秘密のノートに書かれていること

■単純と複雑

鍼灸師にとって、技術が大事なのか、それとも知識が大事なのか…。

鍼灸には2つの側面があるように思います。単純であるという見方と複雑であるという見方です。極端な書き方をしたいので、鍼灸を学者目線と技術者目線に分けてみました。

学者目線で考えてみると、

 技術=単純(鍼と灸で刺激を与えるだけ)
 知識=複雑(何百、何千とあるツボの作用とその相関関係)

技術者目線で考えてみると、

 技術=複雑(一人一人の体や心に反応に合わせて調整しなければならない)
 知識=単純(ツボなんて単なる反応点 or ツボなんて関係ない)

鍼灸師もそれぞれですが、患者さんにしてみれば、鍼灸師の能力をどう評価すればよいのか判断に困ることが多いのではないでしょうか。知識の広い鍼灸師がよいのか、それとも指先が器用な鍼灸師がよいのか。これに答えるのは難しいです。知識ベースの鍼灸師と技術ベースの鍼灸師がいるように思いますが、どちらも結果が出ています。

結果を出すために、何を重視するのかという点で鍼灸師も意見が分かれています。実際には知識ベースと技術ベースの二手に分かれているわけではなく、いろいろな立ち位置があります。患者さんからみれば、鍼灸という一つの世界でも、鍼灸師からみると、いくつもの世界が混ざり合った世界です。

私は複雑さを楽しんでいますが、患者さんには単純に受け取っていただきたいと思っています。「鍼灸って効くんですね」で十分です。

■抽象化と具体化

ここまで書いておきながら、単純、複雑の2つの分け方には、あまり意味がないように思います。そこで、一つの提案をしたいと思います。「抽象力と具体力で臨床力を磨く」という発想です。

物事を抽象化させる能力と、物事を具体化させる能力です。鍼灸師は、インプットでは抽象化、アウトプットでは具体化という場面がとても多いように思います。たとえば、腰痛の患者さんが「ここが痛いんです」と教えてくれたとします。でも、そのままでは治療ができません。この腰痛はどうして起きたのだろう、どうすれば治るのだろう、と考えます。

一例一例に対して原因と対処法を考えるわけですが、その際に似た症例が参考になります。多くの症例を経験していても、その経験が抽象化できていなかったら、目の前にある症例と照らし合わせることができません。症例を汎用性のある情報にしておくためには、抽象化が大事だと考えています。経験とは汎用性のある情報を持っていることだと私は思います。

施術となれば、具体的な手が重要です。あいまいなことをしていたのでは効果が期待できません。汎用性のある情報を、目の前の患者さんに役立つ具体性のあるものにしなければなりません。

実際の臨床では、このような抽象化と具体化が回転するように繰り返されています。この回転がうまく回るほど、機転の利いた施術ができるようになると思います。なんだか難しく書いてしまいましたが、「これは効いた!」という時に「なぜ効いたのか」と考えておかないと次につながらないというだけの話です。記憶力のない私は、その都度専用ノートにメモするようにしています。今日のマタニティ活法も、そのノートに記されたものを引っ張り出して伝授します。さっさと準備して寝ないと。

次回から、ナンバ(二軸動作)の視点から治療を考えます。

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