■骨盤の歪み?
肩こりや腰痛に悩む患者さんが、症状の原因を探ろうとして「姿勢が悪いからですか?」と質問されることが実に多いです。これに関連して「骨盤の歪みが原因ですか?」という質問も並んで多いです。「どなたに骨盤の歪みを指摘されたのですか?」と聞き返すと、「前に行った整体で言われました。」という答えが大多数です。
さあ、姿勢の問題をどう考えるか…。
姿勢が悪いから何かしらの症状が出るというのは正しいのですが、症状による姿勢の変化も考慮しないと片手落ちになります。症状がある時に取る姿勢は、ラクになろうとする本能が防衛の手段として出てくるものです。
痛みがあれば、痛みを避けようとする。
疲労があれば、疲れないようにする。
その時その場でラクな状態を身体は探すわけです。
姿勢と症状の関係は、双方向から理解する必要があります。
1.姿勢が悪いから症状が出る
2.症状があるから姿勢が悪くなる
■そもそも、よい姿勢とは?
「よい姿勢とは何ですか?」
この質問に対して、私が一言で答えられるようになったのは数年前です。それまでは、説明に多くの時間を費やすものの、結局、何を言いたいのかわからないものだったと思います。その回答ぶりは、そのまま臨床に表れてしまいます。結局、何がしたいのかわからない、という結果に。
よい姿勢の定義は、一つに決まりません。ファッションモデルを目指す人なら、パリコレに答えがあると思います。自衛隊には、自衛隊にふさわしい直立姿勢があるでしょう。それぞれのジャンルに合わせた正しい姿勢があります。
つまり、正しい姿勢とは、実にあやふやなものです。同じスポーツでも、指導者によって立ち方の指導が違ったり…。なんだかんだと考えていくとキリがありません。
■鍼灸師の立場で考える正しい姿勢とは
ここから鍼灸師の立場で、患者さんの正しい姿勢を考えます。わかりやすいように、腰痛や肩こりに悩む患者さんをイメージしていただこうと思います。こういった患者さんが求める姿勢は、2つに分けられます。
A.肩こりと腰痛が軽減する姿勢(治療目的)
B.肩こりと腰痛になりにくい姿勢(予防目的)
▼Aについて(治療目的の姿勢)
辛さを訴えている患者さんがとっている姿勢は、上に書いたように痛みや疲労から逃げるためのものです。痛みから上手に逃げられているなら、これは正しい姿勢です。この身体の状況に合わせた姿勢です。曲がって見えても、そうしていないと辛いわけだから、その姿勢には必要性があります。その必要性を無視して、姿勢をいじると症状が悪化することがあります。姿勢を変えて症状を軽くすることは意外と難しいものです。
<解決案>
真っ直ぐになろうとしないことです。痛みを我慢して、筋肉にグッと力を入れて真っ直ぐな姿勢を取ろうとすればするほど悪化します。今の姿勢は、今の状態において、ベストであると気持ちを切り替えてしまった方がよいです。なりたい姿勢になるが正解です。
もう一つ大事なことは、自由に動けるから姿勢に選択の幅が生まれるという事実です。痛みで自由に動けない中では、姿勢を選ぶことはできません。ですから、痛みを緩和するという前処置が必要です。これとは別に、高度なテクニックもあります。痛みを感じさせないように、動かしてしまうとう技です。具体的には始動支点の移動(碓井流活法より)という理論を使います。
▼Bについて(予防目的の姿勢)
肩こりにも腰痛にもなりにくい姿勢とは、肩も腰も自由に動かせる姿勢です。立ちっぱなし、座りっぱなしがよくないのは、自由に動かしにくいからです。立った姿勢、座った姿勢に制限されて身動きするのは条件が悪いです。「いろいろな体勢をとる」というのが、予防目的を考えた姿勢です。もちろん、仕事などの環境によっては、いろいろな姿勢を取っていられません。クルマに一日中乗っている営業マンはどうしたらよいのか…。
<解決案>
筋肉の連動を回復させる調整を行った上で、一番自由に動けるポジションを探す必要があります。「筋肉の連動」とは、なめらかに動けることです。たとえば、クルマのシートで一日のほとんどを過ごす方であれば、お尻や太ももの裏側が常に圧迫された状態になります。そうすると、お尻から太ももがこわばって腰の動きを邪魔します。腰の動きが悪くなれば頚の動きまで悪くなります。
おかれている環境で、負担の大きいポイントを探すことが重要です。そこは必ずしも症状が出ているとは限りません(同じ場合もありますが)。たとえば、関節がない太ももは痛みが出にくく、関節が多い腰は痛みが出やすいわけです。「痛いところ=一番負担がかかっていたところ」という思い込みを捨てて、どこに負担がかかっているのかを知るところから始まります。
■臨床のツボ
座りっぱなしで痛くなる腰痛と聞いた時、PC作業とクルマの運転では、治療法を変えることが多いです。
頚に着目すると、PC作業の場合、モニターや手元の資料を見るために、うつむいた姿勢が多くなります。ノートパソコンならなおさらです。一方、クルマの運転中は視線はほぼ水平です。頚の角度が違うために、「座りっぱなし」という切り口だけではなかなか解決できません。
PC作業が多い場合は、目の酷使、キーボードやマウスの操作を考慮して、腕~頚に重点を置く場合が多いです。
クルマの運転が多い場合は、ハンドルを握るために肘の位置が高めになります。この状態で負担がかかるのは背中。背中が施術ポイントになることが多いです。また、アクセルとブレーキ操作で“すね”の筋肉が疲労していると、お尻の筋肉が硬くなって腰痛を招くことがあります。右腰が痛いという場合、右脚を疑います(MT車以外なら)。


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