
『温故知新』の中での挑戦
雑誌『温故知新』の中で「鍼灸師のための経穴デザイン入門」を連載中です。もうすぐ次号の原稿の締切です。
この連載は、ある方向に向かって書いています。現役の鍼灸師には、挑戦的だと思われるでしょうし、一部の鍼灸師は喧嘩を売られている気分になるでしょう。でも、恐れずに従来の鍼灸のあり方に疑問を投げかけています。それが目的だからです。許される限り続けます。
鍼灸学校の学生が読めば混乱する内容になっています。にも関わらず、主要な専門学校に配布されている雑誌ですので、目にした学生さんが多いと思います。もしかしたら、私の連載が理由で、設置を拒否している学校があるかもしれません。

嫌われるのは「鍼灸師のための経穴デザイン入門」に、古典鍼灸や経絡(けいらく)学を一部否定する内容が含まれているからです。でも、丁寧に読んで頂けると、否定が目的ではないことが分かるように書いています。私は古典をリスペクトしている鍼灸師です。
この連載の中で、
経絡を信じなければ鍼灸は始まらないのか…
という疑問を投げかけています。そして、その問いに答えを出したいと思っています。世に存在する鍼灸否定派(そういう人はたいてい鍼灸を受けたこともない)が、突っ込むのは「経絡の存在」なのです。経絡は見えません。解剖しても出てきません。ここに鍼灸医学の隙があります。ハッキリしないものに立脚していることが理由で鍼灸全部が疑われるのです。
だったら、いったん経絡を抜きにして考えてみましょう、というのが私の提案です。
無反応な人はいない
鍼を刺されて無反応な人はいるでしょうか。灸を据えられて無反応な人はいるでしょうか。無痛な鍼、火傷をしない灸であっても、皮膚には必ず刺激が加わっています。もし、この刺激に体が何の反応もしないとしたら、その体は異常です。
病気が治るとか怪我が治るとか、そういう話をする前に、鍼や灸の刺激が体に必ず作用している事実を見なければなりません。どんなにガンコな否定論者であっても、太い縫い針を手の平に刺されたら悲鳴をあげるでしょう。肉体にも精神にも、縫い針の作用は届きます。体に変化が起こらないなんて絶対に言わせません。
鍼灸が効果が議論されるのは、鍼灸が無痛に近いほど軽い刺激であることに起因しているように思います。特に、鍼は軽い刺激は本当に軽く、接触している程度のやり方もあります。どんなに軽微な(痛くない)刺激であっても、鍼が皮膚に刺さったり接触しているのです。灸の熱は皮膚を温めているのです。それで「効果がない」という理屈は通りません。
議題は、効果があるかないかではないのです。効果はあります。議論すべきは、効果がどこに作用しているかなのです。作用が、目的の病気や症状を治癒に向かわせる力となっているのかが大切なのです。作用が目的にピタリと向かっていれば、「よく効く鍼灸」ということになります。
繰り返しになりますが、体に刺激が加わって無反応な体はありません。でも、起きている反応に気がつかない場合はあります。一つは、あまりにも軽微である時。もう一つは、変化が起こるところに受け手の意識がフォーカスされていない時です。
鍼灸の醍醐味は、軽微な刺激で大きな変化を起こすことにあると思います。刺激に対する体の応答を治癒力に利用するのです。鍼灸には術の上手下手があります。鍼灸師の技術は一律ではありません。その上手下手は、相手への触れ方にも表れます。
否定論者も認めざるを得ない話
しつこいようですが、鍼灸否定論者も、腕をグイッっとつかまれて引っ張られたときの感覚と、腕をフワッと包み込まれた時の感覚が違うことはすぐにわかるでしょう。心拍数は発汗もセンサーを付けておけば違いが表れるでしょう。触れ方一つで肉体や精神に作用するものは違ったものになります。
鍼灸否定論者も「あの人、嫌だなぁ」とか「あの人、大好き」とか、そういう生理的に感じるものがあるでしょう。近くにいる人によって、肉体や精神は常に揺れ動いているものなのです。鍼灸の効果は、これに近いものがあります。生理的な好き嫌いのメカニズムを解き明かすことと、鍼灸のメカニズムを解き明かすことは、似ているように思います。
鍼灸は経絡から話を始めてはダメなのです。経絡から話し始めてよいと思っているのは鍼灸師だけかもしれません。経絡を肯定しなければ話が始まらない、というのであれば、それは鍼灸教への入信を意味します。鍼灸が宗教だと言われても仕方のない状況に、鍼灸師自らが陥っているのです。教育システムの問題だと思います。
鍼灸は、まずシンプルに、アクション(刺激)とリアクション(反応)の話から始めるべきなのです。経絡とは何か、気とは何か、という話は一番最後でよいのではないでしょうか。もっと多くの方に鍼灸を受けてほしいと思うなら、この順番を間違わないことです。
後編「鍼灸を科学で語る意味」に続く
『温故知新』について
「鍼灸師のための経穴デザイン入門」を連載中の『温故知新』は、からだにいいこむが発行する鍼灸師のための専門マガジンです。毎回、捻った特集が組まれています。最近では求人情報も増えてきました。

電子書籍版 http://libura.com/(温故知新と検索でバックナンバー購読可)
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コメント
クリ助先生、応援してます!!
>KIKOさん
ありがとうございます!心強いです!