最近の症例をまた一つ紹介します。
3年前に交通事故に遭い、整形外科、整体、鍼灸院を経て私の鍼灸院にやってきた患者さんの話です。ちなみに性別は女性です。
整形外科で満足できなかったため、整体に行き、そこで頚をポキッとされてからなおさら痛みが強くなったようで、ある鍼灸院(県外)に半年通い、ある程度まで症状がなくなっていました。
来院された目的は「残っている症状をどうにかしてほしい」というものでした。この患者さんのように、ある程度よくなったのに何だかおかしいという状態、少なくないと思います。あきらめモードに入ってしまった患者さんも多く、「整形外科に行ってもどうせ異常がないって言われるだけですから…」とつぶやきます。
この患者さんの症状、いわゆる「むち打ち」です。
右の後頚部(うなじ)、肩甲骨の内側の上部に痛みがあり、右肩が常にこっている状態です。さらに、足の前半分にしびれ(右>左)があります。右半身も全体的に違和感があると訴えています。こんなにつらそうなのに、だいぶよくなったという話で、一番辛かった時は、寝たきりだったそうです。
しつこいようですが、ここでも活法。
碓井流活法で、このむち打ちをどう診るのか・・・。
ここに書くとネタバレしてしまいますが、特別に書きますと、手の緊張や脚の緊張を解くのです。運転中の事故なら衝撃の瞬間、体を衝撃から守るため手はハンドルをギュッと握りしめその衝撃をドカンと受けます。運転していない人は、脚で踏ん張って衝撃に耐えます。
この時に受けた衝撃は体に刻まれます。脳は確実に記憶します。恐怖と共に。しかし、この手と脚がほとんど注目されていないのは、痛みなどの症状が頚から始まることが多いからです。事故を起こすと、「頚に衝撃があったかどうか」。周りがそればかり気にするものだから、本人もそればかりを気にするようになってしまいます。私もかつてはその一員でした。
むち打ち=頚を痛める
いつのまにか出来上がったルールのようなものです。
これを破るのって実はとても勇気がいるのです。特に医学の世界では、みんなが言っていること、やっていることが正解になりやすいものです。みんながやっている方法で解決できないなら仕方ない、と医療者も自分の気持ちを整理しやすいのです。
でも、そういうルールに逆らえる人が突如現れるわけです。
この患者さんは運転席で事故に遭っているので、ハンドルを握った手に問題が残っているだろう、と推測できます。頚が右に回旋しづらければ右手に。左に回旋しづらければ左手に。
回旋のテストをしてみると、右回旋の時に違和感があり、可動域が狭いということがわかったのです。右半身の違和感と、頚から肩にかけての痛みが右側に集中していることを重ねてみても、右手に何かありそうです。

(活法研究会サイトより)
グルグルグル…
雑談しながら1分ほど。
「はい、もう一度、頚を動かしてみましょう。左からどうぞ。」
後ろ側から見ていてハッキリをわかります。グルグル…する前とは動きが違うことに。特に右回旋の時はハッキリと差が出ています。動画があったらお見せしたいくらいです(撮影していません)。
「後ろまで見えます!」
患者さんもハッキリとわかったようです。
あまりにもあっけなく変わってしまったことに患者さんは混乱している様子です。
「スゴイです、スゴイです」
と何度もつぶやいていました。
感動をかみしめるタイプの方のようでした。
常識から抜けたとき、スゴイことが起こるのか…
スゴイことは、常識を外れていることなのか…
こういう変化は、術者の方も驚くわけです。感動です。立場上、患者さんの目の前ではしゃくようなことはしませんが、心の中に住んでいるもう一人のクリ助は息が切れるほど踊っています(えらいこっちゃ、えらいこっちゃ♪)。これまで何度も同じ光景を見てきましたが、患者さんが変われば、感動もまた別ものです。
「スッキリしましした」
と患者さんは、変化をさらに語ってくれました。どうやら、頭の違和感までとれているそうです。頚の痛み、肩こりも感じなくなってしまい、次は何をしようか…という状態に。
他にテストをしてみると、後屈(上を向く)時に頚に痛みが出るようなので、右の肩甲骨を右下に押し下げながら動かしてみると動かしやすいことがわかりました。肘に一瞬、ポンと。
「上を向けます」
と、患者さんは興奮気味です。
まだ、時間はたっぷりあります。施術を始めてからまだ5分も経っていませんから。
下を向く時の違和感もすぐになくなりました。
最後に、足のしびれにアプローチして終わりました。

(活法研究会サイトより)
ここまで鍼も灸も使いませんでした。今回のように、あっけなく症状が抜けてしまう場合、鍼や灸を使うタイミングを逃すことがあります。鍼灸院なのに鍼灸を使わない(しかも鍼灸専門と言っている鍼灸院で)、という意味のわからないことがたまに起こりますが、気にしないようにしてます。
「よくなったら、それ以上いじってはいけない」
これも活法の師匠の言葉です。
これまでブログに症例を書くことに積極的ではありませんでした。症例を書くときって、「順調に治った」例になってしまうわけです。そんなのばかりだと、うさんくさくなるかなと心配があったからです。
自慢したい気持ちはありません。私の力ではありませんから。
ただ、特別な方法を知っているだけのことであって、私には特別な工夫がわるわけではありません。技術のおかげなのです。
何年も苦しんでいた症状が、わずか1分の施術で抜けてしまう、という現実を目の当たりにすると、言いたくて仕方なくなります。そういう気持ちになってしまうのです。
活法の師匠は「付き添いの方がトイレに行っている間に施術が終わってしまった」というエピソードを語ったことがあります。“大”ならあり得るでしょうが“小”の方です。
すばらしい技術は碓井流活法に限りません。
伝統的な鍼灸の中にもとんでもない技術があります。
しかし、このむち打ちの症状を抜く技法に関して、これ以上のものがあることが想像できません。あったら「教えてくださいっ!」と懇願します。


コメント
いかなるすぐれた技術があろうとも公開されなければ、優れていると評価されないし、後へ続こうという人も出てこないのではないか・・・私は、そう思っています。
自慢話で結構じゃないですか?
でも、そんな風には感じませんが。
確かに、素晴らしい技術なのですから。
クリ助さんは、それを解説できる優れた技能もお持ちなのですから。
>たけさん
応援ありがとうございます!
実は、症例をもっと書いた方がいいかな、と思うきっかけはたけさんのブログを読んだからなのです。自慢気が全くなく、素直に技術(とその反応)を楽しんでいるというか、そういう空気って気持ちいいなと思ったのです。これからも症例は時々書いていこうと思います。
事故してからむち打ちになりどこに行っても直そうとゆうより金儲けばかり世の中にはクリ助さんみたいな鍼や灸整体やカイロの医者が求められると思います
>ともさん
7年前の記事ですね。懐かしい記事にコメントありがとうございます。むち打ちの患者さんは、現在でもよく診ております。