■本当は誰も知らないツボの数
ツボの数は誰も知りません。
鍼灸師でもわかりません。ビックリされる話かもしれませんが、一生かけても全てのツボを知ることは無理です。それくらい奥深いものです。時に途方に暮れてしまいます…。
「ツボはいくつあるのですか?」
と、患者さんに訊かれた時は、無難に答えてしまいます。話し出したら終わりませんから。
「学校で習うのはだいたい350くらいです」と、こんな感じの返しです。臨床の現場ではアッサリ派のクリ助は、ブログになるとこってりです。
■ツボで治る確率
学校で習うのは名前と位置。そして、解剖学的な特徴です。鍼灸師は安全に鍼や灸をできることを国家免許は保証してくれますが、野球で言うところの打率は保証してくれません。試合(臨床)に出て、全く打てなければ戦力外通告が来ます。打者なら3割打てれば一流ですが、鍼灸師が3割では食べていけません。
打率を上げる方法はあります。もっとも簡単なのは得意を狙うことです。ストレートしか投げて来ないピッチャーとだけ対戦すれば打率が上がります。変化球は、その球種を得意としている鍼灸師に任せればよいのです。
どんなに頑張っても私には無理な症状があります。改善しない時、私の限界であっても鍼灸の限界ではありません。「治るか治らないか?」という問いに、私の技量で答えているに過ぎません。
とはいえ、私の鍼灸院にやってくる患者さんにとっては「私の鍼灸=鍼灸」ば場合も少なくありません。鍼灸師がすべてのツボに出会えないように、患者さんもすべての鍼灸師に出会うことができないからです。
誤解のないように強調しておきたいのですが、「知っているツボが多いほど腕がよい」とは言えません。多くの食材を使う料理人が腕がよいとは限らないのと同じです。数少ない食材で美味しく作れることも腕ですよね。私は料理はしませんが、料理と鍼灸は似ているかも、と思うときがよくあります。
ツボの研究とは食材研究です(と私は思っています)。
■ツボの研究って何をする?
ツボの研究とは具体的に何をするのか、興味があればお話しします。興味がないと言われてもせっかくなので書きます。「人の動きに注目したツボの研究」に限った話ではありますが公開します。
まず、ツボに鍼や灸をした時にその効果をどうやって判断するのかを知って頂く必要があります。究極のところでは、「感覚でわかるだろ」という天賦の才で判断する鍼灸師もいます(私には手の届かない話)。学術的には、脈(の打ち方)、舌、お腹の変化で判断するのが一般的です。もちろん、患者さんの証言(痛みの変かなど)も判断材料になります。
動きの変化で判断するのも一つの方法です。特に運動器系の疾患(肩痛、腰痛、膝痛など)には、症状の改善と直結しているので患者さんもわかります。どこかのツボに鍼や灸をして、関節の可動域に変化が起こるか、感覚に変化が起こるか、を確認していきます。
痛みのある所に鍼や灸を使う場合もありますが、私が臨床的に重視しているのは、痛みのある場所と離れたところにあるツボです。わざわざ離れたツボを使うのには重要な意味があります。鍼や灸には鎮痛作用があるので、鍼灸をした局所の痛みは軽減してしまいます。それ自体がスゴイわけですが、動きに注目しようとすると沈痛効果は邪魔になります。痛い場所のみが動きを制限していたのなら問題ない話ですが、そうでない場合(の方)が多いのです。つまり、痛みの位置とは別に問題が潜んでいることが多いのです。
■本当に悪いヤツは表に出てこない
痛みの局所に鍼をして痛みが軽減した後に、動きを制限していた黒幕を捜すのは難しいです。刑事ドラマでよくあるパターンですが、あえて犯人を泳がせて黒幕にたどり着くようにしますよね。捕らえた犯人が口を割らなければ黒幕にはたどり着けませんから。
患者さんの症状を根本から改善しようとするなら、黒幕を捜し出さなければなりません。どこに異常や負担があり、それがどの部分に影響しているのか、と関連性を探します。解剖学的な関連とは別次元のことです。筋肉のつながりや神経のつながりでは説明できない相関関係が山ほどあります。体の動きを統合している脳まで意識すれば、離れた関節、離れた筋肉が協調していることが想像できると思います。脳の仕組みを解明できなくても、ツボAを刺激したらツボBに変化が起こる、とう現象は拾い集めることができます。
■脳科学者が気がつく日
脳科学がツボの働きを証明するのか、ツボの研究が脳科学を発展させるのか、どちらなのかわかりません。今のところ、ツボに注目しているという脳科学者は聞いたことがないので(いたら教えてほしいです)、こういった話は非現実的です。ツボ刺激が脳にどのような変化をもたらすのか、100年後の人類は知っているのかもしれません。
ツボの数は350くらいかもしれませんが、使い方は無限にあります。時と場合、そして人によって作用が変わることがあります。「けっこうです」という言葉が、承諾、遠慮、拒否、と、場面に応じて意味(意図)が変わるように、ツボも変化します。一つの例では、ツボに指圧する場合でも、押す強さで気持ちよさが変わりますよね。同じ部分を押すにしても、上手下手があります。
このように考えると350という数はアテになりません。無数のツボがあり、無限の可能性があります。そこに限界を作ってしまうのが私たち鍼灸師です。もちろん、作りたくはないわけですから、ツボの研究をするわけです。
東洋医学というと、「信じる、信じない」と、まるで信仰の対象のように考えている方がまだまだ多いです。「なぜ効くの?」という問いに現代の科学では満足な回答が出せないからだと思います。「なぜ生きているのか?」に答えを出せないまま、私の心臓は拍動しています。東洋医学も答えを出せないまま、現代まで生き続けています。生きている理由があるならば、東洋医学にも現代まで残り続けている理由があるはずです。


コメント
はじめまして。
鍼灸の国家資格をとって2年目の新米鍼灸師のふっしーといいます。
ブログを見ていろいろ考える事も多く勉強になります。
ブログ更新頑張ってください(*^^*)
>ふっしーさん
コメントありがとうございます!
更新がんばりますね。好きなネタを取ってあるので時間ができ次第、次の記事を書きます。