
夢を打ち砕く現実
国家試験に合格し、免許を取って、夢を胸に抱いて社会に出る鍼灸師。そんな彼らが数年後には夢を忘れてしまいます。5年後には違う世界に行ってしまいます。鍼灸師になって鍼灸を続けていく人は、1割いるでしょうか。
鍼灸師だと言うと、「手に職がある人は一生食べていくのに困らないからいいですね」と言われることがあります。
完全な勘違いです。生き残っている鍼灸師にしか出会わないからそう思うのです。私も生き残っているから手に職があるとして認知して頂けるだけで、ちょっとでも歯車が狂っていたら、「鍼灸師って食べていけないんですね」の側に入っていました。
数百万円と3年の歳月をかけて鍼灸師になるものの、就職先が見つかっても薄給。
私の頃(17年くらい前)は、「勉強させてもらうのに給料ほしいなんて贅沢だ」という話は珍しくありませんでした。こうした状況に未来を見出せず去って行く鍼灸師がいても仕方のないことでした。
さすがに今は違ってきていると信じたいです。違っていないのなら、私たちの世代で変える必要があります。
収入問題と国民皆保険は密接に関係しています。鍼灸に保険が適用される条件は限定的で、基本は自由診療です。国は鍼灸を保険の対象外にしています。
患者さんの自己負担率100%の鍼灸院は、患者さんが支払う額が大きいので最初の選択肢に入りにくい構造になっています。
国に働きかけ続けている大きな業界団体もありますが、国が動く気配はありません。それを待っていたら死んじゃいます(冗談ではなく実際にそうです)。
現実を考えるなら、民間でできることを始める方が早いです。鍼灸への保険適応の拡大に期待するばかりが道ではありません。
波に乗れない鍼灸師
鍼灸院の経営について、客観的に考えてみたいと思います。
私が開業したのは、インターネットが普及し始めたばかりの頃でした。もちろんスマホなどありません。パソコンを普通の電話回線につないでインターネットを使ったいた時代です。それから、ISDN、ADSL、光ファイバー、Wi-Fi…とネット環境も激変しました。
情報の流れがなめらかになって、鍼灸業界の風通りもよくなりました。そうすると他業種のノウハウが流入するようになりました。たくさんのコンサルタントも市場を開拓しに入ってきました。
目立つのはエステサロン系のノウハウです。鍼灸院の成功法則がエステサロンと被ってきています。エステで流行したノウハウが数年遅れでやってくるイメージでした。最近は、そうしたタイムラグはほぼ解消されています。
こうした流れで成長したのが美容鍼や不妊治療を行う鍼灸院です。高単価に設定できて、リピートを促しやすいカテゴリと言われています。
売上=単価×リピート回数
という基本の公式が鍼灸院でも当てはまります。しかしながら、鍼灸を医療と思っている鍼灸師にとっては、通院回数が多い鍼灸院が成功している、という論理についていけません。「治ったら通う必要はないのに…」と思うのです。
こうした医療倫理からするとハズれた話が通用してしまうのは、「新規顧客を獲得するのはコストがかかる」というビジネスの法則が適用されるからです。
鍼灸院を開業しても国が患者さんを紹介してくれることはありませんから、患者さんを集めるためには相応のお金、もしくは自分自身の労力を費やさなければなりません。そのお金を抑えようと思ったら通院中の患者さんを長く通わせる方が、経費削減になります。
ビジネスとしてはそれが正解かも知れないけれど…

トレンドに乗れる人は経営的に有利です。ブログを書いたり、Facebookをやったり、Twitterをやったり、Instagramをやったり…そういう情報発信が功を奏する時代です。
情報発信をどんどんやっていければ鍼灸師が幸せになるわけではありません。なぜなら、鍼灸師の幸せは臨床の中にあるからです。情報発信にやりがいを感じる鍼灸師は臨床以外にやりがいを見つけられた鍼灸師だけです。私もその一人なので情報発信に価値を感じています。
純粋に、患者さんの病気や怪我が治る手伝いをしたい医療肌の鍼灸師はどうすればよいのでしょうか。マーケティングに乗れなければ、孤立するしかないのでしょうか。
本当の成功者
月によっては毎週のように勉強会を開催しています。そうした機会を通じて思うのは、多種多様な生き方があるということです。交流を重ねるほどに、自分の狭い見識を思い知らされるのです。教えながら教わっています。
驚くのは、ウェブサイトを作らず、チラシもまかず、口コミサイトにも登録せずに、経営が成り立っている鍼灸師がいるのです。
そういう鍼灸師に出会うと、心底羨ましいと思います。私には真似できる自信がありません。やはり、私もトレンドが気になる鍼灸師なのです。
マーケティングの勉強会に行くと、次々と課題が与えられます。
・ウェブサイトを制作しなければならない
・ブログを書かなければならない
・インスタをしなければならない
・Facebookをしなければならない
・マーケティングを勉強しなければならない
しかし、「しなければならない」が増えるほど幸せから遠ざかります。成功から遠ざかっていきます。売上があっても「しなければいけない」に囲まれている状況は、本当の成功とは呼べません。
成功は売上で決まるとは思えません。キレイゴトを言うつもりは全くなくて、幸福感と収入は比例していませんから。成功者は、やりたくないことをせずに生きている人のように思います。
たとえば、1日1人の患者さんしか診なくても、食べていくのに困らず、日本中を駆け巡って、好きなことをして、本音で語り合える仲間に囲まれていたら大成功です。私は羨ましいです。
そういう人に「もっと集客した方が儲かるよ」とかは余計になりますし、「予約はLINEの方がいいよ」とか言っても、「どうやるかわからない~」とストレスを増やしてしまうだけです。
周りが必死にやっていることを、やらなくてもいい状況にある人は、成功していると思います。私はその域に達しそうにありません。毎日やることがあって必死です。成功から遠い位置にいます。
つづく…集客って本当に必要?
・はりきゅう養気院(群馬県伊勢崎市)
・はりきゅうルーム カポス(東京都港区/品川駅)
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