではない」という意見も目にしました。ウェブ上のある質問箱に、「鍼灸のボランティアをしたい」という書き込みを見つけました。これに対して、「鍼灸とか言う前に、国民としてやるべきことがあるのではないか。必要としているのは薬や食料のような物資だ。」という、回答がありました。
これは、鍼灸を受けたことがない人の思い違いであろうと想像できます。直後の混乱した状況だけをみて、「鍼灸のボランティア無用論」を口にするのは、「木を見て森を見ず」と言わざるを得ません。
混乱した震災直後の現場と、これからでは状況もニーズの変わります。これからはしっかり準備した上で自分の専門性を活かすことを考えていくべきだと私は思います。そういう意味でも、この「できますゼッケン」が専門領域を持つ職人にとって最高のアイテムになるのではないでしょうか。
■必要とされている手
手さえあればマッサージはできます。鍼だって二千本くらいはカバンに入ります(いったい何人にできるのでしょう…)。出てくる廃棄物は、カバンの隙間に入れて持ち帰れます。鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師は、現場の資源を全く使うことなく、活動できます。
それなのに、なぜ鍼灸師が現場入りを断られるケースがあったのか…。推測するに、現場の担当者が鍼灸師を知らないからだと思います。鍼灸を受けたことがある人は、国民の数パーセントにすぎませんから。どんな資格で、どんなスキルなのか、わからないので、(忙しいので)とりあえず「一般ボランティアとして参加してください」となってしまうのでしょう。
鍼灸師だから「一般ボランティアをしたくない」ということではありません。たとえば、大工さんが、崩れそうな危険な建物の横で、パンを配っていたらスキルが活かされない、と言いたいだけです。状況によっては、専門外の手伝いをする覚悟もボランティアには大事だと理解しています。
■さらに使いやすくなったゼッケン
実は、このできますゼッケンに対して一つだけ不満がありました。
それを担当者に伝えたところ、あっという間に修正されました。
赤いゼッケンは、「医療・介護」の分野です。この記入例が「整体」だったのです。さらに、使用例の中には、「鍼灸」も「マッサージ」もなかったのです。「整体」が医療の中に入っている違和感と、「鍼灸」も「マッサージ」が入っていないもどかしさを感じました。
鍼灸師の多くが整体を学んでいますが(私自身が普及させようとしている一人)、整体を学ぶ資格は誰にでもあり規制がありません。数万円の教材を買えば、何のチェックもなしに認定証が届く場合だってあります。認定証は国が出しているものではありませんから、自分が名乗ったその時から誰でも整体師になれるわけです。
優秀なスキルを持つ整体師は、たくさんいます。それを否定しようとしているわけでも、陥れようとしているわけでもありません(むしろ、そういう人がいることを多くの人に伝えたいと思っています)。要は、「蓋を開けてみないと誰かだわからない人」なので、医療に入れるのは、どうなのだろう…という意見です。
そこで、担当者に事情を説明したところ変更を快諾していただけたのです。すぐに記入例が変更になりました。つい先ほど「マッサージ」に変わりました。全体から見れば、小さな変更かもしれませんが、私たちにとっては大きな変化です!




コメント
ゼッケン良いですね。被災地が落ちついてツーリングに行くチャンスが出来たらこれつけて行きたいですね。
記入例が「整体」だったのは特に深い意味はないと思います。一般の方の平均的な認識レベルを表しているだけでしょう。
鍼灸マッサージ業界もどんどん外に発信していかないといけませんね。
栗さんの行動力もさすがです。
>ジャッカルさん
被災地に足を運ぶ際には、ぜひ声をかけてください。行ける時はご一緒させてください。私たちには、世界に誇れる技術があるのですから、まずは国内でどんどん使っていきたいですよね。