鍼灸師の思考 私がマッサージをやらない理由(1)

■マッサージをしない理由

私は「鍼灸師」のほかに「あん摩マッサージ指圧師」の免許を取りました。そもそも、鍼灸とマッサージは、免許制度の関係でセットで取得する場合が多いのです。だから兄弟のような関係になっているのですが、仲の良い兄弟になれるかは時と場合によります。

免許制度と実社会での実務の間には距離があり、ここを理解しないまま仕事をしていると、ちぐはぐした状態になります。私は、あん摩マッサージ指圧師の免許をあえて封印しています。鍼灸メインで業務をする上で「やらない方が患者さんのため」であると考えているからです。

誤解のないように言っておきますと、マッサージそのものに否定的なのではありません。私が訴えたい問題というのは、手法や手技のことではありません。後に詳しく書きますが思考の問題です。鍼灸とマッサージは当たり前のようにセットにされていますが、その風潮を受け取るわけにはいかないのです。思考を停止させてはいけないところです。

医療者として鍼灸に携わる者として、鍼灸をマッサージの関係を明瞭にしておきたいと考えています。今回の記事は専門家にも患者さんにも、どちらにも読んで頂きたい内容です。

マッサージ

「鍼灸師はどうあるべきか」というほど大げさなものではありませんが、「鍼灸を主軸にしている鍼灸師にとっては、マッサージの位置づけをしっかり考えておいた方がよい」という提案です。私の選択を正解として押し付けるつもりはありませんが、鍼灸の価値を高めたいと思っている方は、ぜひ一緒に考えて頂きたい内容です。

■医療マッサージと観光マッサージの決定的な違い

施術業には大きく分けて2種類あります。医療と慰安です。鍼灸師とあん摩マッサージ師はどちらに入るのでしょうか。答えはどちらにも属することができます。どちらにも属することもできる融通性のあるポジションであるいっぽう、「私は何者なのか…」、「私は何をすべきなのか…」と迷路にはまってしまうことがあるのです。そうなると深刻です。

医療と慰安の違いについては、過去に何度も触れたことがあるので今回は細かい話は割愛します。ここでは簡単に定義しておきます。医療では施術後の価値を探索するものであり、慰安は施術そのものを価値にしていくものです。

温泉の猿

気持ちいいマッサージを例にしてみますと、マッサージ後(直後を除く)に身体のコンディションが好転するように仕掛けるなら医療的です。しかし、施術後にどうなるかは意識せず、その場でどれだけ満足してもらえるかと考えるなら慰安的です。

たとえば観光地で行われているマッサージ類。そうしたものには、そもそも「その後」がありませんから、医療的になりようがありません。免許取得者の割合も少ないでしょうから、どのみち慰安的です。

慰安であるマッサージは、後で痛くなろうとも、その場の感覚(気持ちいい)を優先させる方が高く評価されます。しかし、医療であれば、この考え方はありえません。冷静に考えれば、誰でもわかる理屈ですが、実際の現場に行くとうやむやになってしまうのです。

「同じ効果なら痛いより気持ちいい方がよい」

という空気に飲まれてしまいます。気持ちいい手術はありませんが、マッサージは基本スペックに気持ち良さが備わっています。鍼灸にも独特な気持ちよさがあります。この気持ちよさが私たちを存在を揺さぶるのです。

■気持ちいいと価値がぼやける

患者さんも「痛いより気持ちいい方がよい」と思うのは当然で、治すために通っているつもりが、いつの間にか気持ちいいから通っている、いつの日からか目的が変わっていることがあります。「気持ちいい」という感覚を、つらさを我慢しながら生活している自分へのご褒美にしてしまうのです。こうしたすり替えは無意識の中で起こってしまうので、患者さんに自覚がないことがあります。

施術者は、それを何となく利用してしまうことがあります。施術後の評価より、施術中の気持ちよさで評価してほしいと思うようになってしまいます。

もちろん、効果と気持ち良さが重なる領域もあります。気持ち良くて効果も抜群なら最高です。しかし、気持ち良さを追究する方が効果が高いと言えるのは限られた場面に限られます。気持ちよい施術と治るために必要な施術は、別で考えないといけないのです。少なくとも、施術者は境界線を設けておかないと、自分が何をしているのか、自分が生み出す価値が何であるのか、一番重要なものを見失ってしまいます。

温泉の猿2

いくら上手でも丁寧でも親切でも、ぼやけた価値しかありません。施術を受ける側も、何に対価を支払っているのか、ぼやけてしまいます。だから、私たち専門家だけの問題ではないのです。

つづく…(

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コメント

  1. マッサージという名が使われていないのは、
    資格を持っていないんですよね(^_^;)
    ちょっと気になります。
    応援しておきました。ポチッ

  2. クリ助 より:

    応援クリックありがとうございます! 励みになります。
    マッサージの資格は、私にはあってないようなものですからね。

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