再現性とはなんだろう?
鍼灸がもっとも早急に乗り越える課題は再現性ではないでしょうか。この記事の中で使う「再現性」は次の2つの条件を同時に満たすものと定義しておきます。
①繰り返し同じ結果が得られる
②誰が行っても同じ結果が得られる
いわゆる「腕を上げる」は①を目指す世界です。①を極めていけば名人芸に達します。名人になればなるほど、他人には真似の出来ないものになっていきます。「私にしかできない」という技術は、競技の世界であるならば素直に賞賛できます。
しかし、医療という場においては、特定の人しかできない技術は手放しで喜べません。誰もが同じことができて、はじめて医療の進展と言えるからです。②の「誰が行っても同じ結果が得られる」を求める姿勢がなければ、鍼灸が市民の医療になることは夢のまた夢です。
鍼灸の保険適用、鍼灸師みんなで力を合わせれば日本でも夢じゃない。高い再現性を実現するのが早道。 https://t.co/DgODa9BUbV
— クリ助🌰人体と人生のツボ探し (@kuri_suke) January 6, 2020
鍼灸では、未だに①を追い求めてばかりです。②の重要性に気がついている鍼灸師が少なすぎます。鍼灸師が個性を伸ばすのは、再現性の担保ができてからでも遅くありません。楽譜通りに弾けないピアニストが自由な表現を追求しても相手にされないように、鍼灸も想定通りの変化を起こせない鍼灸師に自由を求めても、独りよがりであると言われます。
そう言われないように、私の取り組みを5つ紹介します。
1.ツボの位置をしっかり定める
ツボの位置は比較的自由です。国家試験で答えればよいのは、大まかな位置です。実技で示す必要もなく、文言で覚えておけば良いのです。
たとえば、「合谷」というツボ。教科書には「手背、第2中手骨中点の橈側」とあります。勘の良い人なら、すぐに気がつきますが深さの情報がありません。人間は立体的ですから平面的な情報だけもらってもたどり着けません。

「オフィスのあるビルは教えてもらったけど何階にあるんだ?」となりますよね。何階にあるのかは自分で考えなさいというルールなのです。「私はこう思う、僕はこう思う、俺はこう思う…」になります。
ある人気講師は「あなたが合谷だと思った所が合谷でいいんですよ」と「鍼灸は自由であっていいんです」と教えてくれます。肯定してくれる講師を嫌いになる受講者はいません。だから、ゆるい教え方の方が受講者に好まれます。
私は、ミリ単位でツボの位置を定めるべきであると考えています。それが合っているか間違っているかを判断するのは、臨床において再現性の条件である①と②を満たるかどうかです。私が定義した位置を社内メンバーやセミナー受講者と共有し、高い確率で同じ変化を導けたら妥当な位置であると考えています。
2.使うツボの数を少なくする
一度の施術で使うツボの数は少ない方がよいです。ツボを100個も使ってしまったら、どれが効いたのかわかりませんよね。
「ツボの複合的な作用がある」という反論があるかもしれません。確かにそれはあるでしょう。しかし、再現性を高めるには不向きな発想です。ただでさえ、鍼灸は複数の要因が重なる療術であるのに、ツボの数を増やしてしまったら絶望的になります。
ツボは単独でも効果があります。まずは、ツボ単体で考えやすいように臨床では無駄なツボを使わない工夫をすべきです。再現性が高くなれば、臨床においても期待する効果が得られやすいので、患者さんにとっても利が高いのです。加えて、患者さんの負担も少ないというメリットもあります。
3.特別なテクニックは使わない
ライバルの鍼灸師を出し抜こうとして、他の鍼灸師が真似のできないテクニックを追求したくなるものです。
それはそれとして、誰でもできる技法の範囲で結果を出すことが再現性を高めるには必要です。ただ、誤解してほしくないのは「下手な鍼灸師でもできる」という意味ではありませんし「練習の必要はない」という意味でもありません。「練習をすれば80%の人が到達できる」くらいの意味で書いています。
4.説明できないことはやらない
臨床経験が豊富でも難しいのは、自身の施術を解説することです。実際の臨床では、特別な事情がない限り、患者さんに患者さん用の説明だけで十分です。同業である鍼灸師に専門的な解説をする必要はありません。
ですから、ツボ選びに「なんとなく」があっても臨床は成り立ってしまいますし、中には「必要なことは手が勝手にしてくれる。君もそうなるように練習しなさい」という、解釈不可能な指導をする鍼灸師もいます。
誰もが認識可能な情報を共有しながら、解説を交えて施術することは難しいです。実際の臨床で行うかどうかは別として、第三者に解説できる心構えは大切にしています。
5.あいまいな言葉は使わない
再現性の条件②「誰が行っても同じ結果が得られる」のためには、用いる専門用語はしっかり定義しておく必要があります。
鍼灸においては、あいまいの最たるものは「気」です。どんな意味にも使える変幻自在の便利な単語です。定義のないまま説明をされ、「わかるだろ?」と言われても「何のことですか?」と返答するしかありません。

「気」という言葉を使ったらいけないとは言っていません。定義のない「気」という言葉は受け取る側の解釈次第であることを承知の上で使うべきです。そこに留意できなければ、再現性のある鍼灸が訪れることは永遠にないでしょう。
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