膝の眼と書いて「膝眼(しつがん)」。
鍼灸では、膝のお皿のすぐ下にできる凹(くぼ)み指してこう呼びます。内側が「内膝眼」、外側が「外膝眼」です。このツボは、膝の痛みのよく使われるツボです。変形性膝関節症でよく使われるツボだと思います。
ここに鍼をすると、膝蓋骨という「膝のお皿」の動きがよくなって膝の動きがスムーズになります。私もこのツボを使って膝が痛いという患者さんの対応を幾度となく行ってきました。

今回のテーマは、膝眼そのものが痛い時にどうするかです。膝眼にダイレクトに鍼や灸をしても痛みが軽くなっていくとは思いますが、もう一歩先のことをしようと思ったら、なぜ膝眼が痛くなるのかを考えなければなりません。
活法の考え方を借りて行うのが古武術鍼法。この視点から膝眼の痛みを取る方法を考えてみましょう。まず、痛みがある関節や筋肉は、動きが悪いところと考えます。動きが良くなれば痛みが取れていく、という発想で痛みに対応していきます。つまり、膝眼はどうしたら動くようになるのだろうかと考えながらツボを探すのです。
そもそも関節というものは、いつも円を描きながら動こうとしています。その方が効率がよいからです。直線的な運動はほとんどないのです。頭をボリボリとかく指も関節を中心に円を描いています。脚はもっとわかりやすいと思います。高めのイスに腰掛けて足をブラブラ前後にすれば、足は膝を中心にして円を描いています。歩行時も、膝を中心に見れば同じことが起きています。

こうして円の軌道を考える時、中心と同じくらい大事なのが向こう側です。身体は、どんな姿勢でも大丈夫なように、中心を挟んでこっちと向こうでいつも均衡を保とうとしているからです。腕を挙げる動きは一見すると、肩の関節を軸としたメトロノームのような動きに見えるかも知れません。実際は、肩関節を中心に、腕と肩甲骨が均衡を保つように動いています。ですから、肩甲骨の動きを止められると腕は自由に動かせなくなります。
膝に戻ります。膝眼が痛い時、膝蓋骨(膝のお皿)が上方(太ももの方)にピョコピョコとスムーズに動かなくなっています。膝の屈伸を頭に描きながら膝眼の向こう側を想像すると、太ももの裏側になります。実際に太ももの裏側に触れてみると、膝裏の上の方に指を四本横に並べたくらいの位置に硬さが見つかります。筋肉でいうと、外側が大腿二頭筋、内側が半腱様筋、半膜様筋の上になります。

これらの筋肉は膝眼と繋がっているわけではありません。膝眼とバランスを取ろうとするときに収縮して緊張するところです。太もも裏の筋肉の、この位置をだけを意識的に緊張させようと思っても(筋肉全体が硬くなってしまって)無理ですが、膝の動かすと自動的に身体は筋肉の細部をコントロールして分部的緊張をつくり出しています。
膝眼に痛みがある時、筋肉に用が済んだはずの部分的緊張が何かしらの理由で筋肉上に残ってしまった状態なのです。患者さん本人は自覚できないものです。この位置を眼裏(がんり)と名付けました。内膝眼に対応するのは内眼裏、外膝眼に対応するのは外眼裏となります。
こうした対岸の問題は、施術者が指摘して初めて気がつく場合はほとんどです。ですから、できるだけ患者さんに伝えるようにしています、「ここが原因ですよ」と。
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