この記事は専門家向け情報です。

『温故知新』で担当している連載、今月(2016年1月15日発刊)のテーマは「教科書のツボが効かない理由」です。過激なタイトルになってしまいましたが、これには理由があります。
実際の現場はいかがですか?学校や経穴の専門書が示す通りにやって、同じ効果が出たらみんな名人ですよね。鍼灸のポジションが今のままであるはずがありません。もっと高く評価されているはずだ、という意味です。
同じ(ような)ことをしても、同じ成果が出せないのが鍼灸というものです。これは人が行うことですから、バラツキが出るのは仕方ありません。鍼灸を受けたことがない人は、「鍼灸は効果があるの?」という素朴な疑問をお持ちだと思います。ネットで検索しても「効果がある」と「効果がない」の両方の書き込みが見つかるはずです。
「鍼灸は効果があるの?」という質問は、「イタリアンは美味しいの?」という質問と全く同じだと思うのです。父が生前、「イタリアンはマズイ」と言っていました。最初に食べたイタリアン料理が不味かったそうです。それで、父の中で「イタリアン料理は食えたもんじゃない」ということになってしまったのです。

鍼灸でも同じことが言えます。最初に受けた鍼灸治療の印象が悪ければ、鍼灸に否定的になるでしょう。それは仕方ないことです。受けたこともないのに否定する人をたまに見かけますが、それは論外です。
一言で済ませば「鍼灸は腕次第」ってことになるのですが、患者さんから必要とされる鍼灸師とそうでない鍼灸師の“違い”をプロである私たちが分かっていなければ、先に進めません。私はその“違い”に気が付くことができたから、今があります。
「技術だけじゃだめ。人間性が大事!」とか言われることがあるのですが、私がレストランを選ぶ時シェフの人間性で選んでいません。
レストランに限った話ではなく、サービスを受ける際は、担当者が普通であればOKです。いきなり特別な人間性は期待しません。リピートする時の基準にしても、「あの人の人間性は素晴らしい!」と思うからではありません。
「プロならではだよな~」と思えるかどうかで決めています。みんなそうだと思うのです。自分で出来そうなことにわざわざお金出したくないですから。
「人間性は仕事に関係ない!」という意味ではありません。機転の利く対応や温かい対応をしてもらったら、そのお店のファンになります。人間性はとっても大事だと思っています。
でも、「鍼灸が効くか効かないか」という話は、人間性の話に行く前に段階です。ここを踏み外してしまうと「人間性がどうのこうの」どころではありません。教科書通りにならない理由を説明できる鍼灸師とそうでない鍼灸師には明らかな差があると私は思っています。そこに気が付かないと、いつまでも「経験の差」という意味不明な理由で、能力差を片付けてしまいます。
鍼灸師は万能である必要がはないので、できる分野とそうでない分野があって良いと思います。私にも苦手な分野があります。同じ「できない」でも、できない理由を説明できるのとできないのでは大きな差です。そこを鍼灸師が理解し、できる範囲(できそうな範囲)で仕事をしている限り、「効かない」なんていう話が出ることはないとはずです。
鍼灸師の養成校は、国家試験に合格させることが主旨ですから、臨床に出る資格を提供したらゴールです。卒業生に対して学びの場を提供している学校もたくさんありますが、あくまでもオプションです。卒業後は、職場で、その職場の流儀を教えてもらうか、開業してセミナーに足を運ぶしかありません。私も例外ではなく、あちこちに足を運び、現場に必要なこと(患者さんが求めていること)を学んできました。
今月号の『温故知新 Vol.20』の記事は、そんな想いで書きました。
≫温故知新オンライン
■鍼灸学校では教えてくれない技術と作法
・活法1日体験会<上半身編>(2/21) 定員15名(先着順)
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