■ランナーズニーの原因
鍼はスポーツの味方です。
「動きとツボの関係」について1つの症例と共に紹介します。取り上げるのは、ランナーに起こりやすい膝の外側の痛みです。
いわゆる「ランナーズニー」と言われている症状で、専門的には「腸脛靱帯炎」と言います。腸脛靱帯(ちょうけいじんたい)は、太ももの外にあります。イラストをご覧いただくと分かるように、とても長い靱帯です。この靱帯が炎症を起こすと、膝の曲げ伸ばしが痛くて出来なくなってしまいます。特に、伸ばす瞬間に痛みが強くなります。
この症状を最近診ました。その患者さんは、普段は10kmほど走っているのですが、距離を20kmに伸ばしたところ、10km過ぎから左膝の外側に痛みが出てしまいました。そのまま我慢しながら20kmを走り切れたものの、その翌日には普通の歩行でも痛む状態になってしまったのです(詳しい症例解説≫養気院)。

腸脛靱帯の痛みに有効なツボが足首にあります。解剖学図で見ると、靱帯は膝で止まっているので、足首は関係ないように見えます。しかし関係大なのです。
体の動きは解剖学ではわかりません。筋肉や靱帯の連結だけ追っていても動きは見えてきません。動きは骨や筋肉の単位で生じるものではありません。脳で作られた全体象をたどるように各部位が動いているのです。筋肉の状態は常に脳に送られ、脳が全体として調和のとれた動きとなるように筋肉の動きを統合しています。
■ランナーズニーに効くツボ
患者さんの症状を絵にするとこうなります。「ランナーズニー」の典型です。日常の屈伸で痛みを感じる状態です。別件で通院していた患者さんだったため、走った翌日という好条件で治療をすることができました。

こうした症状では、患部の炎症を沈静化させるためにアイシングをしたり、炎症が落ち着いてきたら温めたりと、その患部にアプローチすることが多いです。そして、痛みが消えたら、走り方の癖を直したりしながら、再発防止に努めます。
私の方法は違います。真っ先に癖の修正に取りかかります。癖が取れると、すぐさま痛みが軽減することがわかっているからです。「痛いから動かない」と考えることが一般的ですが、「動けるから痛くない」ということも、また真実です。古武術では言われていることですが、医療の世界にはこうした発想がまだ浸透していません。そこで、「不動則痛(動かなければ痛む)の原理」と名付けて普及活動中です。

実際の治療では、足首の外側にある申脈(しんみゃく)というツボを使用しました。経絡(けいらく)を知っている専門家からすると、申脈が所属する「足の太陽膀胱経」は大腿後側を通っているので「おかしい」と思われるでしょう。でも、間違っていません。動きで考えると経絡が基準とはならないからです。
申脈は足首の外踝にある大腿筋膜張筋と連動しています。やってみるとわかります。申脈に鍼をすると大腿筋膜張筋のある大腿の外側が緩みます。繰り返しになりますが、構造的(ハードウェア的)につながっているわけではありません。外踝の下が緊張すると大腿筋膜張筋まで緊張するという連動システムをソフトウェアとして体内に備えているのです。

手首にも中殿筋に作用する養老(ようろう)という居酒屋のようなツボがあります(それを言ったら「ツボ八」もありますが…)。中殿筋は大腿筋膜張筋の奧に隠れています。この中殿筋の緊張も大腿筋膜張筋を緊張させます。
つまり、大腿筋膜張筋は、下からは足首(外踝)、上からは中殿筋によって緊張が誘発させられます。興味深いのは、足首(申脈)と手首(養老)が大腿筋膜張筋に関わっているということです。不思議なようですが、実際にそのツボに鍼をしてみると実感できます。
■連動ルート
この話には続きがあります。
申脈が大腿筋膜張筋に作用するなら、申脈に作用するツボだってあります。これは、2014年5月14日の「外踝(そとくるぶし)の痛みに足臨泣(後)」で解説しています。本日の記事と重ね合わせて頂くと、足臨泣の後方にあるツボと、外踝(申脈)と、大腿筋膜張筋が連動する関係であることがわかります。

このように、筋緊張が伝わるルートは経絡と別に存在しています。経絡と類似している点があるため、経絡ルートを基本にしても一定の効果はありますが、限界がすぐに見えてきます。運動器疾患を得意とする鍼灸師が経絡から離れていったり、否定している気持ちがとてもよくわかります。
ここで紹介しているのはトリガーポイントとは違います。トリガーポイントは「痛み」にフォーカスした治療点ですが、ここでは「動き」にフォーカスした治療点です。
私は3つの視点から症状を診ています。
1.肉体の構造(解剖学的な分析)
2.筋肉の連動(動きの分析)
3.骨格と内臓との関わり(経絡的考察)
この症例では2が主となっています。1を主とした症例は活法研究会のブログ(活レポ)に「ガニ股歩き」に書きましたので、ぜひ覧下さい。3はいずれ解説します。
■このツボ!検索
ツボ日記で紹介しているツボは、左サイドバーの記事検索で「このツボ」と検索すると一覧が出てきます(PC版のみ)
■勉強会
募集中だった古武術鍼法<脊柱編>のC日程(2014年11月30日~12月1日)は満席となりました。たくさんのお申込みありがとうございました。次の四肢編は来年の5月以降に予定しています。活法(整体)の勉強会は、まだ間に合います。
鍼灸師だけの整体勉強会
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・整体入門 肩こり編 12/14(日)~15(月)
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