鍼灸師とお産-第2章(2)のつづき
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クリ太の出産の時を思い出しました。
あの時は大変でした。
「産まれそぉー!!」
と、クルマの中で叫ぶクリ子。
本当に産まれたらどうしよう…と冷や汗をかきながらも冷静を装いハンドルを握っていたあの日。
今度は違います。
普通のドライブ♪
「ミッドナイトドライブだね」
と面白くもない冗談を言いながら、クルマを走らせます。
クリ子との会話も普通にできます。まだ豹変していません。
クリ子の座席も今回は違います。
今回は助手席。
後部座席に乗ろうとしたクリ子を引き止め、助手席を指定しました。
後部座席で「産まれそぉー!!」と叫ばれると、そのたびに後を振り向きたくなって運転に集中できなくなるからです。こんな配慮までできてしまう私ですが、着ているのはパジャマ。
ところで、クリ子はなぜ後部座席に乗ろうとしたのだろう…?
TVドラマで、産まれそう的な妊婦さんが乗っているのは後部座席。
タクシーであることが多い気がします。
ある妊婦さんが突然、苦しみだし、お腹を押さえて座り込みます。
たまたま、そこに居合わせた若い男性がタクシーを拾い、病院へ連れていきます。
私の頭の中にはベタなシーンが巡っています。
このまま妄想を続けてみます。
男性は気がつくと「旦那さん」と呼ばれ、否定しようにもその間がありません。
「違うんです、私は…」と言いかけたところへ、
「さぁさぁ、こっちです」
と分娩室まで案内されてしまいます・・・。
と、この時はこんなことを考える余裕がありました。
もちろん、それは助手席のクリ子が余裕だったからです。
現実に戻って、隣のクリ子に話かけます。
「どんな感じ?」
すると、
「重だるいだけ」
と返事が返ってきました。
午後2時40分
25分のドライブはクリニック到着で終わりました。クリ子は自分でクルマから降りて、入口のインターホンに向かいました。クリ太を乗せた両親のクルマは到着していません。赤信号で切り離されてしまったからです。
クリ太はどうしているのだろう…
(つづく)


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