ツボにはまる瞬間があります。
ツボ選びがヒットすると鍼灸師として最高のひとときが訪れます。今回紹介する症例がそうでした。患者さんも私も、とても驚くほどの効果が得られたので報告します。
■内踝(うちくるぶし)の下が痛い
症状は、内踝(うちくるぶし)の下の痛みです。くるぶしの頂点より真下に下がって来た所より若干前です。照海(しょうかい)というツボがありますが、その少し前です。ここが触れるだけで痛み、体重をかけた時も痛みを感じる状態でした。ただし、歩けないほど強い痛みではありません。骨上でわずかな凹みを感じるところですから、正確な位置は内側靱帯の𦙾踵部と𦙾舟部が重なる接点の付近だと思われます。

触診しても、腫れもなく熱間もありません。見た目には普通。でも患者さんは痛みを訴えています。こうした際に、この局所に鍼をして鎮静を計るのも一つの方法ですが別の方法もあります。力の伝達を考えると、踵にかかった圧力は脛骨という骨を伝わって膝の方に伝えられます。
自動車にサスペンションがあるように、脚も構造的にサスペンション機能を備えています。痛みのある位置にある靱帯もその役割を担っています。足首から膝に至る脛骨には、その両端でサスペンション機能が備わっていると考えます。そう考えると上のサスペンションはどこなのか、という話になるわけです。
そうした発想から位置を割り出すと、そこには陰陵泉(いんりょうせん)というツボがあります。クルマのようにわかりやすいバネが付いているわけではりません。ふくらはぎの筋肉が働いて、襲いかかってくる圧力の向きを変えてまともに受けないように常に受け流しているのです。
ジャンプをして着地をすれば、その瞬間に膝が曲がってかかる圧力を抜いています。この時に働いているのは膝だけではありません。ふくらはぎの筋肉がしっかり働いて、膝が前に崩れないように足首を伸ばす力が働いているのです。もし、この時にふくらはぎが働いていなければ、足首は曲がりすぎて強い負荷がかかります。この吸収動作に陰陵泉は深く関わっています。陰陵泉は、ふくらはぎの末端に位置するツボです。
陰陵泉の役割の一つは、足首を保護することです。膝のすぐ下で足首が曲がりすぎないように見守っているツボでもあるのです。
このツボを使ったところ、触れた時の痛みは消え、体重をかけてもほとんど問題ないくらいまで改善しました。内踝の下にある痛み全てに効果があるとは限りませんが、症状が似ていればこの方法が役立つ可能性ありです。お試しください。
■経絡に詳しい専門家は…
この症例を読んだ専門家は、痛みの位置は商丘(しょうきゅう)ではないかと思われることでしょう。足の太陰脾経(たいいんひけい)の経絡上で起きた問題と考えたくなるはずです。ただ、この症例では商丘より照海に近い位置に痛みが出ていました。
古武術鍼法では経絡を否定していませんが、運動時の不具合を分析する際には、経絡を基本にしていません。経絡を基本に考えていたならば、この痛みが照海に近いので、足の少陰腎経(しょういんじんけい)の問題として陰谷(いんこく)を使っていたでしょう。
この症例では使っていないので、陰谷を不正解と決めつけることはできませんが、陰陵泉が劇的に効いたという事実を踏まえれば、陰谷は陰陵泉ほどの効果は出せなかったと考えられます(クリティカルヒットが2箇所から出るとは考えにくいため)。


コメント
こんにちは。
素人ならでは質問ですが、「ツボを使う」という言葉は「ツボに鍼をして刺激する」という意味ですか?
それとも他に「使う」やり方があるのでしょうか?
話は変わりますが、3月30日の体験セミナーに参加いたします。クリ介さんもいらっしゃりますか?お会いできたなら嬉しいです。
>ひらかわさん
ご質問ありがとうございます!
今回の「使う」は「刺鍼」でした。刺鍼以外の方法でも、たとえばお灸や指圧でも効果が出る可能性があります。経験的に、こうしたケースの場合、鍼の成果が素晴らしいです。スパッと効果が出てくれます。
3/30は会場にいますよ。お申し込みありがとうございます!当日お会いできるのを楽しみにしています。古武術鍼法「活法×鍼灸」の時間は私がメインで講師やります。