このツボ! 股関節を緩めるには大腸兪

■股関節改善のツボは股関節にあらず

股関節に対する鍼治療ほど面白いものはありません。

最初にお断りしておくと、股関節にあるツボの話ではありません。股関節を改善させるためのツボの紹介です。実は、股関節に直接触れなくても、鍼灸治療はできるのです。

股関節の違和感や痛みを緩和させる時、その部分に鍼や灸をすることは滅多にありません。この事実から逆算すれば、股関節は股関節以外のところからの影響を受けているという事実が見えてきます。

股関節と骨盤

■股関節の構造

股関節は遠隔治療の宝庫です。遠隔治療というのは、症状のある部分そのものや、すぐ近くのツボを使わない方法です。わざわざ遠隔からアプローチするのは、その方が効果が高いからです。むしろ、症状のある所に直接アプローチしても成果が出ないこともあります(治療したような雰囲気は作れますが…)。

股関節は、臼状関節に分類される関節です。お椀にリンゴが乗っているような感じです。お椀が骨盤側、りんごが大腿骨側です。強烈な靱帯でお椀とリンゴがくるまれているので、簡単に外れることはありません。この関節の特徴は何と言っても、クルクルと回転することでしょう。だから、太ももを前に後ろにも横にも斜めにも方向を選ばずに動かすことができます。

動く方向が多方面であるほど、制御系も複雑になります。ここでいう制御系というのは、動かす力と動きすぎないようにするコントロールのことです。関節は、動かすためのパワーと勝手気ままに動きすぎないように、引き戻す力が働いています。

■カラダにもテコの原理

こうした力は、股関節近辺の筋肉が担いきれません。テコが働かないので、ネジを直接手でねじ込むくらい難しいことです。ドライバーを使うとねじ回しが楽なように、カラダもテコを利用した構造になっています。遠くにある大きな筋肉で引っ張る方がずっとラクに動かせるのです。

テコの原理

股関節の治療をする上で、とても大事なことは、股関節は股関節の筋肉で動いているわけではないということです。仮に、股関節の痛みそのものに鍼をして痛みが軽減しても、制御系には働いていないということになります。消炎作用や鎮痛効果は期待出来ても、股関節が抱えているかもしれない動きの不調和は解消できません。私の経験では、股関節のトラブルの9割以上が動きの問題です。動きの問題を解決しない限り、股関節の根本的治療は難しいということです。

こうした発想に終着せず、痛む局所ばかりをいじり続けていると、いっこうに改善が見られないというパターンに陥ってしまいます。プロスポーツ選手に対しても同様の発想で対応することができます。

■動きと関節の問題

「動きの問題」と認識すると、股関節のツボは動きの数だけあると言えます。いくつあるのか、と厳密に数を割り出すのはできません。これまでの経験から、10くらい用意しておけば臨床で困りません。

動きが改善をしながらカラダの調整をすることを「整動」と言い表すことにしています。これに対して、血液などの流れを整えながらカラダの調整をすることを「整流」と呼んでいます。カラダの調整を整動と整流の2種類に分けて行っています。

整動と整流の概念

ツボには整流と整動の作用があります。特に私が注目しているのは整動作用です。整動作用のベースとなる作用は「関節が緩む」です。「関節が開く」と言っても同じです。

実際に、関節に隙間ができるとう意味ではありません。目に見えるような変化ではなく、関節の過度な締め付けが解消されるのです。詰まりすぎた関節が適度に解放されることで、関節の自由な動きが戻ります。動きの変化は可動域が変わるので目に見えます。関節が適度に緩むと動きに幅が出てきます。

痛む筋肉に鍼をしても緩みます。効果があるが故に、時に緩みすぎるという問題が出てきます。緩みすぎないようにするには、刺激量を調整しなければなりません。遠隔から作用させる場合には、緩みすぎに気を付ける必要がありません。目的の関節が緩みすぎたり、開きすぎたりすることはありません。カラダは必要な緊張(絞め)は必ず残すからです。

■股関節の基本となるツボ

股関節の基本となるツボを紹介します。股関節を緩めたい時は、「大腸兪(だいちょうゆ)」というツボを使います。名前の通り、大腸に作用するので便秘のツボとしても有名です。大腸に効かせることを目的に使う時は整流、股関節に効かせることを目的に使う時は整動、ということになります。このように、整流と整動は切り離せない関係です。

実際に股関節が緩んだことを確かめる触診があります。ASIS(上前腸骨棘)の下端から真っ直ぐ親指の幅程度降りたところが柔らかくなります。事前にチェックしておけば、その変化がわかります。患者さんも動きやすさを実感できます。

これだけでも解決する股関節の痛みや違和感はあります。「股関節がつまっている」と感じている方であれば、このツボがストライクです。

鍼をする場合、深く刺す必要はありません。大腸兪というツボがある脊柱起立筋に働きかければ十分です。腰の深部にある大腰筋(腰椎から股関節につながっている筋肉)を狙う必要はありません。別のツボですが、大腰筋に働きかけることもできます。

大腸兪と股関節

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