■起因と原因
膝外側の痛みを委陽(いよう)で取れた話をブログにアップしたのと同時に、全く同じ症状の患者さんがやってきました。今度は発症のきっかけがハッキリしていました。サッカーのプレー中に、ボール越しに足を外側から強く蹴られてから痛みが出たとのこと。きっかけは異なっていても原因が同じであれば、同じツボが使えます。

私が使う活法では、きっかけを起因とし、痛みなどの問題に直接関わる身体的な不都合を原因として考えます。このような三段階で整理すると便利です。

「膝の外側が痛い」という発現点に対して、「原因」という言葉だけで説明しようとすると、ごちゃごちゃになります。蹴られたことが原因なのか、それとも筋肉のこわばりが原因なのか・・・。
原因という言葉しか使えなければ、「原因は蹴られて太ももの筋肉がこわばったこと」と言わざるを得ません。支障なく思えるかも知れませんが、問題があります。なぜなら、蹴られた過去は治療の対象にはならないからです。
消せない過去まで原因に含めてしまうと、そもそも対処不可なものまで対象になります。医療的にどうこうできないことは背負えません。こういう言い方で終わると、無責任で冷淡に感じるかもしれません。
そこで「起因」という言葉が便利なのです。起因とはきっかけです。この症例でいえば、サッカーで蹴られたことです。もし、ここにアプローチしようとすれば、極端な話、サッカーをやめるように言わなければなりません。
■起因の例
起因へのアプローチは医療の範囲を越える場合があります。患者さんの幸福感や使命感を否定することなく、しかも手の届く範囲であれば、起因は取り除くべきです。
・スポーツのトレーニング
・職場の効きすぎたエアコン
・人間関係のストレス
・長時間の通勤
・夜勤による生活リズムの乱れ
こうしたものが起因となりうるものです。
■親切とおせっかい
起因と原因をしっかり区別するメリットは、シンプルに考えられることです。まずは、原因に対応し、起因に対してはできる範囲で対応していきます。起因に適度に対応できれば「親切」、度を超えれば「おせっかい」です。このさじ加減は難しいです。
今回の2つの症例は同じツボで改善したので、起因は異なるが原因が同じだったと言えます。どちらも起因にはアプローチはせず、原因のアプローチに終始しました。
■螺旋(らせん)運動と委陽
靱帯は損傷していないのに膝が痛むことは珍しくありません。炎症(熱感)もなく、変形もありません。
こういう時、活法は便利です。「動かないから痛い」と考えることができるからです。カッコよく言えば「不動則痛」という考え方です。従来の鍼灸では、こうした考え方はほとんど目にしません。
多くの場合、「痛いから動かない(痛則不動)」と考えます。この考え方は間違っていません。でも、「動かないから痛い(不動則痛)」という視点を加えるだけで、幅の広い対応が可能になります。
活法は螺旋を重視します。螺旋は、回転と伸縮です。2つの症例で使用した委陽というツボは、腓骨の動きに関係しています。膝下をねじることができるのは、腓骨があるからです。
膝の外側、折れ曲がるシワのすぐ下に丸い石のような骨があります。これが腓骨の上端です。椅子に腰掛けているならば、腰掛けたまま、足の指先を外や内に向けてみてください。その時に、石のような骨が動くのがわかると思います。

腓骨という骨は、膝から足首をつないで螺旋運動を助けています。立ち上がる時、座るとき、足は設置しているので動きません。その代わりに、太ももが内旋したり外旋します。
立ち上がる、座る、という単純動作だけでも、回旋を奪われてしまうと動けません。身体運動は、螺旋状に軌道を描くことによって、滑らかな動作を実現しているのです。
委陽は下肢の螺旋運動に関わる重要なツボです。このように「ツボで螺旋運動の回復を促す」という考え方は古武術鍼法の特徴の一つになります。
関連記事
・不動則痛、動則不痛(動作の連動性理論)(2009年10月18日)
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動的バランスを整えるツボの使い方を紹介します。
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(締め切りました)。
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コメント
いつも拝見させていただいて、
未熟ながら参考にして治療をしています
『螺旋』の話は読んでいる途中から
興奮が止まりませんでした 笑
自分なりに螺旋ってどういうことなんだろう?
っと本やネットで調べる毎日だったので 苦笑
ありがとうございます!
また、楽しみに
今日も全力で治療をしていきます!
>楽しすぎます さん
いつもありがとうございます。螺旋の話でお役に立てて嬉しいです。この記事をヒントに想像を膨らませて頂くと、いろいろな症状に応用できると思います。
「古武術鍼法に触れてから鍼が楽しくなってきた」という感想を、最近たくさん頂くようになっています。嬉しいです。
始まったばかりの古武術鍼法。今後の記事もどうぞよろしくお願い致します。