鍼灸師の上手さに基準はあるのか

■免許の意味 

鍼灸の習得は簡単なのでしょうか、それとも難しいのでしょうか。

何事もそうであるように、鍼灸にも上手と下手があります。でも、安心してください。鍼灸師を名乗れるのは、3年間の技能訓練を経て、国が行う筆記試験に合格した者のみだからです。鍼灸師なら誰でも安全に鍼灸施術ができます。

免許証

安全は当たり前で、勝負どころは効果の高い鍼灸ができるかどうかです。鍼灸師の免許は「効果の保証ではなく安全の保証」をするだけです。効果は鍼灸師一人一人に委ねられています。

では、効果の高い鍼灸とは何でしょうか。
上手下手を分ける基準は何でしょうか。

■教科書の役割

鍼灸師であるならば「効果の高い鍼灸」を追究することが仕事です。教科書通りに鍼や灸をすればよいわけではありません。もし、教科書通りにやるだけで大きな効果が出るのであれば、これほど多様な流派や学派が存在しているはずがありません。

そもそも、鍼灸には「教科書通り」なんて治療法がありません。ですから、教科書と効果は、完全に切り離して考える必要があります。

自動車の免許と同じだと思います。免許は、クルマを安全に操ることができる一定ラインを保証しているだけです。公道での運転が上手になるのは免許を取ってからですよね。クルマの場合はサーキットでタイムを出せるとか、上手さを計る基準が思い付くのですが、鍼灸にはわかりやすい基準がありません。技能を数値化するのがとても難しいのです。

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鍼灸は、ひょっとすると料理の方に近いかも知れません。美味しさの基準もバラバラですからね。だからこそ、「口に合う」という、とても便利な言葉を発明されたのでしょう。

とはいえ、美味しさの基準はある程度まで設定できるように思うのです。「人によって違うから…」で済ませるのではなく、鍼灸にも誰でもわかる基準があった方が便利だと思います。

■評価の基準

評価をすべて感性に委ねてしまうと、いわゆるフィーリング勝負になってしまい、患者さんも鍼灸師もフィーリングばかり追いかけてしまいます。

イイ感じがする鍼灸院とイヤな感じがする鍼灸院なら、当然イイ感じがする鍼灸院の方がよいです。でも、それが「何となく」という言葉以外で表せなければ、結局、鍼灸師は何を目指せばよいのかわかりません。患者さんも、感覚を頼りに鍼灸院を選ぶしかありません。

ですから、上手さの基準は明確にあった方がよいです。その基準が統一されているのがよいかといえば、そうは思いません。目的に合わせていろいろなクルマがあるように、鍼灸も目的に合わせて、いろいろなカタチが必要だと思うからです。

大事だと思うのは、それぞれのカタチに応じた上手さの基準を設けることです。トラックなら運べる荷物の量、スポーツカーなら最高速度、セダンなら居住性と走行性のバランス、というように、クルマは設計段階からどの性能を重視するかが明確に決められています。

クルマをひとまとめにして評価したら、アンフェアですよね。

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鍼灸師も同じだと思います。「鍼灸」というカテゴリで一つの評価基準を作ったら無理が生じます。さらにいえば、整体師、カイロプラクター、エステティシャンなど、同じ基準で評価したら、それぞれの良さは見えてきません。気持ちよさが基準なのか、痛みが消えることが基準なのか、キレイになることが基準なのか、病気を予防できるかが基準なのか…。

■イイトコ取りの罠

「イイトコ取り」という言葉があります。他のカテゴリやジャンルから学ぶ姿勢は柔軟性を感じますが、自分の基準を持っていないのとただの優柔不断です。

「様々な療法を学び、それぞれの良いところ吸収して自分なりに技術を完成させた」というプロフィールを時々拝見します。

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確かにモノやコトには良い所と悪いところがあると思います。ただ、それは「自分にとって」の話であって、他者からみれば、悪いところかもしれません。ですから、「イイトコ取り」をしたからと言って、それがイイトコ集になるわけではありません。

むしろ、元の良さを破壊している場合も多いと思います。こんなふうに気が付かないところで損をしている鍼灸師が少なくない気がします。私自身にも心当たりがあります。

勉強すればするほど壊れていく、という最悪な状況です。

勉強に出かける際には、その評価の基準を明らかにしておかないと、どんどんおかしな方向に転がってしまうと思います。実際、鍼灸師はエステサロンから学ぶこともできますし、病院から学ぶこともできます。美容院や飲食店から学ぶこともできます。でも、それを全部合わせたら、必ずどこかで矛盾が生じてしまいます。結果、患者さんから見たら、何がしたいのか、何ができるのかがわからなくなってしまいます。

■上手い鍼灸師の共通点

上手い鍼灸師は自分の基準を持っています。評価してほしい部分をしっかり分かっています。だから、何でも取り入れることはしません。評価して欲しい部分を強化できるかどうかという視点で吸収していきます。

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おそらく、

「患者さんは何をして欲しいのだろうか…?」

と考えているうちは答えに出会えないと思います。なぜなら、患者さんはいろいろだからです。「どんな症状でどんな不安を抱えているのか」を想定しておかなければ、何をして欲しいかが見つかりません。

どんな方を対象に鍼灸をしたいのかが漠然としていると、何をしたら良いのか見えてきません。これは経営面でも技術面でも言えると思います。上手い鍼灸師は基準づくりが上手に見えます。

次回は、私の基準について。

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