誰かを特別扱いするということ

誰かを特別扱いするとうこと

特別ではない側の気持ち

鍼灸院を経営する立場として気をつけていることの一つに「公平に対応する」があります。患者さんはそれぞれ症状が異なりますし、感受性も異なります。ですから、施術を画一的にすることはできません。使うツボは違いますし、鍼の数もそれぞれです。むしろ、それぞれの方に合わせて変えることが必要です。

私が考える公平は別のところにあります。それは対応の中に「特別」をつくらないことです。特定の患者さんにしかできないことをしない、今日しかできないことをしない、ということです。やろうと思ったら、いつでも誰にでもできる範囲でサービスを組み立てるようにしています。

特別なサービスを受け取る人は嬉しいですし、提供した方も気持ちよくなれます。ただ、受け取れなかった人はどのように感じるのか、その時の気持ちを想像することも必要かと思います。

学生時代にさかのぼりますが、ある鍼灸の勉強会に同級生と一緒に行きました。受付のすぐ隣で書籍を販売していたので、思い切って購入しました。一緒に行った同級生も購入したばかりの書籍を手に持って隣に座りました。

「内緒で会員価格にしてもらっちゃった」

と嬉しそうでした。販売を担当していた人と知り合いだったことで割引してもらえたそうです。そのときの気持ちは今でも覚えています。

この購入に際して、私は1円も損をしていません。その価格に納得して購入したのですから。ただ、隣に同じものを安く購入した人がいただけのことなのです。実害はありません。それなのに損をしてしまったような気分なり、自分の存在までフツー確定のようで、もやもやした気持ちが残りました。私だって特別扱いをしてほしかったのです。

販売係をしていた方は悪い人ではないし人情味あふれる人だと思うのですが、それ以来、私は親しくなれる気がしなくなりました。私の心が狭いだけのことかもしれません。割引してもらった同級生に「安くしてもらえてよかったね」と言えるくらい広い心があったらと思います。

ただ、こういう気持ちになるのは私だけではないように思うのです。

キャンセル料は必要?

鍼灸院に話を戻します。あるスタッフに言われました。「鍼灸院なのだからキャンセル料は必要ないのでは?」と。人情を表に出した方が経営にもプラスでは?という意見です。ありがたい意見ではあるのですが、その意見はしまっておくことになりました。

実は開業して間もない頃は、心が痛むという理由でキャンセル料を設定していませんでした。今は、みなさん時間を守って通ってくださっているので、ドタキャンはほとんどありません。しかし、キャンセル料を設定していないときは、ドタキャンは日常茶飯事で連絡が来ないことも珍しくありませんでした。

「とりあえず、その時間を確保しておいてください」と、行けたら行きますという意味合いの仮予約的なものが起きてしまいます。来院されるかもしれない時間は他の患者さんをお断りする他ありません。仮予約であっても実質的に予約枠は削られます。

現在は、直前の変更やキャンセルに対してキャンセル料をいただいています。現状になってからは仮予約のようなものはゼロになりましたし、ドタキャンもありません。その代わり、こちらもしっかり予約時間に対応できるように時間管理も徹底しています。ときには時間前に、最大でも5分遅れで施術室に案内できるようにしています。

もし、予約を守らない人に守っている人と同じように対応する(=キャンセル料をいただかない)、というのは平等かもしれませんが公平感は失われると思うのです。守っている人が損をした気分にならないことが最優先な気がします。

強調しておきたいことは、キャンセル料はキャンセルする人へのペナルティではないということです。目的は、通院している方が気持ちよく通院する環境をつくるためです。

「キャンセルする場合はキャンセル料が必要」という設定をすることで、不公平感が生まれにくくなります。これが正解かどうかわかりませんが、少なくとも私が患者で通院する立場であれば、公平だと感じます。

キャンセル料を請求することを機械的で冷淡な対応だと思う人もいるでしょう。「人情はどこに忘れてきたんだ?」と言われるかもしれません。キャンセル料が必要なところには通いたくない、と考える人もいるでしょう。そう考えれば経営上のリスクになりますが、日時を守ってくださる方が不公平感を抱いてしまう方が無視できないリスクではないかと思います。

人間なら誰でも自分を特別扱いしてほしいと思います。受ける側に入れば特別は嬉しいのですが、その枠に入れなかったとき、何も失っていないのに何かを失ったような気分になります。

特別の裏に潜むリスクについて、みなさんはどのようにお考えでしょうか。

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