(多体問題で考える医療と科学4のつづき)
■東洋医学と数学
医療は常に多体問題。数学では解けない複数(3つ以上)の問題を同時に解決しようとするものです。科学で説明しきれないのが医療、説明できるのはほんの一部です。
だからと言って、科学から距離を置いてしまうと呪術との区別が曖昧になってしまいます。科学で答えは出なくても「科学する姿勢」が大事だと思います。実は、東洋医学のバックボーンには、数学で描く世界があります。
図書館の語源となった「河図(かと)」と「洛書(らくしょ)」を見てみましょう。

左側の四角が河図。右側の四角が洛書です。詳しい説明は省略しますが、東洋思想にとって極めて重要なものです。怪しく見えますが、数字を読み解くと数学の世界が見えてきます。
白い玉は奇数、黒い玉は偶数です。偶数は2で割り切れるので陰の数、奇数は2で割り切れないので(1つ余るので)陽の数とされています。世界は、陰と陽でバランスを取って成り立っているという世界観を表しています。河図と洛書で、言いたい内容が異なります。
わかりやすいのは、右側の洛書の方です。数が配置されている区画は9つあるので、次のように升に収めます。

この数字の配置の秘密を知ると鳥肌が立ちます。
縦に並んでいる数字を足して下さい。次に横に並んでいる数字。そして、斜めです。すべて15になっていますよね。

これだけではありません。次は卍のカタチに足して見て下さい。どっち向きでも同じ結果になります。
見てきたのは25の世界ですよね。卍の向きは右回りと左回りを意味しています。

■「5」でわかる東洋医学の真理
5が世界の中心にあるという意味は見逃せません。東洋医学が5の数を重視するのは、こういうところから来ています。臓器も5つです。肝、心、脾、肺、腎。安定するには5が必要なのです。
ここで、昭和の鍼灸名人、澤田健先生の言葉を借ります。
漢法医学の基礎は、経というて幾千年たっても幾万年たっても変わることのない一貫した真理から割り出したものだから、いろいろの人に経験を寄せ集めたような西洋医学などよりも、ずっと基礎がしっかりしているのだ。
(鍼灸眞髄P.22)
これは極端な意見かもしれませんが、「一貫した真理から割り出した」という部分がとても大事です。東洋の思想は、世界の安定を縦横斜めで表し、世界の変遷を卍で表しているのです。この世界観を東洋医学は引き継いでいます。
洛書に描かれた5を中心とする世界は、誰かの感覚から出た話ではありません。誰もが同じ結論に至る数学です。医学にも、このように真理を追究する姿勢が絶対に必要なのです。
個人の範疇では「治れば何でもいい」という理屈で正解です。しかし、医療となれば誰にでも説明できる普遍性や科学性はやはり必要です。再現できなければ継承されず発展もしないからです。今やっていることが科学的に説明できないとしても、再現性さえあればいつか科学が説明してくれる日がくるでしょう。それを信じて私たち臨床家は、再現性のある技術を磨いていくしかありません。
<つづく…6>
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