肉体に還る

冬が終わりました。春ですね。
この冬は、私にとって2つの出来事がありました。

一つ目は、スキーの再開。

このブログで何度か様子を報告させていただきました。息子のクリ太にスキーをやらせたいという親心が始まったスキーは、いつしか自分の再挑戦の色が濃くなってしまいました。6年ぶりのスキーでしたが、まともにスキーをするのは10年ぶりくらいです。つまりは鍼灸院開業と引き替えにスキーをやめたのです。やめざるを得なかったわけです(色々と大変でしたから…)。

kurisuke_ski_01

2つ目は、父の他界。

父が病気で入院中であることを、ブログに書かせていただいたことがありました。父が息を引き取ったのは2月が終わろうとする日の昼過ぎでした。父の最期に付き添うことができました。仕事中だったので、患者さんの理解と協力がなければ難しかったです。ありがとうございました。葬儀の日は、セミナー講師の日と重なってしまい、多くの方に迷惑をかける結果となってしまいました。詳しい事情は伝えておりませんので、このブログを通じて報告させていただきます。

先日、四十九日が終わって一段落しました。改めて「父がいない」現実を受け入れていかなければなりません。幼い日の私にとって、父はヒーローでした。カッコイイ姿を見せてもらいました(私の目にはカッコイイと映った)。今度は、私が息子にカッコイイ姿を見せたいものです(息子の目にカッコイイと映ればよし)。

スキーもカッコイイところを見せたくて再開したところがあります。

休診日になると、朝早く起きて息子のクリ太をスキー場に連れて行き、午前中で切り上げて帰りに父の入院する病院に寄って帰る、というパターンがよくありました。

父は孫のスキーデビューをとても喜んでいて、クリ太の滑る様子を動画で観て喜んでいたのです。クリ太のことを実力以上に褒めるので、クリ太の気分も上々。孫の成長を喜ぶ父の姿を見て、私も満足でした。

ある日、「クリ太のスキーをするビデオを持ってきてほしい」とわざわざ電話してきたことがありました。あの時から、父は死期が近いことを知っていたのだと思います。大きな画面で見せたくてノートPCを病室に持ち込みました。映像を観た父は満足そうでした。

いろいろな意味で、今年の冬は肉体に還ることになったと思いました。

生きているということは、自分の肉体と向き合うこと。鍼灸師の仕事は、よりそれを意識することになります。患者さんの肉体に向き合い、患者さんにも自身の肉体と向き合うように仕向けていきます。肉体が発するメッセージ(痛み、麻痺、不快感など)に向き合うことを求めていきます。

鍼や灸をするということは、単にツボを刺激することではないと思っています。ツボは「病気を治すスイッチ」のように思われている方もいらっしゃいますが、機械的なものではなく、ツボそのものが一つの生命体のようなものだと私は思っています。いくつもの生命体が折り重なって、調和しながら、一つの体が営まれています。

ツボにはそれぞれ表情があり、機嫌がよい時も悪い時もあります。みんなが気持ちよくなれるように、いくつかのツボに鍼や灸を使って語りかけていきます。うまく行くと、全体にまとまりが出て、ツボの住み処である体も機嫌がよくなるのです。

知識を蓄えて指先を器用にしただけで鍼灸が上手くなるものではないと思います。いかにして、患者さんの肉体が訴えているものを、ツボを通じて“生々しく”受け取ることができるかどうかが重要だと思っています。“生々しさ”は、書に記した時点で失われてしまいます。鍼灸師一人一人が、自らの肉体を通じて受け取るしかありません。

これまた生々しい話ですが、鍼灸師も患者さんの肉体が発する情報は、自らの肉体でもって受け取らなければなりません。この生々しさこそ鍼灸の魅力であると思います。ただし、魅力であると同時に、鍼灸師の「個」を強く問われる難しい医療だと思います。わかりやすく言えば、同じことをしても鍼灸師によって効果が違うことがあるのです。

学術より、ずっと難しいのが「個」を知ることです。
一番見えないのが自分だからです。

何はともわれ、いろいろと一段落しました。

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コメント

  1. どらきゃ より:

    クリ助先生、おつかれさまです。
    人には縁があり、つながりがあり、絆がありますよね。
    鍼灸はそこに触れてしていくものだと教わりました。
    同じ場所に同じ鍼を使っても効果は違う。
    学でも術でもない部分がとても大切だよと恩師に言われました。
    もちろん学と術も大切ですが。。。
    ぎりぎりでしたが、国家資格試験を両方パスすることができました。これからもブログを通してたくさん勉強させていただきます!

  2. クリ助 より:

    >どらきゃさん
    国試合格おめでとうございます!
    鍼灸師仲間として、今後もよろしくお願いしますね。
    鍼灸の奥深さを一緒に楽しんで行きましょう。そして、多くの患者さんに喜んでいただけるような臨床力を一緒に磨いていきましょう!

  3. いなかもん より:

    素敵な文章で何度も読み返してしまいました。父と共に闘病し、その経験と父の他界をきっかけに、鍼灸師を目指しました。クリ助さんと同じ学校で学び早くも三年生です。
    父との闘病生活では、相手を見つめ理解していく事は、自分を見つめている事なのだ気がつきました。
    今度はこのまなざしを、患者さんに向けて生きていきたいと思います。
    来年無事に国試をパスして、家族の下に帰りたいと思います。

  4. クリ助 より:

    >いなかもんさん
    コメントありがとうございます。同じ学校ですか!そして、来年には鍼灸師ですね!
    好きな言葉に「おかげさま」があります。師匠の話を聞く前は、なんとなく使ってしまっていた言葉でした。でも、「お陰」には、過去に出会った人たち、今交流のある人たち、また気が付かないうちに支えてくれている人たちが、また、自分の存在までつなげてきてくれた先祖達が、自分の影にはいつもいるんだ、ということがわかりました。
    もし、自分が誰かに「おかげさまで」と感謝されたなら、その言葉は、自分の「お陰」に向けられているものだとわかりました。自分も鍼灸師という職業を通じて患者さんの陰になれるようにやっていこうと思っています。
    いなかもんさんのお父様はいつも陰から守ってくれていますね。国試も見守ってくれると思います(笑)

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