■無人列島で育つ技術
「妊娠中の痛みがガマンしましょう」という慣習はもう終わりです。
と発言しておきながら、産科領域で発言権などありません、鍼灸師に。
できることは結果を出すことだけです。
鍼灸師にしかできない技術によって!
鍼灸師はお産の専門家ではありませんが、鍼灸師にしかできないケアやサポートがあります。何かと孤独な鍼灸師。孤独という意味は医療チームの属することなく、単独で患者さんや妊婦さんに向かうことが多いからです。この世界にいてつくづく思います、孤独な職業だなって。孤独を愛する男にならねばなりますまい。
医療ドラマを見て思うのは、「チームって素晴らしい!」
病院内での派閥争い、症例を巡る意見の激突、そんなのも羨ましくなってしまうのです。
「人間関係とは無縁の世界、ヤッホー!」
と考え、この無人列島に流れ着く患者さんを待ちます。
幸い、この無人島にも無線機だけはありますから。
無線機の出力はいつも全開です。
■ 原因づくり
そろそろ本題に。妊娠中の痛みはどこから来るのかという話でしたね。
痛みはホルモン(リラキシン)によって歪んだ骨格が原因、という話はあちこちに転がっているのですが、この理論からすると根本治療はできない、ということになってしまいます。なぜならホルモン分泌をどうかするわけにはいかないからです。
治せるような「原因づくり」が大切です。
原因をでっち上げることとは違います。
奇妙きてれつな人体。
本当の原因なんてわかるわけないのです。遺伝子レベルでわかっても、それがどうにかならなかったら解決できません。仕組みの一部がわかるだけでは医療としては役立ちません。解決できるものでなければ。
そう考えると、医療現場における「原因」とは「解決できるもの」に限って意味をなします。解決可能な因果関係を構築することは臨床家にとって重要なスキルです。極端な言い方をすれば、因果関係さえわかっていれば、その中間がわからなくてもかまいません。
極端な話ではなく、医療とはそういうものかもしれません。薬の治療もわからないことだらけです。人体にどのように作用するのか全てわかるのであれば、動物実験も臨床試験も必要ありません。
■ 妊婦腰痛の原因と対処法-梨状筋の場合
何をすると妊婦腰痛が治るのか、みんなが知りたいのはそこなはずです。
ここで結論を言えば、多くの妊婦腰痛は梨状筋(おしりにある筋肉)が正常に働くだけで軽くなります。
「あ、そうか! 梨状筋に鍼をすればよいのか!」
と思った人もいると思います。でも、ちょっと待ってください。梨状筋に鍼をするだけで運動構造の歪みが解決するわけではありません。

妊娠特有の腰痛は「骨盤は変わっているのに梨状筋はそのまま」だから起こります。梨状筋が骨盤に合わせて働くようになれば痛みは消えると考えます。
鍼を梨状筋にすれば伸縮性は回復します。でも、それだけでは最適な状態とは言えません。その時と場合に応じた状態こそ最適な状態です。
筋肉は動作の中で最適化されていくものです。
活法から得たものです。
鍼をして緩めた梨状筋、動作で緩めた梨状筋、まるで違います。
活法のテクニックでは、妊婦さんの体を「こっちですよ~」というふうに誘導します。文字で書くとこれだけなのですが、その具体的な誘導方法はブログで伝えるのが難しいのです。今度の活法フェスタでは紹介できるかもしれません。

(写真:活法研究会サイトから引用)
誘導によって、梨状筋が収縮してギュ~と硬くなるのですが、この時妊婦さんの子宮も硬くなります。一時的にお腹が張ります(ほんの数秒なので問題ないです)。そして梨状筋が緩むと同時にお腹がポワ~ンと緩みます。実際にやってみると梨状筋とお腹の張り(子宮の収縮)が関連していることがよくわかります。
梨状筋が最適化すると寝返りがラクにできるようになります。
妊娠中は骨盤が前傾し腰椎も反り返っています。仰向けから右向きにゴロンと姿勢を変えようとするとき、左側の寛骨(骨盤の骨)がさらに前傾します。やってみるとわかりますが、左脚が支えになり骨盤を押し上げることになります。その際に骨盤は前傾しようとします。
もともと前傾であるところにさらに前傾が加わるから負荷の大きな動作です。梨状筋が最適化されていなければ負担はさらに大きなものに。絵や写真がないと、わかりにくい話ですね。申し訳ありません。
寝返りができれば夜もぐっすり眠れます。
梨状筋の如何によって睡眠の質まで変わってしまうわけです。
腰痛、お腹の張り、安眠
梨状筋だけでこれだけのものに対処できることがあります。
もちろん、梨状筋では解決しない腰痛もあります。



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