新人研修の目的
①方針の統一
うちの鍼灸院の場合、新規で採用した鍼灸師は他で臨床経験があっても、必ず研修期間を経てから患者さんの施術を担当するようになっています。これは、技術的な意味合いもありますが、方針を統一するという意味合いの方が強いです。
方針というのは、たとえば通院ペースであったり、難しい症状だったときにどう対応するか、などです。鍼灸院によって、おすすめする通院ペースが違います。リピートに対する考え方も違います。
うちの院の場合は、ネットに公開している症例を読まれている方が多いので、そこで通院ペースや通院回数を目にしているので、ほとんどの方がリピート(通院)する心構えでやってきます。ですので、リピートを促すようなトークなどまったく必要としていません。
こうした案内がスタッフでバラバラですと、担当が変わったときに違和感が出てしまいます。逆の言い方をすれば、担当が変わってもできるだけ同じ質感のサービスを提供したいという方針があるので、統一するようにしています。
次に、技術的な研修について説明します。ひとくちに「鍼灸」と言っても、やり方は千差万別です。鍼灸師によって違います。鍼灸師の私から見ても、実際に見るまで、どんな施術をするのかわかりません。ネットの文言だけで鍼灸院を決めなければならない患者さんは本当にたいへんです。
②自信をつくる
うちの鍼灸院の場合、臨床(施術業務)にデビューするまで、1~6ヶ月間くらいかけています。場所によって3日くらいの研修で臨床デビューするところがあると聞くので驚いています。研修期間が短ければ短いほど経営的なメリットがあるのでしょうが、うちの鍼灸院では、急がないようにしています。
研修を進めていくと、技術的にもどんどん上手くなっていくわけですが、技術の追求に終わりはありません。もし完璧をゴールにしたらいつまでも臨床デビューできません。ですから、研修のゴールは技術面以外のところに置いています。
「患者さんを不安にさせない」
という基準で考えています。自信がないように見えたら患者さんは不安です。自信がなければ、必ず言葉やしぐさに表れて患者さんはすぐに気がつきます。ということで、どうやって自信をつけていくのかという話に移っていきます。
完璧な技術などないのですから、技術面は自信の一部にはなりますが、それがすべてではありません。未完成な技術の中で自信をつけていくものです。
自信と謙虚さの関係性
私自身が「自身のつくり方」で悩んでいた時期があります。ようやく自信の正体が見えてきました。結論を書く前に、私の勘違いをお伝えしようと思います。
「自信」の反対は「謙虚」だと思っていました。私の他にもこう思っている人はいるのではないでしょうか。こういう勘違いをしているので、自信があるように見られた方がいいのか、謙虚であるように見られた方がいいのか、と態度の取り方に困っていました。謙虚になると自信なさそうに見えてしまうし、自信を出すと謙虚でないように見えてしまうし…といった具体に。
私の頭の中が整理できてから、まだ数年しか経っていません。ようやく、
「謙虚さは自信によって生まれる態度」
であるとわかったのです。ただし、謙虚さを生むのは本当の自信です。本当の自信とは「何度も同じことを繰り返せるという確信」です。本当の自信というのは、地味なものでアピールするようなものではありません。たとえば、職場から家に変えるとき「何度も家に帰れるという確信」があるわけです。「またあした~」と挨拶する言葉の中には、「帰宅できる」という自信が存在しているのです。
このように考えると、自信というのは意気込みのようなものではなく、何気ない当たり前そのものなのです。
自信が生まれるプロセス
通勤を例に続けます。引越しをして新しい土地であれば「ちゃんと帰れるだろうか」という気持ちが生まれます。自信が持てないという状態です。最初はそうであっても、1ヶ月も通勤していればそんな気持ちは消えてしまいます。成功体験を積み重ねているからです。
自信をつける方法はただ一つ、成功体験を積み重ねることだけです。通勤くらいであれば、難易度が低いので苦労せずに成功体験を積み重ねていけますが、仕事となるとそうはいきません。失敗の連続ということだってあります。失敗が続くと、自信を完全に失ってしまって取り戻せなくなります。
そのときのレベルに合わせた課題に取り組むことが自信をつけていくには重要です。「そりゃそうだよなぁ」と誰もが思うような話だと思います。難しいのは「そのときのレベルに合わせた課題」を用意することです。
簡単すぎたら飽きるし、難しすぎたら失敗を繰り返して自信を失います。どんな課題を用意できるかが研修のポイントなのです。
謙虚さが生まれるメカニズム
何かができるようになると、何ができないかがわかってきます。できるようになるということは、できないことを知るということです。できることが増えると、できないことが減るわけですが、視野が広がり世界がどんどん広がっていくので、できないことだらけであることに気が付きます。
できることが増えれば増えるほどに、できないことが増えていくわけです。この「できないことがたくさんある」という気づきが謙虚さになります。
自信をつくる研修課題のルール
未だに「これが正解」というものにたどり着けていませんが、気をつけていることを書きます。研修の目的は自信をつけてもらうことです。もちろん。スキル向上を伴う自信であることが大切です。ときには、スキルが向上しているのに自信につながらないことがあるのです。
自信にならないときは、課題が重すぎる場合です。課題を出す側としてみたら、しっかり課題を与えた方がそれを乗り越えて自信になっていくと思いがちです。しかし、実際には失敗を繰り返して行くうちに、自信をどんどん喪失していきます。自信は成功の積み重ねから生まれるわけですから、課題を与える目的は成功体験をしてもらうことにあります。
そのために気をつけているのは、課題を細かく切り分けることです。そして、その課題に取り組んでいるときは、別のことが気になっても我慢します。いくら細かく切り分けたとしても、同時にいくつもの課題をクリアするのは無理だからです。
つまり、自信をつくる研修を実現するためには、課題を細分化しておく方がよいのです。研修時間も細分化するようにしています。そして、毎回ほめて終わるようにします。
ほめてくれる人が自信をはこぶ
自信は成功体験を積み重ねから生まれる話をしてきましたわけですが、忘れてはいけないのが、成功を認めてくれる人の存在です。施術のスキルは対人ですから、一人で「うまくいった!」とはならないわけです。研修を担当するときは、課題を与えるだけでなく評価をして終わることが必須です。その評価はほめるです。もちろん、無条件にほめたら無責任ですから、ほめて終われるような課題を用意します。
ほめすぎたら勘違いすると勘違いして、悪い点ばかり指摘しているとどんどん自信をなくしますし、研修が苦痛になってしまいます。責任ある仕事ですから、苦痛を伴う業務から逃げられないという場面もあります。だから、普段からわざわざ苦痛をつくる必要なんてありません。
好きで始めた仕事ですから、嫌いになる理由さえなければ好きでいられるのです。嫌いになる理由の一つは、自信を奪う人が近くにいることだと思います。
人は子供であっても大人であっても、ほめられて伸びるものです。あなたの近くにほめてくれる人はいますか?
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