活法を学ぶと鍼灸に大きな影響を及ぼす、というのは間違いありません。
活法はが得意とするところは筋肉学。
誤解を招かないように説明すると、ここでいう筋肉学は、(死体を切り刻んで生まれた)解剖学とは全く別物です。生きている人間の筋肉はどういうものなのか、そいういうものを活法から知ることができます。その中でも、私は特に筋肉の連動性に着目しています。今まで勉強してきたものになかったからです。
スポーツや武術の経験者は感覚的に知っていることかもしれません。しかし、上手な人ほどわかっているかといえば、そんなことはありません。むしろ、わかっていないのにできる人ほど、筋がよいとか、センスがあると言われてしまうのではないでしょうか。
そういう無意識の中に潜む「体を操る理(ことわり)」を活法の筋肉学と考えています。理をうまく利用して筋肉を調整するのが活法です。
筋肉を調整すれば関節も調整されます。その結果、身体の動きが改善されます。痛みを伴う症状であれば、動くことで痛みが軽減したり消失したりするわけです。
不動則痛、動則不痛(動かなければ痛み、動けば痛まない)
■症例
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ここで、症例があった方がわかりやすいので一つ紹介します。
腰痛と肩こりを訴える男性の患者さんがいました。

まず、腰痛に対して。
右の腰は動いた時に痛い。
左は違和感があり(自分で)押すと痛みがある。
痛みの場所は同じでも、左右で性質が違うわけです。
状態把握のテストとして、イスに腰掛けた状態で体を前に倒してもらいました。すると右に痛みが出ました。左には変化がありません。明らかに痛みと動きに関わりがわるわけです。
右の腰 → 座位の前屈で痛みが増大
左の腰 → 座位の前屈で痛みが変化しない
腰の右と左、同じアプローチでいいのでしょうか。
それぞれに合った方法があるはずです。
前屈に対して、2通りの考えがあります。
前屈をしたら痛みが出た
できないから痛みが出た
前者の場合であれば、痛みを取り去ることで問題を解決しようとします。ところが活法では、前屈ができるようにしてしまえば痛みは出ない、と考えます。つまり、後者の「前屈ができないから痛みが出た」と考えるのです。
(問題A)前屈が痛みでできない → (解決法a) 痛みを取るように
(問題B)前屈ができないから痛む → (解決法b) 前屈ができるように
考え方が全く違うことがおわかりでしょうか。
どちらの考え方が優れているというわけではなく、どちらの発想も必要だと思います。活法的なBを合わせて考えることで、患者さんの状態は劇的に安定化します。それは、動きが正常化しているからです。痛みだけ取った場合、症状を招いた動きのクセが残るかもしれません。そのクセが再び痛みを招くことがあります。
■施術
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<右腰に対して>
座位での前屈可動域を広げるため承扶ショウフ。
<左腰に対して>
立位の保持を安定化させるため殷門インモン。
同じ経絡上ですがツボは違います。
(同じ路線上ですが駅は違います) ←鉄道にたとえると
症状から経絡を割り出せたとしても、どの経穴(ツボ)を使ったらよいのかという問題が残ります。その一つの解決策として活法的思考が大変役立ちます。承扶と殷門は、活法的思考により導き出されたツボです。
<右の肩こり対して>
さて、もう一つの訴えである肩こりはどうするのか。
実は、上の2つのツボを使った段階で、症状は激減していました。この肩こりも詳しく説明しますと、右の肩が前方に出てしまい、それに伴ってコリ感が出るというものでした。胸を張ろうと思っても右が後ろに引けないというものです。
腰の可動域を変化させたことで肩の位置も変化したわけですから、腰痛と肩こりは一つの症状だったわけです。種明かし的にいえば、股関節と肩関節が同時に動きを失っていたことになります。股関節と肩関節の連動を知っていれば、すぐに気がつきます。
実際のところ、肩に2割くらい違和感が残ってしまいました。別の問題が関係していると思い、右の仙腸関節をゆるめる手技を加えました。同時にゆるむのは肩胛骨内縁です。それで取り切れない一点(膏肓コウコウ)があったため、上肢の螺旋の連動系を整えました。これで、症状はほとんど消失しました。
■筋肉学と経絡学のコラボによるメリット
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1.治療穴(ツボ)の選定を助ける
2.治療穴(ツボ)を少数に絞ることができる
3.改善後の安定化を期待できる
筋肉学と経絡学で思い付くのは・・・
そう、経筋学です。(鍼灸師でなければ知らないよね?)
あるわけです、そういうのが。
この症例で、腰痛と肩こりが同時に緩解したことは、『黄帝内経霊枢 経筋編 第十三』の記載と一致しています。経筋編には、「痛むところが治療穴」と書いてあります。この単純なツボ選びの法則からして、経筋を「筋肉の連動系」と考えるのは飛躍しすぎなのでしょうか。
活法は日本生まれの技術です。
活法の理論が、中国の古い医書に見当たらないことに何の問題もありません。活法は鍼灸学では説明しきれない叡智を抱えている、ということなのですから。


コメント
読んでいる時間を忘れてしまう内容ですね!!
前屈ができないから痛む・・・
この発想感激です
承扶と殷門にそのような違いがわかるのは活法からの発想なのでしょうか・・・不思議 ウキウキ
次回のブログも勉強しながら待っています
(今3年生なので、最終実技試験や国家模擬試験に奮闘中ですヽ(^o^)丿)
> 夜間学生さん
私も感激したのです、「前屈ができないから痛む」に!
なので、その感激をおすそ分けです。
承扶と殷門の使い方を腰痛の質で明確に使い分けておられる鍼灸師の方、もしかして少ないかも、と思ったのでこの例を出しました。
使い分けに関しては、活法からヒントをもらいました。同じ前屈であっても立位と座位で筋肉の使い方って違うわけです。となれば、動きを止めている筋肉だって違うわけですよね。どこが動きを止めているのか探ります…アレコレと。そんなふうに分析していくと、座位で上体を前屈みにするとき、承扶に硬結があると難しくなることがわかりました。
また、承扶を緩めて肩こりをラクにするという方法が活法にはあります。デスクワークなどが多い方は、常に承扶を圧迫しているわけですから、肩こりを起こしやすいのです。
肩こりとPCワークの問題が取り上げられるとき、そのほとんどが上体の姿勢ばかりを指摘しています。しかし、活法から考えると、動きが止まった坐骨に問題があることがわかります。これを実際に実演すると、ほぼすべての患者さんが、肩こりの変化に感動されます。